第18話  倶楽部緊急ミーティング

やはりチーボーには最初に自分の犯したミスを話さなければいけないな・・・。

きちんと失敗を聞いてもらったうえで、チーボー自身も迷える子羊にならないようにしなければ。そうだ、逆のパターンで男が騙すという事もあり得る。

こんなパターンは危険だ!というのを含め、ディスカッションしなくては!!

部長としての力を見せつけるんだ・・・。

広瀬壮介行きます!!


「チーボー、話があるんだけど。」

神妙に話しかける俺に興味津々に顔を近付けてくるチーボー。


「なんでしょうか?ヒロセ。あまり真剣な顔は似合わないぞ!」


(似合わないぞ!とか言ってくる顔が可愛すぎるぞ!チーボー!)


「実は話したように、このお見合いパーティーには詐欺師も多数存在するんだよ。チーボーが認めたくない気持ちもわかるけど、それ位巧みな話術でお金を払う様に仕向けてくる。」


「杉山さんと村田さんのように?ですか?」


「そう、そうだ。あと俺もそう、騙されたんだよ。でも、その時は好きになってるから相手を疑う事なんて全然していない。気付くのはお金を渡して1か月後位。その1か月は浮かれてるから騙されてるなんて事にも気付かないんだよ。」


「時間差攻撃なんですか?1か月ずれて気付くなんて。」


(チーボーの言葉は真剣なのか、ふざけてるのか分からない時が多々ある)


「まあ、時間差というか、さっきの二人みたいに、だいたい、お金が必要なのを親族の病気のせいにしてみたりっていう話は多いみたいだね・・・。俺もそうだったから。」


「え!お金の為に詐欺師たちは家族を病気にするんですか?なんてひどい人達なんですか!」


「でしょ?分かればいいんです。そうなんです。家族が病気になってるみたいに言われたら助けたい!とか思うじゃないですか?」


「はい、思います。ヒロセも優しい。」


「まあ、その優しいの裏には男のいやらしい部分も隠れているけどね・・・。」


「いやらしい部分とは?なんですか?ヒロセ?」


(おいおい、そこ聞く所じゃなくて「なるほど」位で良い部分だよ!)


「まあ、そこの所は説明するにはとても難しい言語が必要になるからやめておこう。今のチーボーには理解出来ないかもしれない。とにかく、恋愛に慣れていない人は相手を想って助けたくなっちゃうんだよね。その気持ちを利用される訳さ。」


「私が逆でも同じように助けたくなっちゃいます!それは危険ですね!その心理を利用するなんて!しかも、いやらしい部分も利用してなんて!」


(いやらしい部分は忘れていいんだよ・・・チーボー。)


「だしょ?だしょ?そこ、利用するなんてひどいんだよ!ヘロンさんは・・・。」


「ヘロン、さん?誰ですか?その方は?」


「あ、つい口が滑って・・・。俺が最初に心奪われた人で、ついでにお金も奪われた人。」


「恋もお金も!上手い事言うな!ヒロセ!」


「いや、そこはからかう所じゃないし、上手い事言ったつもりもない!!真実を語っただけ!」


「なるほど、申し訳ございません。心とお金を奪われたヒロセ。恋泥棒に会い、お金泥棒にも合う・・・。踏んだり蹴ったりですね。」


「・・・。」


(チーボーは優しいのか鬼のような子なのか天然なのか、本物の馬鹿なのか分からない。これは恋愛が分からないという前に、人間論からやり直すべきだろう。むしろ、恋をしてはいけないタイプのような気がする)


「まあ、チーボーの言う通り色々持っていかれたんだけど、恋愛中は分からないもんだよ。だって好きな人だから、その人が不幸になりそうなら救って幸せにしたくなるでしょ。」


「ですよね。分かります。その心。」


「万が一だよ、逆にチーボーが騙される可能性だって有り得るんだよ。」


「確かに、私もヒロセと同じく愚かで人間的能力も低い人間である為、その可能性は大いにありますね。」


(チーボー、俺は愚かで人間的能力が低いのか?そう思っていたのになぜ入部したんだ・・・。)


「そうだ!よくある漫才師のコントみたいに実戦練習してみないか?俺がチーボーを騙す詐欺師になるからそれに合わせて騙されないように会話をしてみよう。」


「ヒロセ!頭良いです!やるな!ヒロセ!それ、やってみましょう!」


(絶対にチーボーは日本人じゃない気がする)


「こんにちは!初めまして。ヒロセと言います。」


「こんにちは!佐々木ちひろです。よろしくお願い致します。」


(チーボー、いいね。真面目にやってるぞー。)


「とても佐々木さんは素敵ですね。趣味とかありますか?」


「有難うございます!趣味ですか・・・。人間観察です。特に恋愛している人達の会話を盗み聞きしたり、それを聞いて一緒に納得したりするのが好きです。あ、たまにですがそれを聞いていて、(え?何言ってんの!)みたいな時もあります。」


「・・・あの。人間観察で人の話を盗み聞きって・・・そう聞くと単なる変態にしか聞こえませんが・・・。」


(チーボーの心が全く分からない。)


「変態に聞こえたとしたら、それは間違いです。あくまでも人間観察です。その上で気付くとそのカップルの会話を結構聞いてしまい、たまにそれに一緒に返事をする事もあります。」


「やっぱり、それは変態的行為のように感じますが・・・。大丈夫ですか?佐々木さん?」


「うーん、貴方とは話が合わない気がしますので、このお見合いはこちらから願い下げです!」


「え?キレたんですか?もう終わりですか?会話・・・。」


「残念ですが、話が合わないようです」


「・・・。」


(やはりチーボーは倶楽部から脱退させた方が良い気がしてきた。)


「ちょっと待って、チーボー、一度このやり取りは終了!」


「有難うございます!いかがですか?私の対応は、ヒロセ!」


「いや、対応どうのこうのではなく、趣味がアウトだよね。盗み聞きが趣味って言わない方が良い。もしそれが事実だとして本当に盗み聞きが趣味ならば、もっとも言ってはいけない回答だと思うよ。」


「なるほど、タメになります。では盗み聞きの事はなんて言えばいいのでしょう・・・。」


「盗み聞きを違う言い方??絶対に趣味を変えたくないって言うんだね。・・・そしたら、(カップルのハッピートークを共有するのが好きです!)みたいなのはどうかな?ちょっとファジーな感じで言えば相手にもバレないかもしれない。」


「なるほど、私はカップルのハッピートークを聞くのが好きなんです。それをずっと聞いていたいと思います。それが趣味です。」


「なんだろ、チーボーが言うと、やっぱり変態な趣味っぽく聞こえてくるんだけど。」


「私はヒロセの言った通りに言ったまでです!酷いです!ヒロセ!」


(俺の伝え方が悪いのか、チーボーが馬鹿なのか分からなくなってきた。難しすぎる)


そんな感じで俺は「今日の所は帰ろう」と話し、その場を去る事にしたのだ。

家でもう少し伝え方も練習しないといけないな・・・と思った俺だった。

ヒロセ!充電します!

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