第10話 刃の小屋

冬の日が短く、日が沈むのが早い中、水松つぼみは八甲田山の深い雪を抜けて、新たな発見を求めてさらに山奥へと進んでいた。その日の早朝、彼女が市場で聞き込みをしている間に、地元の猟師から「山の奥深くに不自然な建物がある」との情報を得ていた。その情報がつぼみの興味を引き、彼女はその場所を探索することに決めた。


厚い雪を蹴散らしながら、彼女は猟師からの指示に従いながらその建物へと向かった。辺りはすでに薄暗くなり始めており、山の静けさが全てを包み込んでいた。やがて、つぼみは木々がまばらになる小さな開けた場所に出た。そこには、大きな木製の小屋がぽつんと建っていた。


小屋のドアは半開きで、中からは金属の反射する冷たい光が見えた。つぼみは息を潜めて小屋に近づき、慎重に中を覗き込んだ。その光の源は、小屋の中央に設置された巨大なギロチンだった。その周りにはさまざまなサイズのナタが整然と並べられており、いくつかはまだ新しいように見えた。


小屋の内部は、まるで誰かがここで刃物を使って何かを行っていた工房のようだった。壁には薄暗いランプがぶら下がり、その光が冷たい金属の表面を照らし出していた。つぼみは恐る恐る中に足を踏み入れ、ギロチンとナタを詳しく調べ始めた。


ギロチンの側面には、何かの記号が刻まれていた。それは彼女が以前に見たある家紋に酷似しており、その家紋は政治家の家系と関連があることが分かっていた。この発見が、彼女の推理に新たな次元を加えた。もしかしたら、この政治家が事件の裏で何かを企んでいるのかもしれない。


つぼみは小屋の他の部分も慎重に調べ、そこで古びた手帳を見つけた。手帳には数々の日付とともに、名前が記されており、その中には失踪した環境活動家たちの名前も含まれていた。これはギロチン仮面の犯行リストか、あるいはターゲットリストかもしれないと彼女は考えた。


この重要な証拠を持ち帰り、つぼみはすぐに父親と連絡を取り、さらなる捜査の準備を整えた。彼女はこの小屋が事件の解決に大きく寄与することを感じており、真実が明かされる日が近いと確信していた。この冷たい雪山の中に隠された秘密が、やがて全てを変えることになるだろう。

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