第十三章 繰り返す殺人鬼
俺は、死刑囚である。
俺は、何人もの女を殺した。
家庭でも仕事場でも上手くいかなくて、俺は、むしゃくしゃして、無関係の女達を殺したのだ。
何度も助けを求める女達に、何度もナイフで切りつけた。
最初は、服が切れるぐらい浅く、逃げ惑い、悲鳴を上げる女達に、俺は次第に興奮し、時間をかけて、女達を切り刻んだ。
女達は、血の海の中、肉の塊になっていた。
間抜けな事に、俺は事件現場に自分の免許証を落としてしまい、呆気なく捕まり、そして、死刑宣告を受けた。
俺は、何も文句を言うつもりもない。
死刑に値する程の残酷な事をしてしまったのだから。
俺は、毎日、被害者達に詫び祈りを捧げた。
何度も……何度も……。
詫びて許されるものでもないが、今の俺には、こうする事しか出来ない。
今日は、俺の死刑執行の日。
朝から首が痛くてたまらなかったがそんな事を言ってる場合じゃない。
『やっと……終われるのか。』
溜息にも似た深い息を吐き、俺は死刑場へ向かう。
教誨室へ入ると、教誨師が俺の顔をじっと見つめ、静かに言った。
「さぁ、祈りなさい。」
「教誨師様……もう俺は許されますか?」
「心から祈れば、きっと……。」
俺は、心から祈った。今度こそ、被害者も俺も報われますように。
絞首台の上にきた俺は、警察官に言う。
「これで、何度目ですかね?」
警察官は、静かに言う。
「うーん……。25回目じゃないか?」
淡々と言う警察官に俺は、尋ねる。
「今度こそ、死ねますかね?」
その言葉に、警察官は、伸びきった俺の首を見つめ、眉を寄せる。
「……分からんね。」
「そうですよね……俺にも分からないのだから。」
俺の首に縄がかけられ、床が開き、俺は、落ちていった。
「ダメだ……!今度も死んでない。いい加減、死んでくれないか?気味が悪い。」
また俺は、繰り返すのか……。
ー第十三章 繰り返す殺人鬼【完】ー
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