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「勝手に連れて来てごめんね。ハンバーガーで本当に良かった?」
名前も知らない彼女に引っ張られて連れてこられたのは——。
赤と黄が特徴的なバーガーショップ。
子供から大人まで幅広い層に人気だ。マスコットキャラクター的存在であるピエロが、僕には不気味にしか見えないけれど。
「あ、うん。僕、バーガー好きだし。大丈夫だよ」
「それは良かった。独断で決めたから申し訳なかったし」
「気にすることはないよ。アプリには限定クーポンがあるとか、店員さんがわざわざ座席まで持って来てくれるとか今まで知らなくて勉強になった」
現代技術の発達を垣間見た気がする。
これほどまでに発展しているのかと。
元々僕は世間知らずであるというのは事実だけどさ。
「あのさ……な、名前。教えてもらってもいいかな?」
チキンバーガー二つを食べ終えた。
残るはメロンジュースとポテトのみ。
となったところで、僕は名前を訊ねてみた。
さっさと聞けば良かったのかもしれないけれど。
人間関係に疎い僕には少しばかり時間がかかるのだ。
「そっかそっか。そういえば、名前教えるの忘れてたねー」
僕の真正面に座る茶髪の少女。
男女問わず、周囲の人間から注目を浴びている。
先程からも男性陣がこちらをチラチラ見ては「か、かわいいよな」とか「あんな彼女が欲しいー」と口々に言っているし。
とりあえず、一際愛らしい容姿を持つ彼女は続けて。
「紹介が遅れてごめん。
「星座橋捺月?」
「それが私の名前。捺月と呼んでいいよ、特別に」
「特別って? 他の人はどう呼んでるの?」
「星座橋さんって呼ばれてるよ。だから、キミだけ特別」
「どうして僕だけ?」
「それはね、キミが共犯者だから」
「共犯者?」
「そう。自殺はイケナイことだから。私たちは共犯者」
自殺はイケナイことか。
それが分かっているのにも関わらず。
どうして彼女は行おうとしているのか。謎すぎる。
「キミはさ、本当に死ぬの?」
ただの興味本位だった。
周りの人間がタバコやパチンコ、そしてお酒に流されるように、僕は『死』を体験したかったのかもしれない。と言っても、一度経験してしまったら、現世に戻ってくることは一生できないのだけれど。
「うん。死ぬよ、私は。今日キミと一緒にね」
満面の笑み。
自分が死ぬことを喜んでいるように。
僕には到底理解できないけれど。
僕と同じように、彼女が何かを抱えていることだけは分かった。
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