第17話 二人でギブアンドテイク!

「傍観倶楽部」改めて始動!


と俺が言う言葉にチーボーが頷く。


ちゃんと俱楽部として始められる事に部長としても嬉しくなる。秘密結社だったはずが、すぐに秘密ではなくなってしまった・・・。


早速、倶楽部再始動からの女性来店。

まずは、横に座るのを確認すると二人で目くばせする。


(これからいくよ!みたいなこの目くばせが新しくていい感じだ)

ヒロセアンドチーボー行きます!


その女性は30代半ば、細身で黒髪のロング、一見性格は気難しそうな雰囲気にも見える彼女だが実際はどうなのか?と思いながら、ヒロセとチーボーは横目で凝視する。

遅れて5分後、40代半ばの男性がその席に来ると、


「杉山さんですか?」

と、尋ねる。

「はい、そうです。村田さんですか?」

と、聞き返す杉山さん。


お互いの身元確認も無事終わり二人が席に着く。


緊張をほぐす為、俺達は飲み物で喉を軽く潤す。


いつものように二人が飲み物を頼んでいるが、この二人は大人だった。

どちらもブラックコーヒーを頼んでいた。

ノーシュガー、ノーミルク!

カッコいい、俺もいつか言ってみたい。


二人共ビターな人間だと俺達は感じた。


「あの、杉山さんは普段のお仕事はどんな事を?」


(きっとブラックコーヒーが似合う仕事のはずだ。)


「私は、某外資系で秘書をやってます。英語を勉強してきたので。村田さんは?」


(才色兼備・・・。だ・・・。流石ブラックキャフェ!)


「私は、某自動車会社の下請けで車の部品などの開発をしています。」


(技術畑の人間だな・・・。まあ、ブラックキャフェだな。)


「杉山さんは、とても素敵なのに出会いとか普段ないんですか?」


(確かに聞きたいね。俺も。杉山さん綺麗だもん。)

(素敵な方ですね。杉山さん・・・。)

チーボーが呟く。


「はい、そうなんですよ。秘書という仕事柄、常に社長と共に行動している為、出会いがなかなか無くて。」


「なるほど、私は常に会社で商品開発している為、パソコンが恋人みたいなもんです。ははは。」


(俺もある意味パソコンと雑誌が恋人だ。ははは・・・。でも今はきっとチーボーのお陰で周りからは恋人同士か、お見合いに見られているかの二拓だな。)


「お見合いシートの所に趣味が登山と書いてましたが、山はお好きなんですか?」


(杉山さんからのトス!)


「はい、高尾山が好きで休みになると登ってます。」


(まさかの高尾山!もちろん山はどんな山でもなめてはいけないが・・・高尾山!)


「え?私も高尾山好きです!」


(急に杉山さんが明るくなった!まさかの高尾山繋がり!!!)


「そうなんですか?色んなルートありますがどのルートがお好きですか?」


「私は、裏道みたいな土だらけの道ありますよね?舗装されていない」


「はいはい!私もあの道好きです!少し水が流れていて天気のいい日でも木漏れ日だけで明るすぎないあの道ですか?」


「そうです!あの道です!マイナスイオンが凄いって!いつも思うんです。それが気持ち良くて!」


(無茶苦茶意気投合してるじゃないですかーー!)


すると目の前のチーボーが何か言いたげな顔して目を細めている。

俺は気になり、顔を近付けてチーボーに話しかける。


「どうしたの?チーボー?その目は!」

と小さな声で話す俺。


「私は、高尾山は舗装されてる道をゆっくりと歩くのが好きなので」


「おい!私情を挟んじゃダメ!俱楽部員としてそれはNGです!」


「今度良ければ一緒に登りませんか?高尾山。」


(おーーーーー!いきなり一緒に山登り!!!しかも杉山さんから!!)

(凄いですねーー!もう山登っちゃうんですね!いいですねー。)


横で興奮気味な二人。


「ぜひ、喜んで!」


(そりゃ、喜ぶよね。村田は。)

二人共横の席にいながらうんうんと頷く。


「あ、でも一つだけ悩みがあって・・・。」


(ん?杉山さんどうした?悩み???)

