エリザとフェル その後┅Ⅰ

ジョウの住み家を出たエリザとフェルはとにかく急いでいた

夜の闇に隠れフェニックスのエリザは、成るべく高く、フェンリルのフェルは風魔法結界を踏み台にして駆ける


そして休まず辿り着いたのはエルフ国の世界樹の元┅┅


『やれやれ、遅かったか』

『仕方ないわ、間に合って私達が加勢した所で又繰り返す事なんだから、結局この国は変わらなかっただけ、残念だけど滅びは必然なのよ』

『そう言う事だな、向こうの方はまだ戦闘のようだ、どうする?』

『私達の目的は巫女の救出よ、探しましょう』


フェルが里の中へ向かおうとした時だ、エリザが何かに気が付いた


『フェル!待って!何かを感じるわ!』

『なにか?モンスターなのか!』

『違う!こう┅なんだか知ってる感じなのよ┅┅』

『どの辺りだ』

『えっと┅世界樹が有った辺りよ』


辺りは世界樹が自ら枯らした木のクズが塵の様になって積もっていた、跡形もなく┅┅


『エリザ!我にも分かる!この感じは┅┅』


恐らく世界樹の根元辺りだろう、そこを掘り始めた


『フェル?どうしたの?穴とか掘って』

『何か埋まってる、そして感じる、これは懐かしい魔力』

『えっ!私も┅┅そうよ!これよ!巫女の魔力!ここよ!』


フェルの手は普通じゃない、図体が軽く5mは越えてる、手の平の大きさはヒト3人分の顔くらい

直ぐに何かに当たった


『エリザ!ヒト型になってこの扉を開けてくれ』

『分かったわ』 プワ~ン

ギィギィキギー


『どうだ?』

『そこにいるのは巫女!シャリナ!いるの!』

『┅┅┅┅┅ダレ?』

『私よ!フェニックスよ!』

『我も一緒だぞ!』

『フェニックス┅┅フェンリル┅┅助けて┅┅里が┅┅お母様が┅┅全部┅┅』


もはや猶予は出来ない状況だと判断したエリザが中へ飛び降り下からシャリナを放り上げた

それを上手くフェルが背で受け止めボロボロの姿だが巫女だと確信した


『生きてた┅良かった┅』

『だが酷い様だ、無理矢理押し込められたのだろう』

『それだけ切迫詰まってたのね、急いで彼女を世界樹の元へ贈るって所ね┅┅』

『ウッ┅┅世界樹様は?』

『意識が戻ったか┅┅残念だが世界樹は枯れた、何も無い!』

『そんなぁ!いゃあぁぁぁあ!世界樹様!世界樹さまぁー!あぁあああ!┅┅┅┅』

『気を失ったか┅』

『守られる物が無くなった、生まれて来て世界樹と共に生きる運命なのにそれも┅┅』

『ショックなのは仕方ない、だが巫女と言え生きる権利は有るだろう?世界樹と心中など笑わせるわ!それを地下に埋めるとは┅』


『しきたり、慣わしなんて愚の骨頂よ、なんでヒト族や亜人達はつまらない事に固執するのか?でも私達は彼女を生きらせる、エルフの守り神とか知ったこっちゃ無いわよ!それに私達にはジョウと言う味方を得てる、ウフフ♪そうよね?フェル?』


『そうだ!不思議なモノだが神に近い存在、世界樹と気楽に話せる等有り得ん!精霊に触れるだと?そんな存在は初めて見た、あれはヒトなどと言うちっぽけなモノでは無い』

『でもジョウはお気楽よねぇ?それに何も知らない子供みたい、今頃はヒト族の町で騒ぎを起こしてるわよ、ウフフ♪冒険者ねぇ?どうかしら?』

『まぁ良い、それより此処から放れるぞ、つまらん物が来るやも知れん、我が背に乗せる、何か縛る物は無いか?』

『ジョウに貰ったアラクネの糸が有るわ、それで縛りましょう』

『おお!それは良い、アラクネの糸は伸びるからな、重ねればきつく縛っても外れんし苦しく無いだろう』


巫女のシャリナをフェルの背に縛り付け落ちないようにしたら一気に駆ける

エリザも安堵と此れからの事が楽しく思えて力がみなぎる


エルフの巫女 シャリナ・ナハルティナ・ティーノ 第2皇女


巫女とは予言者、占い師などシャーマンと同じ扱い、エルフ国ではステータスに巫女の称号が付与されたならば命を世界樹へ捧げるモノと定められてる、言わば世界樹の従者、悪く言えば生贄となる


