第3話 尊氏起つ

「政治を朝廷に取り戻す」

 1192年に源頼朝が天皇から征夷大将軍の称号を得て以来、天皇の役割は源氏と北条家に奪われ、政治の中心は1 世紀にわたって関東の鎌倉であった。

 北条得宗家によって支配されていた鎌倉幕府を打倒し、権力を取り戻した。

 楠木正成、新田義貞、とりわけ多大な加勢をうけた足利尊氏を厚く遇した。

 「坂東の田舎武者が」

 そのことに、護良親王は面白くない思い。

 護良親王と足利尊氏の間の緊張はますすま高まった。

 尊氏は一計を案じた。

 阿野廉子を通じて、護良親王が、

 「皇位を狙っていますよ」と有ること無いこと告げ口させた。

 不信感が芽生えた後醍醐天皇は護良親王を捕縛。その後鎌倉に移送した。

 その頃、関東では北条残党が散発的に騒動を起こし、緊張が続いてた。

 最後の執権、北条高時の息子、北条時行は新政権を打倒し、鎌倉に権力を取り戻さんと武力蜂起。

 武蔵で尊氏の弟、直義軍は大敗。

 直義は鎌倉を離れる決断をしたが、幽閉中の護良親王が時行と組んでは不都合だ。

 配下の淵辺義博を呼んで護良親王の殺害を命じた。

「帝や尊氏殿のお許しを得ず、親王様を殺めるなどもってのほか」

 下知に驚く淵辺に、

「つべこべ言わずに殺してこい」

 立ち上がり外を指さして怒鳴る直義。

 護良親王を殺し、直義は逃亡。鎌倉は時行の手に渡った。

 その知らせを聞いた尊氏は、弟を助けるために、兵を整えさらに内裏にあがって後醍醐天皇に謁見。出陣に当たり兵馬の大権を求めた。

「賊軍を討つべく私に然るべき冠位をお授けくださいませ」

 との申し出に後醍醐天皇は拒否。

 尊氏の望む“冠位”には任じられなかったが、尊氏は京を出陣。

鎌倉を押さえていた北条残党を瞬く間に破った。時行軍は鎌倉を放棄し壊走。

「逃げ上手な若君だ」

 尊氏は逃げ落ちた時行を嘲った。 

 北条残党軍を破ってすぐ、京に戻るように使者がやってっきたが、直義から、

「京に戻ってどうなることか。鎌倉にいる方が安全ですぞ」

と意見される。

 尊氏は鎌倉初代将軍である源頼朝の邸宅があった大蔵の地に邸宅を建てた。

 さらに尊氏は、勅許を得ず勝手に新田義貞の領国である上野守護に上杉を任じた。

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