第5話 氷点下の証言

八甲田山の朝霧が晴れ始めた頃、水松つぼみは神の谷からの帰り道、新たな犠牲者の報告を受けた。青森県警の連絡を受け、彼女は現場へと急いだ。霧の中に浮かぶ警察のサイレンの光が、不穏な空気を一層強調していた。


現場に到着すると、警察と捜査員たちが厳重にエリアを封鎖しており、つぼみは父の立場を利用して警戒線を越えた。そこには、再び首を切断された身元不明の遺体が横たわっていた。凍った地面に残された血の跡が、真っ白な雪に赤いコントラストを描いていた。


犠牲者の状況は前回と酷似していた。首の切断面は異常に精密で、犯行にはギロチンが用いられたことが疑われた。つぼみは現場の警察官から詳細を聞き出し、犠牲者が発見された状況や時間帯、そして目撃者の有無について質問を重ねた。


「目撃者はおらず、遺体は今朝、早くのパトロール中に発見されました。首のない状態で、手には…」警察官の声が途切れ、つぼみは遺体の手元に視線を移した。凍りついた手の中には、何かが握られていた。それは小さな木製のペンダントで、粗末な彫刻が施されている。


このペンダントは何かの手がかりになるかもしれないと考えたつぼみは、さらに調査を進めることを決意した。彼女はペンダントを保護袋に入れ、持ち帰る許可を得た。


その夜、つぼみは自宅でペンダントを詳しく調べた。小さな彫刻は山の形をしており、その中には「ギロチン仮面」という言葉が刻まれていた。これが示す意味は何か、犯人は何を伝えようとしているのか、彼女の心は疑問でいっぱいだった。


一方、つぼみの父親も事件の重大さを認識し、より多くのリソースを捜査に割り当てることを決定。つぼみは父とともに、この連続事件の背後にある謎を解き明かすための長い夜を過ごすことになった。


真実を求めるつぼみの戦いは、ただちにさらなる危険と謎に直面することを意味していたが、彼女は決して後退することはなかった。次の手がかりが何をもたらすか、彼女は待ち望んでいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る