果樹園 【ロンダバルガーデン】Ⅲ

「エルガちゃん?魔力循環って知ってる?」

「知ってる、でも前に何回かしただけで今はしてない」

「それなら話が早い、その魔力循環を何時もしてると体力や能力が上がるんだよ、そして寝てる時も自然にしてる様になれば凄く強くなれるよ」

「ホント?でも寝てる時もって無理じゃないの?」

「そんな事は無いよ、何時もそうしてるんだから」

「ジョウは何時も?寝てる時も?」

「慣れたら出来る様になったよ、だから今も循環してるよ」

「スゴーイ!」

「そしてね、夜寝る前に魔力を出してしまうんだ」

「そんな事をしたら死んじゃうよ」

「死なないからね、自分自身を守る為に気を失うだけだよ、だから気を失うまで魔力を出すのが大事だよ」

「寝る時┅┅大丈夫かなぁ」

「魔力循環しながら手の先から魔力を出し続ける感じだよ、ちゃんとベッドに入ってからだから、そうすればぐっすり眠れる、起きたらスッキリと体が軽いよ」

「うん!わかった、今夜からするね、魔力循環は今もするの?」

「なるだけする方がいいよ、慣れる事が大事だから、さぁやって見て、それから今日はずっと気にして魔力循環するんだよ」

「やってみる!」


作業前にエルガちゃんと話したのはその事、ちゃんとやってるみたいだ、汗が半端無い、素直だから一生懸命、カワイイ!




「ジョウ?一緒にお昼しても良い?」

「幼馴染みとは良いの?」

「うん、言ってきたからね、何食べてるの?」

「これはハンバーガーでシチューとサラダ」

「スゴーイ!そのハンバーガーってなに?」

「パンで焼いた肉と野菜を挟んだ物、こうすれば食べるの楽でしょ?食べる?」

「えっ?良いの?┅┅┅なんか悪いよ?」

「良いから、まだ沢山有る、シチューとサラダも食べて」

「そうなの?┅┅温かい?どうして?それにどうやって持って来たのか?」

「これは内緒だからね?このバッグで持って来てるよ」

「それって?魔法バッグ?凄い!そんな貴重品持ってるの?」

「魔法バッグじゃないよ、マジックバッグ、時間停止だからシチューやハンバーガーも温かいんだ、秘密だよ」

「┅┅┅当然!誰にも言わない、そんな秘密を教えてくれてありがとう、ジョウは凄いんだね?」

「全然凄く無いよ、助けてくれたヒトがいただけだよ」

「ジョウって新人冒険者だけどなんか色んな事を経験してるみたい」

「アハハ、だって20歳だもの、エルガちゃんよりは長生きしてるからね、エヘヘ」

「20歳なの!全然見えない、そっか、そのくらいになれば私も少しは冒険者らしく成ってるかな?」

「それはエルガちゃん次第かな、他の仕事が良くなったりするかも?まだ14歳でしょ?分からないよ」

「そうかなぁ┅┅他に有るのかなぁ?でも今は冒険者を頑張るの、お母さんが元気になる迄は私が食べさせるの!」

「エルガちゃんの方がよっぽど大人かな?フフフ♪」


エエコやぁ┅┅┅爺ぃにはたまりましぇん!俺に出来る事はお手伝いしよう、健気に頑張ってるからなぁ┅┅


昼から収穫の女子は半分になって酒の仕込みを手伝うそうだ

このプルプラの実で造った酒は人気が高く寝せた物は凄く高いんだと、貯蔵酒かな?

プルプラ酒だと思ってたら名前があった


【ゴールドガーデン】搾りたてで新しい酒 【ハニーガーデン】3年間寝かせた物で味がまろやか、アルコール度数が18度、ワインだね【オールドガーデン】これは12年物、凄く旨く最高級品、王室へも送られる品だそうで数も少ない


全部にガーデンの名が付いてる、ブランド?後で少し飲ませて貰おう、美味しかったら買うのも有りだね♪

そして何故か俺は剣を持って立ち回ってる?なんで?


順調に収穫作業が進み何度も大八車を引いて往復してた

エエ!頑張ってます!完全に力仕事になってるけど?俺は女枠じゃないのか!クソッ!┅┅┅┅ん?


キャァ! イヤァー! なんでよぉ! 誰か助けてぇー!


