いい子にしてたら殺されたのでスイーツで仲間を集めてこの世の支配者になろうと思います

れむ

襲撃された祭り〜もしくは赤べこ人生の終焉〜

ペスカは激怒した。

必ず、かの邪智暴虐の魔物を除かねばならぬと決意した。


人はこときれる間際も余計な思考が止まらないものらしい。

政治がわからぬ若造が、今期最大の軽率な物語のフレーズが出てきたのがコンマ数秒ほど前。

見事に吹き出した血飛沫に「あ、これ死んだな」と確信し、全てを放り投げるように大の字に倒れる。

手に持っていた神具が派手な音を立てて転がる。血溜まりに月桂樹の葉が飲み込まれ、鏡が遠くに転がる。

石造りの神殿が、初夏の日差しに反射して真っ白に輝く。目が痛くなるほどの白に、柔らかい空の青が目に優しい。


そして近くで悲鳴が聞こえ、叫び声と破壊音が続き、砂埃と血の匂いが漂ってきた。


お・そ・ら・き・れ・い。


なんとかしてあげたい気持ちはマウンテンマウンテンだが、如何せんこちらも死ぬ数秒前である。他人に手を差し伸べるどころか、手を差し伸べてもらう筆頭である。多少の現実逃避行など責められるべきでない。

尤も、この中に手を差し伸べられる余裕を持つ人などいないだろうが。

かすみゆく視線を上に持ち上げるとぬけるような青空と木々をバックに、石造りの神殿がこちらを見下ろしていた。


なんという祭り日和だこと。


他の村から迫害を受けたこの村が、外部の人を招き行う年に一度の祭りの日がよりにもよって魔物による襲撃を受ける日になろうとは。

日頃から偉そうに「貴様らは我々を助けるために存在する」と西へ東へこき使ってくれた隣町の町長のガラガラした悲鳴を聞きながら小匙半分くらい「ざまあw」なんて思わないでもなかった。


−−でもなぁ・・・


なんともあっけない、クソみたいな人生だった。


少しでも村の立場が良くなるように、少しでも謂れのない嫌がらせが回避できるよ赤べこよろしくお偉いさんの機嫌をとった。少しでも暗くない未来になるように、Mっ気でもあったかと疑うぐらい鍛錬に明け暮れた。ただの押し付けだとわかっていながら神職なんかも引き受けたりして。


いつか将来、見返りがあると信じて真っ当にやってきたが、こんなにあっさり未来が閉ざされるとは。


あぁ、もしも。

もう一度人生がやり直せるのなら。


きっとこんなふうに誰かのために生きたりしない。

都合のいい人間になどならない。


自分の手から滑り落ちた御神鏡が視界の端で半分地面を、半分は空を映し出していた。あぁ、割れなくてよかったと思うと同時に割れたらよかったのにと意味もなく八つ当たりする。


そうだな、せっかくならこの世を支配する魔王でも目指そうか。

誰の軍門にも下らない、誰のためにも生きない。そんな人生を・・・


記憶が途絶える。

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