第14話

「言われた通りここにいたらガキ共が来やがった」

「貴様らは気付かないんだろうな、裏切り者がいることにっ!」


ヌッと姿を現した男たち。


「フン!!!!落ちやがれ!」

「おらぁぁぁああっ!!!!」


大男たちが武器を地面に打ち付ける。


巨大な振動。


地面が割れていく。


パカッ。


地面に穴が空いた。


「う、うわぁぁぁあぁああ」


「きゃぁぁぁあっ!」


俺たちは間抜けな声を出して穴の中に落ちた。


「あだっ!」


俺はモブらしい悲鳴を上げて地下に落ちた。


俺は立ち上がろうとしたのだが、そのとき、上からリーゼロッテが落ちてきた。


(あれ?俺の上に落ちてくるよな?)


別に落ちてくるのはいいんだけど女に尻に敷かれるのは、イヤなんだよな。


でもモブである俺が俊敏な動きをしたら、それはそれでおかしいし。


「きゃっ!」


「ぐえっ」


俺は仕方なく妥協してリーゼロッテの体を自分の体で受けることに来た。


「だ、大丈夫ですか?アノンくん」


俺の体を揺すってくるリーゼロッテ。


「うん」


ヨタヨタしながら俺は起き上がった。


その時だった。


アドニスが口を開いた。


「この中に裏切り者がいる」


とつぜん、そう口を開いた。


「今の奇襲の時に『裏切り者』というフレーズがたしかに聞こえた。俺たちの中にいるらしい。」


シエルが口を開いた。


「ブラフに決まってるだろ。私たちを疑心暗鬼にさせるためだけのタチの悪いブラフだ」


アドニスは今の話を更に補足する。


「死の荒野にはいろんなルートから入ることができる、しかし奴らはピンポイントであそこにいた。俺たちの行動は筒抜けだ」


そこでアドニスはヤッキに目をやった。


「僕はお前が怪しいと見ている。今日いきなり仲間になったからな」


「俺は違うっ!」


弁明を始めようとしたヤッキ。


「言っただろう?!俺は『あのお方』の言いなりだった。お前の姉さんが誘拐される原因になっちまったんだよ。だから罪滅ぼし……」


【見えざる手】


グッ。


ヤッキの体が浮いた。


「グギギ……」


「決まりだ。こいつは『あのお方』と繋がっている。これは『あのお方』からの罰だろう。裏切りがバレたことに対する!な」


ザン!


アドニスはヤッキの体を躊躇なく切り裂いた。


アドニスは一瞬にして絶命した。


「裏切り者の処刑は終わった。さぁ、みんな進もう」


(くくくく)


よくやったぞ。大男共。


俺の台本通りに進めてくれたから裏切り者がいることにたどり着くまでスピーディだった。



すべて、我が手中にあり。




【ヤッキ】


罪状:俺へのいじめ、カツアゲ未遂


死罪に値する




俺たちは地下の道を進んで行った。


しばらくするとザ・研究室みたいな部屋についた。


悪の研究所みたいな見た目の場所である。

そこでひとりの男が立っていた。


蜘蛛の巣リーダーの男である。


アドニスが口を開いた。


「何を考えてるんだ?お前は」

「これはこれはアドニス様。よくぞお越しくださいました」


優雅に一礼をするリーダー。


まさに悪の研究所勤めって感じだ。


そして、そのリーダーの後ろには無傷のマリアの姿。


「姉さんを返してもらおうか。それと邪神竜の復活なんてさせない」


「くくくく、両方不可能なお問い合わせですねぇ」


バッ!


両手を鳥のように開いたリーダー。


そのまま天井を見上げて狂ったように笑い始めた。


「ははははは!すべては我らの手の中にっ!そうですよね?!あのお方様っ?!」


アドニスが叫ぶ。


「その『あのお方』ってのは誰のことなんだ?」


ペロリ。


唇を舐めてリーダーは答えた。


「あなたではとうてい理解できない素晴らしき御仁ですよ。あなたごときに教えるなんて勿体ない」


その時だった。


リーダーは手に持っていた装置のスイッチを押した。


パカッ!


「えっ?」


リーゼロッテとシエルが落とし穴に引きずり込まれいく……。


ついでのように眠ったままのマリアの体も地下へ。


「きゃぁぁあぁぁああっ!!!」


リーダーが笑う。


「ふはははは!!これで邪魔者は消えましたねェ?!」


アドニスがリーダーに斬りかかった。


リーダーは腕で切りつけを防いだ。


「なに?!生身で俺の切り付けを?!」

「あのお方は素晴らしい。私にこんな力を授けてくれたのですから、ふん!」


バキャッ!


アドニスを吹き飛ばしたリーダー。


アドニスは壁に打ち付けられてそのまま座り込んだ。


「なんて強さだ……あのお方ってのはそんなに強いのか……」


俺を見てくるアドニス。


「アノン、手伝ってくれ。お前とじゃないとあいつは倒せない。俺とお前で倒そう」


その呼び掛けには応じず俺は立ち尽くしていた。


「アノン、動かないとお前も死ぬんだぞ?」


リーダーが高笑いした。


「アドニス様……いや。アドニス。私は言いましたね?『邪魔者は消えた』と」


リーダーは俺の横を素通りした。


そして俺とアドニスの間に立つと会話を続けた。


「今この場に邪魔者はいないんですよ。それは、分かりますか?」


「ま、まさか……」


「くくくくく、ははははは。これは傑作だ!!!」


ピッ。


リーダーは部屋の中にあったモニターの電源を入れた。


そこには俺たちの映像。


場面はついさっきのものだ。


『これで裏切り者は消えた』


ドヤ顔でそう言ってるアドニスの姿。


「アドニス。君は裏切り者を排除したと思い込んでいるだけですよ」


リーダーの口が三日月のように歪んだ。


「あなたたちのパーティには裏切り者どころか敵のボスが潜んでいたんですよ!!!!!ひゃーはっはっはっはっは!!!お前はマヌケにもそれに気づかなかったっ!」


ブワッ!


室内だと言うのに風が巻き起こる。


書類が吹き荒れる。

本棚すらもポルターガイストのように動き回る。


パリパリパリパリパリパリパリパリパリ。

ガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャ。


チカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカ。


部屋の中の蛍光灯が割れていく。


割れた蛍光灯の光が点滅していく。


ビチッ、バチッ。


多少の電気が漏電しているだけの暗闇が訪れた。


そこで、俺は仮面を手に持って振り返った。


魔法で右目を赤く光らせながら……振り向いた。


俺の姿を見た瞬間、アドニスの目はこれまで見たことないくらい見開かれた。

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