4

 俺は真実を思い出した。

 修学旅行中の船が大波に飲み込まれ、俺たちは無人島へと流されたのである。

 生き残った生徒の人数は乏しかったものの、全員で救済の日を待っていた。

 だけど、幾ら待っても助けに来ずに、全員が苛立ちを覚えていたのだ。

 結句、生き残ったのは——。


 俺とマユミだけになったというわけだ。


 恋人だった彼女は欲望に塗れた男たちに捕まり、目の前で無慈悲にも犯された。必死に耐え忍ぶ声を、今でも鮮明に思い出せる。

 だけど、途中で彼女も生きたいという生き物特有の生存本能が働いたらしく、豚のような媚びた声を上げ、男たちからの快楽への誘いを楽しんでいたのだ。

 涙を流しながらも、笑い声を上げる彼女。

 見ているだけでも心が苦しくなった。

 でも、俺は何もできなかった——。


 で、女を散々弄んだ男たちは、新たな娯楽——俺を見つけて、言うのである。


「——なぁ、コイツを殴り殺してみようぜ」


 無人島には娯楽と呼べるものは何もない。

 学校の人間と言えども、クラスが違えば、ただの赤の他人だ。

 赤の他人ならば、誰もが非道になれる。

 結局なところ、人間は自分とその周りさえ良ければ、目を背けてしまうのだ。

 故に、目の前に同じ学校出身の人間がいたとしても、それ以上の感情は生まれないのだ。


 もう無理だ。

 そう諦めたとき、俺を助けてくれたのは。

 マユミだった。愛が重たい幼馴染み。

 昔から俺が他の女の子と仲良くなると、その仲を引き裂くようなジャジャ馬だった。

 手元には大きなナタを抱えた彼女は、それを豪快に振り回して、男たちを殴り殺した。

 そして、彼女は俺へと問うのである。


「ねぇ、ユウジ」


 正義の味方のように現れた幼馴染み。

 優しい言葉を吐いてくれるのか。

 そんな甘いことを考える俺に対して、彼女は口元を歪めて。


「——今ここで死にたくないよね??」


 死にたくない。

 それは確かで、俺はコクリと頷いた。

 すると、彼女はナタを投げた。近くの地面に突き刺さったそれには、男たちの血がベッタリと付着していた。


「ならさ、今ここで彼女を殺してよ」


 幼馴染みからの提案に、俺は苦笑いした。


「ちょっと待て。どうして俺が彼女を」

「生き残りたいんでしょ? それなら殺れ」

「無理だ、無理だ、そんなの俺は——」


 一瞬の出来事。

 泣き叫ぶ俺の前に、幼馴染みは立つ。

 先端部分を尖らせた髪留めを俺の首元へと向け、彼女は真顔で呟いてきた。


「——彼女さんは死にたいみたいだよ」


 男たちに弄ばれた彼女。

 身体の至る箇所を犯され、弄ばれ——。

 彼女は生きる希望を失っていた。

 無秩序なこの世界には法律が存在しない。

 故に、人間は狂気に突っ走れるのである。


「……ユウジくん。もう殺して……殺して」


 恋人は助けを求めてくる。

 だが、顔は正反対の方向を向いていた。

 自分とは違う場所へと言葉を放つのだ。

 それは何故か——。


 彼女は視力を失っていたのである。


「お願い……もう生きてても意味ないよ」


 マユミは殺せと命令してきたが、俺はその指示に従わなかった。代わりに、愛する恋人の元へと向かい、ゆっくりと抱きしめた。

 弱った彼女の体温が下がっていく。医者ではない俺は彼女が生き絶えるまで抱きしめ続けるのであった。


◇◆◇◆◇◆


「それで俺は全てを忘れるために、お前に監禁を頼んだってわけか。本当に最低な男だ」


 悲惨な現実から逃れるために。

 自分だけ記憶を消していたのである。

 そうすれば、真実を思い出すまでは幸せな日常を過ごすことができるのだから。


「ユウジ。安心していいよ、次はもっと上手くやるから。アタシはどんなに傷付いてもいい。だから、また……記憶を失ってみる?」


◇◆◇◆◇◆


 俺は、今——幼馴染みに監禁されている。

 どのくらい監禁されているのかは分からない。ただ、俺のことが大好きな幼馴染みに包囲されているのは事実。

 両手両足は鎖に繋げられ、逃げることは全くできない。少しでも動くだけで、ジャラジャラと鎖の音が響き渡るわけだ。

 彼女が寝ている隙を付いて、このベッドから逃げようと企むのだが——。


 俺は簡単に捕まってしまった。

 終いには、俺のお腹の上でスヤスヤ眠る幼馴染みが目をパチリと開いて言うのである。


「ユウジはずっとアタシのもの❤︎」


(完結)


————————————————————

あとがき


 短編だから許される展開。

 これが長編ならぶん投げてると思う。

 それほどに突飛な作品だったなと。


 ヤンデレ幼馴染みが監禁している。

 その理由は、主人公が頼んでいた。

 というのも、実は彼等が居るのは無人島。


 ってのが、今作のオチなんだけど……。


 まぁ、これは後付け設定でございます。

 本当は親戚の家を借りて、主人公を夏休み期間中に監禁するヤンデレ幼馴染みのお話を書く予定だったんだけど……。


 孤島に監禁するほうが面白そうだな。

 主人公がヤンデレ幼馴染みの魔の手から脱出するお話に変えたほうが面白いかもー!!


 って感じで、色々と頭で回った結果——。


 まぁ、こんな感じになりました(笑)


 この作品は不出来ですね。

 エンタメ作品として及第点にも満たない。


 ヤンデレ幼馴染みに監禁される。

 この設定は面白いと思うんだけど……。

 実際に書いてみると、ストーリーがこれ以上思い付かないんだよなぁ。

 主人公がヤンデレ娘との信頼関係を築くことで、行動制限が解除される仕組みが一番この手のお話にはいいのかもと思いました!!


 プロトタイプ作品は——。

 複雑なストーリーではなく、単純なストーリー構成で、内容は一発ネタ系がいいね!!


 ちょいと、プロトタイプ作品は——。


 書き方の見直しをしたほうがいいかも!!

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