(なんでしょうね?いきなり山の次に悩みとは・・・。)


「実は父が病気で、お約束しても当日行けない事があるかもしれないんです。そんな私でも良いでしょうか?」


(なんだか、雲行きが怪しくなってきたぞ・・・。)

(病気なんですね。お父さん。大変なんですね)

(いや、チーボー、この展開は経験上ちょっと違うかもしれない。様子を見よう)


「え?病気なんですか!それは大変です!もちろん、その際はお伝えくだされば別の日でも・・・。」


(あーー、乗っかっちゃってる!!)


「本当ですか?お優しいんですね。村田さんは。」


「いや、とんでもないです。当たり前ですよ。」


(村田が調子に乗ってきている・・・。やはり危ない展開・・・。」

(村田さん、優しい方ですね・・・。涙が出そうです。)

(チ、チーボー、感動はまだ早いよ。)


「実は父が入院出来たら安心なんですが、まだそのお金が用意出来なくて。でも、父が早く恋人を紹介しろ、というもので参加していたんです。そうしたら、たまたま偶然ですが、山登りが好きな方がいたので・・・お願いしたんです。」


「え?そうなんですか。嬉しいです。でも、そのお金っていくらくらい足りないんですか?」


(おーーーーい!村田ーーー!危なすぎるぞー!)

(なんか聞いていて私が悲しくなりました。私もカンパしたいです。ぐすん。)

(チーボーまでーーー!)


「あと、100万円なんですが、あと一息頑張らないと。そして恋人を紹介できれば安心してくれるかなって・・・。あ、すいません、急に現実的な事を話してしまって。」


「いやいや、とんでもないです!もしよろしければ、その100万円、私が用立てましょうか?」


(やっぱり、ほら見ろ。絶対に。騙されてる・・・。)

(村田さん、優しすぎます。なんだかお似合いのカップルですね。グスン)

(チーボー、本気か?マジか?それ・・・。)


その後、杉山さんと村田はお店を後にした・・・。


「ヒロセ!私は感動してしまいました!凄く素敵な出会い、私もしたいです!!」


「チーボー・・・。言いたくないがあれは詐欺だ。」


「何言ってるんですか?あんなに素敵な杉山さんを詐欺呼ばわりなんて!お父様に対してお優しい杉山さんに対して酷すぎます!ヒロセ!ひどい!」


「チーボー、本気で言ってるのか?あのパターンはね、その後、100万円を村田が杉山さんに渡します。そして杉山さんは村田に本当に有難うございます!と、目をウルウルさせながら言うんですよ。そしてこの御恩は忘れません、私から落ち着いたら連絡しますね!と言って、村田は暫く待ちます。忠犬ハチ公のように。村田は自分のした行いに満足感を得て杉山さんとの未来を描きながら鼻の下を伸ばして待っています。尻尾振りながら。1か月位が過ぎて、連絡が無いので気になって村田が杉山さんに連絡をします。そしたら!!!なんと!!!(この電話は現在使われておりません)と黒柳徹子さんみたいな声の機械の音声でアナウンスが流れます。と言った流れのありふれた詐欺なんですよ!」


「・・・・・・・・・・。」


「チーボー!どうした!!」


「そんな、ひどい事、二人にあるわけが無いです!酷すぎます!その発想!」


ヤバい、チーボーがかなり泣いているぞ!周りの人達も俺達の事をジーっと見ている。「何泣かせてるの?」みたいな目で皆が見てるーーー!

起死回生しろ俺!


「いや、チーボー、聞いてくれ。実は俺はこのパターンでやられたんだよ。だから分かったんだよ。これが詐欺だって。俺もかなり取られたんだよ!!」


(告白してしまった。自分の真実を。部員のチーボーに・・・。)


(・・・・・・・・・・・。フーン、ヒロセ・・・。)


その後、チーボーは不幸な人を見るかのような目つきで俺を上から下まで見続けた。

周りの人達も同じように俺の事を憐れむ目で見ていた・・・。


傍観倶楽部初日・・・失敗、失敗した・・・。声が大きすぎたんだ・・・俺。


挽回します!ヒロセ行きます!





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