運命が変わる時。

第20話 【彼】の名。

それは正徳と姫乃、二人の家でのこと。

向こうでは今まさに正徳と雫が話し合いをしている。

その頃の姫乃は二人のベッドで正徳の布団にくるまっていた。


「しょうくんまだ帰って来ないかなぁ。」

姫乃はまだ帰ってこない最愛の人のことを思う。


そんな彼女は

「しょうくんの匂い・・・♡」

そう言いながら寂しさを紛らわせるために自分を慰めていた。


少し経ち、日が沈む頃、姫乃は急に眠気を感じるようになった。

それは運命かのように、誰かが使命を果たすかのように彼女を夢へと誘う。

姫乃はそれに最初は抵抗していたが、あまりにもすぐに寝てしまった。

寝る瞬間に少し、愛おしい彼のようなナニカが見えたようなそんな気がした。

姫乃はそれに疑問を抱く間も無く意識を閉ざした。



姫乃は目が覚め、少しすると体を起こし周りを見る。

そこは無の世界のような。でも色鮮やかな思い出が詰まっているように思える。ただ無限に続く白い空間。まるで彼そのもののようなナニカ。姫乃はこの空間に困惑と少しの喜びを覚えた。


「やっと目を覚ましたんだね。」

どこからか不意にそう告げられた。姫乃は慌てて後ろを向く。


そこには正徳がいた。でも輪郭が薄いし色はモノクロだ。

姫乃は正徳じゃない別のナニカに少し警戒してしまう。

その様子を見て、【彼】は慌てる。


「え!?なんで警戒してるの!?」

慌て出す彼だが、それはすぐに収まり姫乃に向き合う。


「とりあえず・・・こんにちは、姫乃さん。」

彼が姫乃に優しく言う。


姫乃はやっぱり少し困惑しながらも、

「え、えーと?こんにちは?」

と返す。

「ククッ!」

その様子に彼は少し笑ってしまう。


「なんで笑うの!」

ぷんぷんな姫乃に彼は懐かしさを覚える。

「いやぁね・・・嬉しくてね。」

そんな彼の様子に姫乃も懐かしさを覚える。

「あなたってもしかしてしょうくん?」

その質問に彼は少し考えるそぶりを見せた。


そして彼は姫乃を見る。

「そうだけどそうじゃない。俺は正徳であり正徳じゃない。」

彼は自分の胸に手を当てた。心臓の音を確かめるように。

「俺は正徳が壊れている時に正徳を乗っ取った正徳の別人格だよ。」

彼がそう言うと姫乃は少し安心するように顔を緩める。


「俺はそうだな・・・『彼』って呼んでよ。」

彼は姫乃にそう言うと、姫乃が、

「ダメ!仮にもあなたはしょうくんなんでしょ?じゃああなたにも名前がいるの!」

という姫乃の案?が強制的に決定した。


少し経って姫乃が言う。

「んーじゃあ!ただしってのはどうかな?しょうくんからね!」

喜んでいる様子の姫乃に彼は少し微笑む。

「正か・・・いい名前だね。本当に良い名だ。本当にね。」

姫乃は無意識で言っているらしいが、正という名は正徳の父の名前だ。

でも、彼は思った。この名が良いと。父の思いを継ぐように彼が生まれた。

だから父を継ぐように名を貰えば良いのだ。


彼は姫乃に向かって、

「じゃあ俺は今日から正と言う名で生きていくよ。」

死んでしまった父のように、また正徳本人のように、彼、いや正は正徳を守るのだ。


正は姫乃に向かって言った。

「ありがとう。俺に価値を見出してくれて。」

姫乃は正の目を見つめ、

「どういたしまして。今後ともしょうくんをお願いします。」

頭を下げたのであった。


少し経って姫乃が言う。

「というかなんでここに呼び出したの?」

その問いに正はハッ!っとする。

「忘れてた!重大な事を!!」



二人は白い白い空間の中で話し合った。

何時間も何時間も。時々雑談なども挟みながら。


でもこれは夢だ。起きた頃は1時間後ぐらいだろう。

夢だからこそ長く長く話すのだ。笑いながら驚きながら。

二人は最後にお互いを見る。


「本当に良いんだね?」

そう正が姫乃に問う。

「いいよ!しょうくんの幸せのためならね!」

姫乃はにっこりと微笑んだ。

「ありがとう。さあ正徳。あとは君がなんとかするんだよ。」

正は今も頑張ってる正徳に言う。

そこで姫乃の意識が途絶えた。



そして姫乃は夢から覚める。もう陽の落ちた頃。

姫乃は深呼吸をし、ずっと目を開ける。

その目は赤く輝いていた。

____________________________________________________________________________


どうもみなさん!マヨきゅうりです!!


今回は姫乃と【彼】、いや正との会話でした!

次は正徳視点です!この後どんな展開が待っているのか!!


更新が遅くなるかもしれませんが、気軽にお待ちください!

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