フムフム?良く見ると魔物?お猿サンですか?でもお尻が赤い?マントヒヒ?そんなぁ!


【モンキーアユティ】猿種

狡猾で獰猛 集団で襲ってくる

Eクラスの魔物 集団だとクラスCの魔物に値する 真っ白な毛皮は高級品 肉は不味い 赤い尻の皮が薬の材料になる 女性用精力剤


なんだかなぁ?なんで赤尻が精力剤?それも女子限定?しかし毛皮は魅力的だね、確か何処ぞの王族とか猿の脳ミソを食べるとか?

あれを?気持ち悪い┅┅┅


実にすばしっこい、ピョンピョン木の枝を伝って移動するのは猿だから?ざっと30匹ばかりの群れ、女子は逃げる一方で散り散り!

冒険者だろ!

あのエルフ姉さんアミカさん達は全員仕込みに行ってるからここは農園のおばちゃん達とエルガちゃんと幼馴染み、それとG級の2人っと、戦力0だね┅┅


仕方ない!ってんで剣を!カタナを振り回してま~す

ギャギャ! ギャアギャ!

ホントうるさい!全部が鳴くから騒音のようだ┅┅クソッ!


これは不味いと思い土魔法のバレットを使う

豆粒大の塊をピュンピュン額を狙って放つ、跳び跳ねてる奴は腕や足にお見舞いする

ヨロヨロしてるのはカタナで首を跳ねる、向かって来る奴は殴る!

スキル【挑発】が発生?俺目掛けて来るから暇なしで応戦!


難なく片付いた、最初おばちゃん達が一斉に取り囲んで声をあげる


「アンタ凄いね!助かったよ!」

「さすが冒険者さん!アッサリやっつけたねぇ!」

「コイツらには悩まされてたのよ、時々来ては荒らすんだから」

「良くやってくれたよぉ!ありがとう!」


っとまぁ褒めてくれた、その囲みからサル達を処分するからと離れサッサと収納してるとエルガちゃんが来て抱き付いてきた


「ジョウ┅┅怖かったよぉ、ナルシャちゃんが噛まれた┅┅病気になるの?」

「それは!どこ?その子の所に、早く!」


木の下でぐったりしてるナルシャって子を見るとふくらはぎを噛まれ腿も噛まれてる

直ぐに回復魔法ヒール!そしてキズにクリーンを掛け光魔法で洗浄した

それを側で見てたエルガちゃん?とても瞳がハートマーク?


「ジョウ!それって回復魔法でしょ!スゴイ!お願い!お母さんも治して!お願い!」

「分かったから、今はこの子を運ぼう、手当ては済んだから気が付けば何とも無いよ、他にはケガしたヒトはいないのかな?」

「何人かいたよ、でも魔物じゃなくて転んだりぶつけたケガ、大した事無いって言ってた」

「じゃああのサルを仕舞って事務棟へ戻ろうか?」 「うん!」


大八車にナルシャちゃんを積んで戻ると皆は既に全員集まってた、仕込み作業の者達や果樹園の人達もだ


「どうやらケガ人も少なくて良かった!あのサル共はどうにかしないと駄目だ!それで冒険者ギルドに依頼を出す!こうも殺られっぱなしじゃあガーデンが危ういからな!」

「待て待て!倅よ!50は襲って来たのを始末したんじゃろ?聞くと収穫組の冒険者さんが始末したそうじゃな?ならばその冒険者さんにお礼しなきゃならん、誰なんじゃ?」


ヤバッ!俺1人で始末したなんて恥ずかしいよぉ、ここは逃げるか?イヤイヤ!おばちゃん達見てた、エルガちゃんも┅┅

あ~ぁ┅┅詰んだ!


