第16話 親密検査

まずは、相手の事をきちんと知らないとだめだ。

俺には騙された過去がある。

きちんとその辺はしっかりしないと・・・俺はどちらかというと・・・惚れっぽい。

笑顔をこちらに向けてくれただけで相手が俺の事を「好き」だと勘違いしてしまう。

歩いている時に手が触れれば絶対に手を繋ぎたいんだろと、思ってしまう。

目と目があえば・・・。

だからその辺もきちんと分かった上で、これからの倶楽部運営をしなければ。


もう一度正面に座ったチーボーをじっくりと眺める。


・・・かわいい・・・。


そしてそのあどけなさが少し残る顔にキュンとしてしまう。

ダメだ、ダメだ!あくまでも俺達は倶楽部の同志なんだ!勘違いするな俺!俺達はそんな仲ではなく、部活の仲間なんだ!!と、何回言い聞かせたか分からない位、自分を頭の中で説得する。

__かなりの時間が掛かってしまう。

その間、チーボーは(キョトン)という顔を何度もしている。


そうだ、ちゃんとスマートに部長としてリードしなくては。

でも、確認は必要だ。俺の心を整理する上でも。そう、確認、これは確認だ。


「あの、チーボー?確認だけど・・・。本当に単なる確認だからね。」

と、慎重に言葉を選びながら念を押す俺。

その言葉をしっかりと聞いているチーボー。


やっぱりかわいい・・・。


「はい、なんでしょうか?ヒロセ?」


「あ、チーボーも他の人を見学して勉強したいんだよね?(恋)について。」


「もちろんです!勉強したいです!ヒロセもだろ?」


チーボーはとにかく元気。そして尋ね方が少しおかしい気もするが明確だ。


「それで・・・、恋人を?こ・い・び・と?を作りたいんだよね?」


そうだ、これは確認事項だ。変に思われるなよ!俺!

俺が君と付き合いたいという素振りは見せてはダメだからな!


「はい、もちろん、恋人が欲しいです。その為に色んな人を見て勉強したいと思っています。ヒロセもそうだろ?」


「ですよね・・・。はい、私も同じです。あの、そこで一つ質問が・・・。」


(うわー、勇気を出さないと!でも丸っきり勘違いなら恥をかくだけだ!上手く聞け!俺!)


「私に一つ質問ですか?なんでしょうか?何でも聞いてください。ヒロセ!」


「あ、うん、今チーボーの目の前にも男子が一人座っていますけど、その人は・・・」


「はい!ヒロセです!部長です!私の同志です。」


「そうです!部長です!私はヒロセです!」


(違う、ちがーう!そんな事を聞きたいんじゃない!チーボーも天然か?)


「そうなんですけど、ヒロセもとりあえず男であるから・・・。その、そこに恋愛の感情とか・・・・」


「はい!ヒロセは部長ですのでご迷惑をお掛けするような事は致しません!」


(こんなごまかし方・・・。でも惨めだ。男として見られていない。でも、それを聞けて良かった。また勘違いする所だった。)


「そうです!私が部長のヒロセです!わかっていればよろしい!」


(こんな展開求めていなかった・・・。叫びたい。でも我慢だ。)


「この傍観倶楽部で私は変わりたいんです!ヒロセと今日知り合って、男性の事で分からない部分を直接聞けたらより深く「男」というものを知る事が出来ます。なので、ヒロセ、頼みます。」


「いや、もちろん、なんでも聞いてください。ただ・・・、万が一、私についても??知りたくなったら・・・?何でも・・・。聞いてね!」


「それは、本当に嬉しい限りです!ヒロセ!」


(このヒロセという呼び方をお願いしたのは間違いだったかもしれない。ちょっとチーボーの(ヒロセ)の使い方は乱暴な気がする)


「逆にチーボーが最初に聞いておきたい事はあるかな?」


(そうだ、こういうのが大事だ。そこから、よりチーボーの気持ちが知れるかもしれない)


「そうですね・・・。これから見学するお見合いの人達の会話で、気になる事や、こんな時はヒロセだったらこうするぜ!みたいなのがありましたら逐一聞きたいです。」


「なるほど、ではその辺はお互いに聞きあって異性の気持ちというのを共有しよう!どうだろう、チーボー。」


「了解です!ヒロセ!」


何となく不完全燃焼気味だが俺達は傍観倶楽部としての最初の見学を始める事にした。

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