巫女が死ぬとその亡骸は世界樹の根元に埋められ肥やしとされる

神聖な亡骸が世界樹の安寧を得るとされていて巫女は生涯独身で生娘で無ければならない

その為に男と言う種類を教えないし見せない


父親も知らずに育つ、住居は世界樹と共に幼子から住み侍女が世話をして育てる

侍女は選ばれし者で、身を清め一切の縁を切り子も産めない体にされる

まぁアソコを使えない様にするって┅┅

大抵8歳から12歳の女子が選抜される、そして腰に貞操体なる器具を嵌められ里から放され巫女の世話を焼く


これを世界樹の爺さんから聞いた時に怒りが沸いた

巫女も侍女も道具じゃねぇか!ってね、なんでそう狂った事をする?狂信に盲信は只のキチガイだよ┅┅┅┅間違った風習なんて


『あれは?おい!エリザ!少し休むぞ!』

『えっ!なんでよぉ!早くジョウの所へ行きましょうよ!』

『フフ、まぁ良いから付いて来い』


河原へと降りるフェル、不満タラタラのエリザ、かなりの時間休まず飛んで来た

休憩も必然だよ?エリザさん?


フェルが降り立ったのは何やら辺な土で出来た小屋の前


『何よこれ?こんな所に小屋?』

『フフフ!アッハハ!エリザよ?その小屋の壁を嗅いで見ろ』

『辺な事を言うわね┅┅┅┅これは!ジョウの匂い!ジョウの魔力が匂うわ!』

『これはアヤツが建てたのだろう、此処だとヒト族への町の中程か?此処で野営したのだろうな』

『フフフ♪旅の野営にこんなの作るのジョウくらいね、中は寝床も有るわよ』

『今宵はシャリナを寝かせよう、我の背では疲れが取れんだろうからな』

『そうね、ジョウが既に町へ行ってるなら急ぐ事も無いわ、お腹も空いたし私達も休みましょう

ジョウに預かったマジックバッグが有るわよ、布団とか食べ物も入ってる、アナタの分も有るわよ』

『おおっ!それは有り難い、アヤツの料理は旨いからな!なんで早く教えん!』

『食事所じゃ無かったでしょ?まだ温かいから火傷しないでよ』

『何!シチューとか有るのか!』

『ウフフ♪そうよ┅┅まぁまぁ!これは!多分風呂よ!はぁ~参ったわね、風呂なんてのを作る?旅よ!野営なのよ!マッタク!』

『ガアッハハ!アヤツにこの世界の常識は通らん、好きにしとるようだ、しかし此れでシャリナも綺麗に出来る、オヌシも助かるでは無いか』

『そうね♪まさかこんな所で風呂に入れるとは、食べたらシャリナと入るわ』


フェルさんや?そんなにガッつか無くても?エリザも無心に食べてる?余程腹が減ってたのか

ご苦労様です!


