第3話

「【サンダー】」


俺は間髪入れずに魔法を唱えた。


チンピラ2人の体を雷が襲う。


「「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!!!!」」


バタリ。


地面に倒れ込んだ男たち2人組み。


俺は男たち2人の体をまさぐった。


【女の子の財布×1を入手しました】


俺は財布を女の子に投げ返すとチンピラ2人に目をやった。


「大丈夫か?お前ら、生きてるか?」


「うぅ……この流れで心配するのが俺らなのかよ……」

「女の方じゃねぇのかよ……心配するのは」


「あっちの女には1ミリも興味が無い」


女の子は俺の方に近寄ってきた。


そして、口を開いた。


「ありがとうございました。あのお方さん」


「さっさと帰れ。体調を崩すぞ」


「はい。とにかく、ありがとうございます」


タッタッタッ。


女の子が走っていった。

俺の方はいっさい女の子の顔を見なかった。


それほど興味がなかったからである。


「おい、チンピラふたり。ここじゃ雨が当たる。場所を移すぞ」


「「へい」」


俺は近くにあった廃墟の中に移動した。


この辺りは治安が良くはなく空き家もそこそこ多い。


「おい、チンピラ共。他に仲間はいるか?」


聞いてみるとリダという方が答えた。


「いるけどっていうか、お前はさっきから何様なんだ?」


「そうだぞ。てめぇ。さっきから聞いてればべちゃくちゃと。何様のつもりだ」


「うるさいぞ雑魚共。【ファイア】」


ゴウっ!


名前も知らないモブチンピラの体が炎に包まれた。


「ぐぁぁぁぁぁぁあ!!!」

「や、やめてくれ!死んじまう!」


「なにを言ってる?殺そうとしてるんだから当然だろう?自分のやったことを忘れたか?カツアゲは万死に値する」


「ひぃぃぃぃぃぃぃ!!、」


ドサッ。


リダという方は腰が抜けていたようだ。


「ウォーター」


バシャッ。


モブチンピラに水をかけて鎮火してやる。


「さて、もう一度聞いてやろう。チンピラ共、仲間は何人だ?」

「10人くらいいます」

「十分だ」


俺はニヤリと笑った。


「早く仲間を呼びつけろ。貴様らチンピラという社会のゴミに価値を与えてやろうとしてるんだ、早くしろ」


「「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃ!!!」」


モブチンピラの方が仲間を呼びに行った。


俺はリダと向き合っていた。


「金が欲しいんだろ?チンピラ」

「はい」


俺は懐から金を取りだした。


「ここに、50年は遊んで暮らせるだけの金がある」


「50年も?!」


「俺の命令を聞き、実行出来ればくれてやる。【グリスフォン家】へ向かい勇者の剣を持ってこい」


「で、ですが。あの家は警備が。俺らチンピラ程度じゃどうにもなりませんよ」


「お前らのために俺が必ず奪える策を用意した。あのお方さんは偉大だな」


俺は仮面の下で口を三日月のように歪ませた。

この笑い方は間違いなく『あのお方スマイル』。


「明日の夜あの家の警備は甘くなる。そこを突くがいい。詳細はこれを読め」


俺は計画書をリダに渡した。


ゴクリと唾を飲み込んで聞いてくる。


「成功しなければどうなるんでしょう?」

「お前らの顔は覚えた。居場所もいつでも特定できるからどこにいても殺しに行く」


「ゾクッ!!!!!」


「明日の夜。勇者の剣を盗んだらここまで持ってこい。剣と報酬は引き換えだ」



翌日。


俺はヴァカムスの家を訪れていた。


建前は昨日家に来てくれたことに対するお礼というかお返しというか、まぁそんなものだ。


呼び鈴を鳴らすとニチャニチャした顔のヴァカムスが出てきた。


「来たのかパーティメンバーその1」


「プレゼントをお持ちしましたよ、ヴァカムスさん」


「そうかそうか、まぁ、入れよ。正直言うと剣の自慢をもっとしたかったんだよ」


上機嫌である。


いつもならもっと貶してくるのだが、今日は機嫌がいいのか屋敷まで入れてくれる。


庭を見ていると我が家と同じく騎士団が練習している。


その数10人くらい。


俺の家の兵士より人数が多い。


「ふん。我が家の騎士団は。女ばかりでいいだろう?強く、美しく上品でエロい。それが我が家の騎士のキャッチコピー」


ヴァカムスが言ってる通りたしかに、剣を振る度にぶるんぶるん!


「がはははは!貴様ら貧乏人の騎士団とは違うわけよ」


俺はそんなヴァカムスを横目に聞いてみた。


「差し入れしても?」

「もちろん構わんぞ」

「失礼」


俺はそう言って騎士団の方に歩いていった。


1人の女性が俺に気付いた。


「これ、差し入れです。よかったら食べてください」


クッキーが入った箱を渡した。


「感謝します。ご客人」


騎士はクッキーを受け取るとそのまま宿舎へと持っていった。


それを見て俺は内心でほほえんだ。


あのクッキーの箱には魔力が込められている。一度だけあの箱を使って遠隔で魔法を使うことが出来る。


そして発動させる魔法は【音の遮断魔法】。


これで今日チンピラがここに来ても彼女たちが動くことはなくなる。


そのまま俺は応接間まで案内された。


応接間に入ると意外にも既に先客がいた。


(ステータスオープン……俺基準で一般人か。脅威にはならんな)


少なくともさっき出会った女騎士の方が何倍も強い。


俺が見つめているとやがてその先客の女は笑顔を作る。


「はじめまして、リーゼロッテと言います」

「俺はアノン。よろしくね」


金色の髪の毛をロングにしている女の子。


ヴァカムスは口を開いた。


「俺の嫁だ。かわいいだろ?」


「まだ婚約は決まってませんよ?ヴァカムスさん」


にこっ。


ヴァカムスは笑ってそう言われていた。

意外にも気の強そうな女だなぁ。


ヴァカムスはリーゼロッテの横に座るとペラペラ自慢話を始めた。


長いんだよなぁ、こいつの話。

くかー

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