「そりゃあの子だよ!ホラ可愛い顔して銀髪の子、名前を聞いてないわ、ごめんね」

「そうかそうか!あの子じゃったか、流石にやるのぉ」


「えっ!そんな馬鹿な!あの子は昨日登録したばかりの新人よ!」

「そうだぜ!何かの間違いじゃ無いのか!あんなブカブカのコートなんかして!」

「そんなステータスじゃあ無いわ、魔力も少ない┅┅なんで?」


ホウ?鑑定持ちですか、そりゃ冒険者だからいるよねぇ


「何言ってんだい!私達はちゃんと見てたよ、魔法でピュピュって撃って剣で首を切ってたよ!」

「見た見た!凄くカッコ良かったよ!綺麗だったよぉ!」

「そうそう!首を切った後に結った銀髪がキラキラしてねぇ、良い物見せて貰ったよ!フン!」


「そんな筈は┅┅」

「どうじゃな?お前さん達でアイツらを始末出来たかな?」

「そんなの無理に決まってる!あのモンキーアユティは集団で来るとCクラスなのよ!それを50匹も、私達だけでは無理よ┅┅」

「お前さん達は確か降格組じゃったな?E級じゃったか、それなら直の事無理よのぉ、Cクラス相手じゃし数も多いと来た、しかしそれを1人で片付けたんじゃ、それに対して失礼では無いか?新人だろうと事実は事実、それだけ力が有ると言う事じゃ」


シーン┅┅┅そして注目?


「そうだぞ!認めるしかねぇだろ!ジョウが始末した、それが事実だ、お前達も素直になれ!アミカ!エリー!シャルダ!それにリリカもだ、お前達先輩だろうが冒険者ってのは実力が物を言うんだろ?ならばここは認めたらどうだ?」

「そうだね┅少し驚いて我を忘れたよ、悪かった」

「「「ご免なさい」」」

「俺達も悪かった、でもスゲェよな!1人でだぜ!」

「あのぉ?この子が噛まれてしまって今は寝てますが何処か休ませる所は有りませんか?治療は済ませたので」


「そうかい!あの子だね!私達をかばって噛まれたんだ!それはすまない事を!さぁ!此方へ!」

「ありがとうね!偉いねぇ!」

「そこの子もありがとう!アンタ達に守られて!」

「そうだよ!冒険者の鏡だよ、それに比べて文句ばっかし、見てただけって┅┅┅」


おばちゃん達に奥の部屋へ連れて行かれた、そして今日の作業は打ち切りとなって時間が凄く余ってしまった┅┅

あの女性4人組パーティーは罰が悪かったのか歩いて帰って行った、4人組も一緒に┅┅

残ったのはエルガちゃんのパーティーまぁナルシャちゃんがまだ目が覚めないしエルガちゃんは付きっきりだもん

男共は仕方なく残って時間を潰してる、俺は爺さんに呼ばれ奥の部屋へと?


「ありがとう!このガーデンを守ってくれた、それにあの荷車も造ってくれた、ほんに感謝じゃ、お礼はするからの?何か欲しく無いか?」

「それならお酒を味見させてくれませんか?」

「ヨイヨイ、どれでも飲んで良いぞ、土産に待たそうかのぉ、婆さんや?儂のを持って来てくれんか?」

「この開けたのですか?失礼じゃないの?」

「いえ、味見だけですから」

「そうかい、欲が無いねぇ」

「それとこの果樹園の名前は何故ロンダバルガーデンなんですか?」

「フフフ、それはのぉ、儂の名前はビバルじゃ」

「私の名前はロンダよ」

「えっ!じゃあロンダがお婆さんでバルって!」

「そうじゃ、2人の名前を付けたのじゃ、良いだろ?」

「はぁ?アツアツカップルなんですね」

「アツアツカップルとはなんじゃ?まぁ仲良しじゃよ」

「永く一緒にいると空気みたいな物よ、アナタの事は聞いたわ、本当に男なんだね?まだ信じられないわ」

「それで困る事も多くて┅┅アハ」


コップに入れられた酒は凄く甘い薫りであのウィスキー色に似てた、飲むと口いっぱいに芳醇な薫りが広がる、旨い!


