第九章 狂った殺人鬼




ある夫婦と一人息子がいた。

ある日、夫が事故で他界して、夫の会社の同僚が葬式にきた。

妻は、その同僚に一目惚れをした。

そして、妻は、一人息子を殺してしまった。

何故か?


まぁ、よくあるサイコパス診断の問題である。

答えは、『息子の葬儀で、また同僚に会えるから。』


ここに、五年間、無差別に人を殺してきた連続殺人事件の犯人がいる。

「何故、人を殺したんだ?」

この質問に対して、普通の人間ならば、日頃のストレス発散、別に恨みはないが何となく、自分でも分からない……等、いろんな理由があるだろう。

刑事の質問に、犯人は、フッと口元に笑みを浮かべる。

「逆に、刑事さんに聞きますけれど。どうして、人を殺してはいけないんですか?」

「どうして……って。誰であろうと、その人の人生を奪う権利がないからだ。」

刑事の言葉に、犯人は、フフフと笑う。

「どうせ、人は、いつか死ぬでしょ?それが少し早くなったからって、どうだって言うんです?それに、世の中、いらない人間が沢山いるんです。その中の、僅かな人間を殺したからって、何だってんです?」

反省の色もなく、そう言う犯人に、刑事は、こう言った。

「被害者や遺族に、申し訳ないと思わないのか?」

「申し訳ない?何で?……だって、俺は、全然、困りませんから。」

犯人の言葉に、しばらく考えていたが、刑事は、静かに、口を開いた。

「なるほど……。つまり、世の中には、くだらない人間が山ほどいて、その中の一握りの人間が死んでも、どうせ、何れは、みんな死ぬのだから、関係ない……と言う事かね?」

じっと見つめる刑事に、犯人は、一瞬、息を飲んだが、すぐに笑みを浮かべた。

「そうです。」

バカにしたような笑みを浮かべる犯人に、刑事は、ニヤリと笑う。

「では、今、ここで私がお前を殺しても、何の問題もないって事か。」

「えっ……?」

「だって、そうだろう?お前は、世の中に必要ない人間なんだし、お前が死んでも、私は、全く困らないもの。」




「連続殺人鬼が取り調べ中に、自殺したんですか!?」

多くの記者に囲まれた刑事は、沈痛な面持ちで応えた。

「ええ……。長い取り調べで、喉が渇いたと言うものだから、飲み物を用意しようとしたんですよ。そしたら、いきなり、自分で自分の舌を噛み切ったんです。」

刑事の言葉に、記者達は、沢山の質問を投げかける。

しばらく黙っていたが、刑事は、強く息を吐き、こう言った。

「もう……いいじゃないですか。」

「何がいいんですか!?これは、警察の不注意ですよね?!」

「……だから、何だってんです?関係ないですよ。」

一息おき、刑事は言う。








「誰が死のうと、私は、困らないのですから。」








ー第九章 狂った殺人鬼【完】ー

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