この世の覇者を目指す〜イメチェンするなら極端にするべし〜

私には、今世以外の記憶がある。

周りにへこへこ媚びへつらえながら、誰かの靴の裏をベロンベロンし、二十歳まで生きたものの、村ごと魔物の襲撃を受け死んだ、善行の負債だらけの人生の記憶だ。


そうして後悔を胸に死んだはずなのだが、目が覚めたら十五歳に戻っていた。


最初は夢か走馬灯かと、天国へのカウントダウンと称して数々の奇行をやらかして、老体の養父と養母を散々オロオロさせたものだが、待てど暮らせど天国へアップロードされる気配がないため諦める他なかった。


もう死んでるからいいやと夢の中で夢だと気づいた時のごとく、村の長にオラついてきた隣村のオヤジの頭をペチペチはたいた末に、なぜか自慢の顎髭を三つ編みにし、危険なぐらい高笑いを浮かべながら肩車して走り回るという謎の行動をしたせいで、諦めた後の三日間は羞恥心にのたうち回った。目をひん剥き、口は顎が外れるすれすれまで開いてゲハゲハ笑う私は我ながら怖すぎたと評価せざるを得ない。頼むから走馬灯であってくれと心から願って村の中を隅から隅まで叫びながら走り回るなど、傷に傷を重ねるようなことをしてしまったのも後悔ポイントだ。


「・・・いや、気にしたら負けなんじゃね?」


前の記憶で後悔したことはなんだったか。それは周りの人の期待に応えすぎたことである。

今回は二十で死ぬ前、何かしら理由をつけて村から脱出し、襲撃を回避することができるかもしれないが、別に若くして死んだこと自体に後悔しているわけではない。

今回も二十までしか生きられないかもしれないが、今度こそ、同じ轍を踏まないように生きたいのだ。


ちょうどやらかしてしまったわけだし。

「なんか変なもの食べたみたい☆てへぺろ」ってするにはいささか痛すぎる奇行であった。少なくとも「ちょっと軌道修正」の域は超えていると言わざるを得ない。やるなら基礎工から、いや地盤整備からのやり直しだ。


「せっかくなら真逆な生き方をしてみようか」

いい子ではなく、悪い子。

従う者ではなく、従わせる者。

模範的生徒ではなく、反面教師。

イエスマンではなく、ノーマン。


それらを組み合わせると・・・

「この世の覇者になって全てを支配する!!」

それであってる?と優しいツッコミを入れてくれる人などいるわけもなく、今世の目標が決まってしまった。

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