可愛くなったからオレの女にしてやる?寝言は寝て言え。

末松正樹スエマツマサキくん、貴方のことが好きです。付き合って下さい」


 高校二年生。

 青春真っ只中の私、本田梨沙ホンダリサは恋に恋してました。

 多分だけど、男性に優しくされたことが初めてだったからかな。

 偶然隣の席になって、偶然忘れ物したら「俺のノート一緒に見る?」と優しく声を掛けてくれたんだ。


 それだけで、私は何故かゾッコン。本当バカだよねー。

 自分でも十分に理解してます。私はバカです、ごめんなさい。


 だって、この男は……。


「えーと、本田さんだったよね?」


 あ、私の名前覚えてくれてるー。う、嬉しいー。

 と恋愛慣れしてない私が思った瞬間には。


「残念だけどさ、本田さんと俺とじゃ、どう考えても釣り合わないでしょ」


「えっ……」


 はい、一瞬にして、地獄へと突き落とされました。


「だって、俺。超絶イケメンだよ? こんなカッコいい男である俺が、本田さんみたいな地味な文学少女を好きになるなんてありえないでしょ。メガネもだせぇーし……いつも本ばっかり読んでるし。マジで無理っつの」


 たしかに。

 この男は、モテてた。

 女性を何人も誑かしているという情報もあった。

 でも、地味でバカな私は人気者だからそんな話が出てくるんだ。

 そんなふうに勝手に思い込んでいたわけ、本当無様ね。


「末松正樹の彼女は、アイドルぐらい可愛い女の子じゃないとダメなんだよ。それぐらい常識だろ? ってか、メガネかけてるのに、そんなこともわからないの? メガネかけててバカって本当残念すぎない?」


 末松正樹くん。

 学園の王子様。

 どんなときでも優しくて、クラスの中心にいるイケメン。

 でも、実際は……。


「ったくよ……わざわざ時間を取らせやがって。マジでうぜぇんだよ」


 末松正樹は教室へと戻ろうとするのだが。


「ま、待ってぇええええええええええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」


 私は必死に引き留めていた。

 彼の腕を掴んで、必死にね。


 でも、現実ってのは残酷なのね。


「俺に気安く触るんじゃねぇぇえええええええええええ!!!!!!」


「ぶふううううううッ————————!!!!!!!!!!!!」


 思いっきり、ぶん殴られました。レディの顔を殴るなんて最低!!


「な、何するのよ、ちょっと顔がいいからって調子に乗りやがって!」


 あ、しまった。心の声が出てしまった。


「あのなぁー、俺はお前みたいなブスには用はないんだよ」


「えっ……?」


「俺は可愛い女の子にしか興味ねぇーの」


 だからさ、と学園の王子様と評される男は続けた。


「お前みたいなブスは二度と俺に喋りかけるんじゃねぇーよ」

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