怖い話『ティッシュ配りの仕事』

怖い話『ティッシュ配りのバイト』

 ティッシュ配りのバイト


 大学生の頃、俺はティッシュ配りをするバイトを行っていた。

 そのとき、70過ぎのじいさんが喋り掛けてきた。人当たりがいい俺はそのじいさんと話し合った。

 すると、そのじいさんは「お前を気に入った」と言い、手提げ袋から封筒を取り出した。悪いことはせんから貰っとけと言われ、俺はその封筒を無理矢理渡された。

 その後、じいさんはまた歩いて行ったのを見てから、俺は封筒を開いた。

 そこには、万札が二枚入っていた。

 苦学生で困ってることを伝えたから、その援助をしてくれたのだろう。そう思い、深く考えることはしなかった。


 数日後、俺はまたティッシュ配りのバイトをやっていた。

 すると、またあのじいさんが現れ、俺へ封筒を渡してきた。これ以上は受け取れないと思いつつも、半ば押し付けられる形で渡され、またしても俺は受け取ってしまった。


 で、また後日——。

 俺がティッシュ配りを行い、陽気な若い女の子に喋り掛けられていたときだった。

 女の子の後方に立ち、そのじいさんは俺の方をジィーとニタニタした顔で見ていた。

 苦学生で冴えない俺が女の子に取り囲まれている姿が余程面白かったのだろう。

 そう思いつつも、俺が陽気な女性たちに手を振られ、別れた直後だった。


 そのじいさんが「よぉー」と愛想良く笑みを浮かべ、こちらへと近づいて来た。


「あのオナゴはべっぴんさんやったなぁ〜。お前もあんな可愛いオナゴが欲しかやろ?」


 歩いていく女性陣の後ろ姿を見て、そのじいさんはいやらしい目付きを向けていた。

 特に、尻に釘付けである。


「でも、オレはお前が一番可愛いと思う」


 じいさんは続けた。


「ところで、あと幾ら払えばええんじゃ?」


 俺はその日以来——。

 ティッシュ配りのバイトを辞めた。

 もう二度とやる気はない。

 男に好かれるなんて、二度と御免だから。

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