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苦い後悔とともに、出会いの夜を思い出す。
あの頃はまだ知らなかった。顔から読み取れることがすべてではないことを。ヴラディミーラがあの寂しげな瞳の奥で何を考えていたかを。
もっと早く気づくべきだったのだ。
夜明け前の塩屋を走りながら、そう後悔することになる。
二〇一五年九月二九日未明。
スーパームーンの夜だった。不気味なほどに大きな満月が町を仄明るく照らしていた。月光の中を突っ切るようにして、わたしは塩屋の細い坂を駆け降りていく。館から姿を消したヴラディミーラの姿を探して。
彼女からの電話で目覚めてから一時間。月はもうずいぶんと低くなっていた。じきに日が昇るだろう。わたしは焦燥を覚えた。早くしないと文字通り灰塵に帰すことになる――吸血鬼は日光を浴びると灰になるという俗説が本当だったらの話だけれど。
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