誰にも負けないくらい強くなる〜もしくは優等生から筋トレマニアへの進化〜

この世の覇者になる。

これがこの物語の主人公ペスカの今世の目標である。


それは現在の人間と魔物による対立構造に横槍を入れ、どちらにも依存しない第三の陣営の長として君臨し、かつ人間も魔物も凌ぎ、天下を統一することを意味する。


そのために必要なものは何か。


ペスカは第一に武力であると結論を出した。考え始めてから結論までおおよそ2秒。


対立構造とは言ったものの、魔物による襲撃を武装訓練を重ねた一部の人間がかろうじて食い止めているような有様だ。しかも魔物の拠点を破壊するような動きではなく、襲撃された村から追い払うのが関の山である。

つまり、魔物によるワンサイド状態ということだ。


人間が魔物により絶滅していないのは、魔物の繁殖力の弱さ故の数の少なさ。そして魔物にも人間を生かしておくメリットがあるかららしい。


まず食料としての役割。

ある程度高度な文明を持つ人間は、その体に養分を蓄えている。要は美味いのだ。


次に製造機関としての役割。

群れをなし、文化を形成し、効率よく生きる人間の製造物を魔物が享受していることである。力では人間は魔物に歯が立たないが、知恵はそうでもないらしい。

人間が作った諸々の物品が魔物の生活を支えてしまっているらしい。人間からしたらたまったものではない。


適度に刈り取られ、適度に生かされと、人間は魔物にうまく利用されている有様である。


さて、この世の覇者として君臨するためには、そんな魔物を制圧できる力が第一だ。人間は知恵が回るので、我々の優位性を示せばうまくこき使えるだろう。


やるべきことは人間として最上級の武力を身につけること。そして、同じぐらいの強さかつ、覇者の側近となりうる部下をスカウトすること。なんにせよ、必要なのは筋力と体力である。


よし、筋トレ頑張ろう!!!


この結論に至るまで4秒。読者の皆様はお気づきかもしれないが、ペスカは脳筋であった。


猛烈に筋トレをし始めたペスカを養父と養母である老人二人は、心臓通り越して背中にまで穴が貫通するほど心配していたが、当の本人はどこ吹く風である。


「ペスカや・・・お前一体・・・」

「どこか悪いのかい?」

「じいちゃんばあちゃん、待ってて!私てっぺんとって世界ひっくり返してくるから!!!」


読者の皆様はお気づきかもしれないが、ペスカはちょっとアホの子であった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る