マジックバッグには布団一式やら必要な小物を用意されてた

下着と服が入ってたのは凄く喜んでた、だってエリザはずっとハダカだったから┅┅┅


『これは?貴女は誰!』

『私はエリザ、前に助けて貰ったフェニックスよ、変化してヒトの姿に成ってるの、久しぶりね?シャリナ!』

『貴女があのフェニックス┅┅エリザとは?』

『それは此れから行く所の主が私達に名前を付けてくれたの、彼はフェルよ』

『フェンリル┅フェルがお名前?』

『我も名を貰った、お陰で倍の能力を得たのだ、ソナタは此れから見る物、聞く物、知る事の全てが信じられん事だろう、だが事実で有り真実だ、詳しくは世界樹に聞くと良い』

『世界樹様が!生きておられたのですね?』


『違うわよ、エルフの世界樹は死んだの、此れから会うのは大秘境の世界樹よ、エルフのと違ってちゃんと話が出来るわよ、念話は疲れるからね』

『話せる!そんな事が!その世界樹様は特別なの?』

『ハハハ!違う!世界樹はジョウに会ってから話せる様になったと言った、恐らくジョウのマナと魔力のお陰だと我は見てる』

『私もよ、世界樹が言ってたのよ、ジョウから出てるマナと魔力が助けてくれたって』

『そんな事が┅┅┅では!そのジョウ様なるお方は神の神子様でしょうか?』


『神子様?いやあ普通のヒト?違う┅なんと言うのだ?』

『そうね、難しいわね、ヒトで有りヒトでは無い?まぁ会えば分かるわよ、さぁお風呂に入って綺麗にしましょ、食べ物も服も有るから、さぁ!』

『風呂?こんなお外で!はっ!いやぁ!脱がさないで!ハダカ!キャ!』


否応無しにハダカにヒン剥いてお湯をかける、フェルはサッサと何処かへトンズラ

エリザは楽しそうにシャリナを洗う、そして頭からお湯を掛けると彼女は悲鳴をあげる!

髪を洗うってのが初めての経験でアワアワと怯えて震えてる

泡だから?


『此れから私達と暮らすんだから色々と教えるわよ、でも勉強はしてね、必要な書物は沢山有るから、それに私は所詮魔物よ、足りない部分も多いわ、それはジョウに教わって、私も教わるから』

『度々出てくるジョウ様と言うお方はどんなお方なのです?』

『とても優しくて面白いの、ちょっと間抜けで無自覚、それに綺麗で眩しいの、ウフフ♪私は大好き、貴女もきっと好きになるわよ』

『好き?対象を好きになるとは?』

『良いから!面倒くさ!そうだった┅┅何も知らない無垢┅┅面倒くさ~い!』


翌朝シャリナはフェルの背に掴まり教えられた様に糸で体を縛って固定する

そしてエリザもフェニックスとなり空へとんだ


『ほぇ~!エリザ様が!本当にフェニックス!なんて綺麗!それに空を飛んでる!スゴーイ!』

『まぁ落ちる事は無い、この目の前に見える世界がオヌシの此れから生きる世界だ』

『よ~く見ておくのよ、この世界を知って、色んな所へ行くの、もう貴女はエルフの巫女ではないの!1人のエルフ!貴女だけの命なのよ!』

『巫女では無い┅┅私だけの命┅┅ウッ┅ウウウ┅もう私は何にも縛られないのね┅┅グスッ┅』

『そうだ!自由だぞ!そして多くを知ると良い!我等が手助けしよう、オヌシの未来を共に見るとしよう!』

『私達は貴女の味方、それに永く生きる種族、この世界はまだまだ捨てた物じゃ無いわよ!ウフフフ♪』


夜になっても飛び続け目的地へ着いたのはお昼過ぎ頃

キラキラと金色に光るドームへと吸い込まれる様に降りて行くと滝が音を立て洞穴の前へと着いた


『ふぅ~やっと着いたわね、流石に誰もいないかぁ、ちょっと残念』

『それは判っておっただろ?シャリナを案内して説明するのだ、我は中へは入れんからな』

『何よ!小さく成れば良いでしょ?私に押し付けて』

『否!そうでは無い、女同士が良かろう、我にはわからん!』

『それもそうね、じゃあアナタは世界樹の所に行って話して置いて、私は中の事や滝裏の事を教えるわ』

『承知した、あの魔法陣は使えるのか?』

『使える筈よ、アナタも私も魔力登録したでしょ?あっ!それと何か注意する事とかも聞いて来て』

『承知した』


魔法陣に入ると光ってスゥ~と消えた┅┅それを見たシャリナが腰を抜かしアワアワしてる┅┅


『こんな事でイチイチ驚いてたら持たないわよ、この世界はアナタが思ってる事や知ってる事とは違うの、それとここは大秘境のど真ん中だからね、この辺りには誰もいないのよ』

『ヒィー!そんなの聞いてません!依りに寄って大秘境のど真ん中!ウ~ン┅┅┅┅パタン』


あ~あ┅気を失って┅まぁ当然と言えば当然ね、大体ジョウがおかしいのよ、こんな大秘境に1人で住んでるってね、幾ら結界が有るにしてもよ、普通は発狂するか自殺するわよ

それを┅┅┅ジョウは┅┅




あれはバカなの?





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