第11話

俺は襲ってきた男の首に手をやりそのまま宙吊りにした。


「あぐっ……」

「聞きたいことがあるんだよね。君らが犯罪組織【蜘蛛の巣】でいいんだよね?」

「あぐっ、うげっ……」

「あぁ、ごめん。それじゃ話せないか」


俺はゴミを捨てるように乱雑に男をその場に投げ捨てた。


そして、ゴミを踏みつけるように頭を踏みつけた。


「早く答えてよ」


「そ、そうだ。我らが蜘蛛の巣」


「そうか」


ギリギリ。


頭を踏みつける足に力を込めていく。


周りからは歓声が上がった。


「あの人すごい!」

「蜘蛛の巣の人を圧倒してる!」

「救世主様!」


ギリギリ。


バキバキ。


頭蓋骨にヒビが入っているかもしれないが。


シツケは大事だ。


「今日から俺が貴様らの飼い主になろう、蜘蛛の巣よ」


ドカッ!


脇腹を蹴りつけるとあばら骨が何本も折れて壁まですっ飛んで行った。


「がはっ……だ、誰が貴様の言うことなど……」


バキャッ。


俺は近くの檻から鉄格子を一本引き抜いた。


「そんな口叩いていいのかい?」


ブン!


鉄棒を投げると男の腹に突き刺さった。


突き抜けた鉄棒は壁にも刺さる。

ちょうどこの男は壁に縫いとめられたような形である。


「うわ〜痛そう〜」


男に近寄ると何度も鉄棒を蹴りつけた。


その度に男の体に深深と鉄棒が刺さる。


「ぐはっ……」


びちゃびちゃ。


男が吐いた血が俺の靴に着いた。


「おい」


バキッ。


顔を蹴りつけた。


「誰が血を吐いていいと言った」


しゃがんで男の顔を覗き込む。


「さぁ、答えろ。俺の言うことを聞く、と」

「誰が……それよりお前なんで眠っていないんだ?今日運ばれてきた奴隷だろ?あの睡眠薬は我々が開発した薬なのに」


こいつらが開発した薬か。


ふん。


いいことを聞いたな。それは。


俺は男の体をまさぐった。


すると、いい物が見つかった。


【薬の入ったケースを入手しました】


パカッ。


ケースを開けてみると色んな種類の薬が入っていた。


睡眠薬、麻痺薬、いろいろあったけど。


一際俺の興味を引いたのは。


「洗脳薬、か」


「っ!!!」


目を見開いた男。


反応を見る限り相当やばそうな薬らしい。


「そ、それはまだ試作段階の薬だ」

「へぇ?効果は?」

「……」


答えなくなってしまった男。


「まぁいいや」


「????」


男は不思議そうな顔をしていた。


俺は薬を取り出すと男の鼻をつまんで上を向かせた。


「​────キミでどんな効果が出るか試してみることにしよう」


ゴクッ。


薬を飲ませると男の目がトロンとし始めた。


まるで、正気を保てていないような感じ。


「お前何者?」


聞いてみたら男が口を開いた。


「私は【蜘蛛の巣】という組織のリーダーでございます」


「そうか。俺のことはあのお方と呼べ」


「かしこまりました。あのお方様」


「今日から俺が貴様らの飼い主。リーダーである」


「了解しました」


「とりあえず鉄格子の鍵を渡せ」


鍵を受け取った。


俺は銀髪の女をまずは解放した。


「鍵を渡す。あとは好きしろ」

「え?」

「お前らには死ぬほど興味が無い」


口を大きく開けて驚いてた。


「ひ、ひどいっ!」


銀髪の女はそれから頬を緩ませた。


「とにかく、ありがとう。あのお方さん、でいいのかな?」

「さっさと消えろ。目障りだ」

「はいはい。消えますよー、だ」


あっかんべーしてから他の鉄格子を開けていく銀髪。


女の子たちはすぐに上に上がっていってた。


最後に銀髪が俺の方に歩いてきた。


「ほんとうにありがとう。私はシエル。また会えたら……」

「もう会うことは無い。消え失せろ」

「べー、だ」


俺はリーダーに目を戻した。


とりあえず話を聞いていくことにした。



リーダーから聞いた話で分からなかった部分がかなり鮮明になってきた。


蜘蛛の巣はアドニスの家と繋がっていること。


そして蜘蛛の巣が奴隷の販売や違法行為で稼いだ金はアドニスの資金になっていることなど。


「我々はどうしたらいいのでしょうか?あのお方様」


「とりあえずの指示を出そう」


アドニスとリーゼロッテの恋のキューピットになろうかと思ったが、辞めておくことにしよう。


アドニスには絶望してもらいたい。


自分の組織である【蜘蛛の巣】は既に俺の下に下っていて、味方は誰もいないっていう絶望感を。


(味あわせてやろうか。もっと長く遊ぼうと思ったけど、あいつはクズだからいいや)


俺はリーダーに目を向けて言った。


「明日アドニスが女を連れてデートをする」


俺はニヤリと笑って命令を下した。


「デートの途中でアドニスを襲え。俺はその間にやつの姉を誘拐しよう」


「かしこまりました。ですが、足止め出来なければ?」


「もちろん、死を持って償え。以上だ」


俺はリーダーを見て言った。


「全ては……」


俺はリーダーを見つめた。


続きを言え、という視線である。


「あのお方様のために」


「我が手中にあり、の方だバカヤロー。何でもかんでもあのお方様と言うな」

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