第四章 忙しい殺人鬼
福岡のとある場所で、何件もの殺人事件が発生していた。
事件の被害者は、若い女性。そして、殺人が行われるのは決まって、月曜日だった。
その為、その犯人の名前は『月曜日の殺人鬼』と呼ばれていた。
その犯人がやっと逮捕されたと報道され、人々、特に若い女性は、ホッと胸を撫で下ろしていた。
犯人は、50代の女。若い頃は、とても美しくミスコンテストにも優勝した女だ。
犯行動機は、自分より美しく若い女が世の中にいるのが許せなかったから。
その女が逮捕されたのは、月曜日。
女は、逮捕された時から、挙動不審で、ソワソワして落ち着きがなかった。
何かブツブツと独り言を呟いていたが声が小さく聞き取れない。
何日も続く事情聴取でも、女は、ブツブツと呟きながら、時には、苛立ったように、両手で髪の毛をむしり、フゥフゥと荒い息を吐いていた。
その女が血走った目を刑事に向け、こう尋ねてきた。
「刑事さん、今日は、何曜日ですか?」
女の問いに、刑事は、眉を寄せ、応える。
「今日は、水曜日だ。」
「水曜日?水曜日ですって……?ああ……ああ……あー……!!」
両手で頭を抱え、女は声を上げる。
次の日の取調べでも、女は相変わらず、挙動不審で、ブツブツと独り言を言っている。
そして、突然、顔を上げると、刑事に尋ねる。
「刑事さん!今日は、何曜日ですか?!」
「今日は、木曜日だ。何なんだ?どうして、そんなに曜日が気になるんだ?」
眉を寄せ尋ねる刑事に、女は応える。
「だってね。私は、忙しいんですよ!月曜日は、福岡、火曜日は、沖縄、水曜日は、東京……木曜日は、大阪、えーっと、それから……金曜日は、新潟……ああ、兎に角、私は、忙しいんだから!」
女の言葉に、刑事は眉を上げる。
そして、次の日。調べで、女は曜日ごとに、あちこちの所へ行き、殺人を犯していた事が分かった。
「お前、あちこちで殺人を犯しているのか!?」
刑事が怒鳴るように問うと、女は、フフフと笑い声を上げる。
「だから、言ってるじゃない。私は、忙しいんだって。こんな所で、のんびりしてる暇はないんだって。……そうだ!今度は、国外にも行かないといけないのよ!まだまだ忙しくなるわ。ねぇー、刑事さん……。」
「一週間じゃ足りませんよね?」
ー第四章 忙しい殺人鬼【完】ー
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