「これは古い品ですね、良く寝てる、この薫りと味は病み付きになりますね」

「ほぅ!判るか!それは17年物じゃ、売り物じゃ無くて儂が飲む為に寝かせた物じゃ、これを土産に持って行くが良い」

「そんなぁ、量産品で良いですよ、それに酒は多く飲まないので」

「まぁ遠慮せんでえぇ、沢山あるでのぉ、どれ、ヨイショっと┅┅あたた!年には勝てん、足腰が脆くなって┅┅」

「私もスッカリお婆ちゃんよ、腰が痛くてねぇ」

「じゃあマッサージしましょう、これでもお爺さんやお婆さんが生きてた時に毎日してましたから」

「そうか┅┅亡くなったのか」

「気にしないで下さい、寿命でしたから、アハハ」


それでお爺さんのビバルさんからマッサージ、すると傷んだ箇所が幾つか有ったので回復魔法で治しておいた、お婆さんのロンダさんにも同じ様に治しておいた


「気持ち良いわい┅┅倅も昔はこうして肩を揉んでくれたのにのぉ┅┅」

「そうですね、子供の頃は素直でしたねぇ┅┅」


これはダイガスさんの事!後取り息子は心配なんですねぇ、でもダイガスさんなら大丈夫だろう


「あの荷車はリビラ町のオルウエルト商会に頼むと買えますよ、もっと良い品です」

「あの商会は茶だけじゃ無かったのか?」

「領都の本店は何でも扱ってるそうです、リビラでは元々茶葉の倉庫だけと決めてたそうです、でも娘さんが店長をして他も扱う事にしたそうです」 勝手にご免なさいアンナさん!


「それなら幾つか注文しておこう、倅に言っておくよ」


そしてエルガちゃん達の様子を見たいと部屋を出た

ナルシャちゃんは目が覚めてどこも異常は無かった、元気にお菓子を貰って笑顔だったのはホッとした、外へ出て伸びしてたら魔力感知に何か反応?また猿か?


『主 果樹園の奥の山に巨大なモノがいます 恐らくあれがサル達を追いやってる原因ですね』


そうみたいだね、ちょっと退治するかな?


『う~ん┅┅見えた!あれは【ウィルボア】クラスAの魔物です 肉が上物で毛皮も高級品です』


ボア!イノシン!じゃあ肉は旨いね!これはラッキー!


シュン!と走り探す!気配察知に反応!そこぉだぁ!┅┅ヒャー!


ドッドッドッドォー!


ヤバイ!巨体が突進して来る!


なんとまぁ!その巨体は15、6mは有る!顔が2m以上って!


口には牙が剥き出し!かなり興奮してる!俺目掛けて来るぅ!


飛び上がり回避!上空から見るとバカなのか?大木にぶつかる、木は薙ぎ倒されるが?キョロキョロと見回して俺を探してる、ヤ~イ!上は見れないだろ!


えっ!なんで果樹園方向!不味い!これは早く!


ビームショット!額にビシッ!と当たりホンノリ焦げた煙り

貫通してる、そしてゆっくりと倒れた┅┅なんか簡単、良いのか?


それを収納して戻ったら皆さんビビッてたのか集まってた


「なんか凄い地響きがしたよ?」

「それに凄い音がした、ドッシャーンって」

「嫌だねぇ、サルの次はなんだい!この果樹園は呪われてるのかい!」


そんな感想でしょうか?まぁ大木にぶつかった音は凄かったし地響きして突進してた┅┅


「あのぉ?ビバルさん?ちょっと良いですか?」

「なんじゃな?」

「実はあの原因を始末して来ました┅┅このバッグに収納してますけど?」

「なんじゃと!ではそれを出しておくれ、みんなに安心して貰う為じゃ」


仕方なく出すと悲鳴と歓声が入り交じって┅┅┅


「これはこのガーデンで処理出来ますか?」

「まぁ解体して食べる事は有るから無理じゃない、しかしこれは買い取りに出せば結構な値段だよ?良いのか?」

「ええ、肉を少し分けて貰えば」

「欲が無いなぁ、でも本人が良いなら助かる、この肉は旨いし皆も喜ぶ」

「解体手伝いますよ」

「有り難い!この図体は骨が折れるからな、じゃあ男衆は全員で解体だ!気張れ!」


頑張って1の時で仕舞えた、とても感謝され肉を30kgも貰った

そしてダイガスさんの御者で町へ戻った

皆は疲れたのか?寝てる、エルガちゃんも俺に寄り掛かって寝てる


「なぁジョウ?又来てくれねぇか?親父達もオメェを気に入ってるしババア連中もだ、それに便りになる、依頼は別にだぞ、まぁギルドにはいつも依頼してるからな、それより仕事じゃなく来てくれ」

「はい、近くに行ったら必ず、それにお酒が欲しくなったら買いに行きますよ」

「そうか、待ってる」




こうして依頼達成してギルドへ凱旋したんだ┅♪






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