第6話 消えた痕跡

静寂が再び八甲田山を覆い尽くす中、水松つぼみは続く犠牲者の身元を突き止める手がかりを探し続けていた。彼女の心は重く、同時に燃えるような決意で満たされていた。新たな犠牲者が出たことで、事件の緊急性が増し、彼女は父と警察の協力を得て捜査を加速させた。


その日の午後、つぼみは再び現場を訪れた。凍えるような寒さの中、彼女は犠牲者が発見された周辺地域を徹底的に調べ上げた。雪に覆われた地面を注意深く見ると、わずかに残る足跡が見えた。これが事件の夜に誰かがここを通った痕跡だと考えた彼女は、その足跡を追い始めた。


足跡は森の奥深くへと続いていた。つぼみは、冷たい風が頬を切るのを感じながらも、一歩一歩確実に進んだ。森を抜けると、そこには古びた倉庫がぽつんと立っていた。その扉は半開きで、中からは何か物音が聞こえてきた。息を潜め、慎重に中を覗くと、一人の男が何かを焼却している場面に遭遇した。彼女の心臓が跳ねる。


その男はすぐに彼女の存在に気付き、振り返った。顔には覆面がされており、その眼だけが光っていた。つぼみは息を飲む。男は何も言わず、倉庫の奥へと逃げ込んだ。つぼみはすぐさま追跡を試みたが、男の姿は暗がりの中で消えてしまった。


倉庫の中を調査すると、燃やされたばかりの書類の残骸が見つかった。その中から半焼けの手紙を発見したつぼみは、その内容を急いで確認した。手紙には、「計画の変更」と書かれ、いくつかの名前と日付が記されていた。これが何を意味するのか、彼女はすぐには理解できなかったが、この手がかりが事件を解明する鍵になると直感した。


夕暮れ時、つぼみはその情報を持って警察へと戻った。彼女と父は手紙の内容を基に、これまでの事件との関連を探り始めた。一つ一つの名前が、この謎めいた事件の新たな一面を明らかにしていく。


夜が深まるにつれて、つぼみはこの事件が単なる連続殺人以上の何か、より深い陰謀が隠されている可能性に思いを馳せた。そして、彼女は真実を暴くため、さらに奥深くへと踏み込む覚悟を固めた。

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