第15話 ヒロセ アンド チーボー 結成!

ちらちら見ている彼女の視線を気にしていると、その子がいきなり席から立ち上がり、こちらに向かってくるではありませんか!!


(おいおいおいおい、俺の目からはそんなに素敵光線が出ているのかい?)

と、思いながらも気付くと俺は直立姿勢になり手も膝の上で待っている状態だ。


・・・これじゃ、犬の「マテ」と変わらない・・・。


氷のように固まっている俺に彼女は近付いてくるとすぐに話し掛けてきた!

「あの?・・・少しよろしいでしょうか?」

彼女が俺に??マジか?錯覚か?本当に??


「あ、はい、何でしょうか?」

と、あくまでも冷静に気取った感じで答える俺。


「変な事伺いますが・・・、もしかしてお見合いを見学?なさっていますか?」


え?バレてる?あんなにスマートに見ていたのにバレてんの??


「い、いえ、そんな事していませんよ・・・。まさかそんな事・・・ははは・・。」

と、嘘をつく俺。きっと俺の鼻はピノキオが嘘ついた時の第一段階くらいまで伸びているはず。


「本当ですか?私、ずっと見ていたんです。あなたの事を・・・。」


「い、いや、お間違いじゃーあーりませんかー」

また変な受け答えをしてしまった!!バレバレだ!


「いえ、そうじゃないんです。実は私も見ていて・・・お見合いを。それで勉強しようと思って見ていたら、あなたの事を見つけて・・・。」


「??え??ん??本当ですか?」


「はい、だからお仲間さんかな?と思って。」


トランスフォーメーション壮介!すぐに方向転換。


「はい、仰る通り、見てました。ガン見してました。私もその部類です、はい。」


「良かったです!あの、席・・・、ご一緒してもよろしいですか?」


マジか?見学に来てまさかの女子をゲット!!ちょっとこれは俺の脳では解析不能!!でもこのチャンスをものにしないと俺の成長はない!


もちろんこの時の俺のバックミュージックはTM NETWORKの「GET WILD」だぜ!ワイルドになっちゃうぜー!


「もちのロンです!どうぞお座りください。」

やばい、変なギャグを言ってしまった!!


「私の名前は佐々木ちひろです。どうぞよろしくお願い致します。」


「あ、私は広瀬壮介です。どうも・・・。」


なんか、お見合いで会ったのではなく、見学していて女子と出会うと挨拶も難しい・・・。


「私、男性とのお付き合いが出来なくて観察しよう!と思って来てたんです。そしたら、広瀬さんが見えて。凄くよく観察していたので、絶対に私と同じだと思って暫く広瀬さんを見ていました。そしたら、横で頷いたり、首振ったりしているので可笑しくて。それで声を掛けようと思って。でも、大当たりでした。」


「私は、そこまでバレバレな感じで見てましたかね?自分ではバレていないと思っていたので。冷静かつスマートに・・・。」


「いやいや、バレバレでしたよ!カップルの方の飲み物を飲んでいる姿までガン見していましたよ。」


「え?そこまで、私はさりげなくのつもりでしたが・・・。」


(俺、まるっきり観察が下手過ぎないか?というか、この子、話し上手だけどなぜ男子と話せないとか言ってる??俺も男子だぜ!)


「提案なんですが・・・。一人でこの場所に座って観察していると、かえって怪しいので今後二人で同席して周りと同じようにカップルのフリして見学をしませんか?」


(なるほど、そういう事か。確かに一理ある。一人で見ているとさっきの様に怪しい姿を見られてしまうのか・・・。)


「え・・・、と、とても素敵な提案だと思います。私もその提案に賛成ですね。実はいつもは二人で見学していたりするのですが、今日に限って私だけで来ていて。ははは・・・。」


「じゃ、私は無理ですかね?もう決まった方がいるのなら・・・。」


「いやいや、無理じゃありません!ちょうど世代交代しようと思ってましたので。佐々木さんでしたかね?良いですよ。俺のパートナーとして受け入れましょう。」


(なぜ俺は素直じゃないんだ!いつも二人で来てるとか嘘までついてカッコつけるとは。しかも受け入れましょうとか言ってしまった!!。むしろ大喜びだろ!!)


「良かったです!それでは、早速今からでも大丈夫ですか?そして今後もお願いしても大丈夫でしょうか?」


(すごく積極的で助かります!!!)


「あ、もちのロン!ですよ。今からカップルのフリして座りましょう。」


という事で彼女は元居た席から荷物を取ってくると私の前に座る。

よく見ると小さいが大人っぽさも兼ね備えている。


(なんだか、可愛らしい方だ。佐々木ちひろさん。既に好きのスイッチが入っているかもしれない。単純だーーー。俺。)


「ちなみに、どのようにお名前を呼べばよいですか?なんだか佐々木さんだとよそよそしいような・・・。」


「そうですよね。私の名前が’(ちひろ)なのでチーボーってどうですか?」


「あ、いきなり、そんな仲の良い感じで?でも、良いですね!チーボー!・・・なんか、昔そんな呼び方のドラマあったような。」


「広瀬さんの事はなんとお呼びすれば・・・。」


「あ、私の事は・・・(ヒロセ)と呼び捨てにしてください。」


(少しMっぽい事を言ってしまった!)


「実は、私は倶楽部を結成していまして、その俱楽部の名前が・・・。」


「はい、倶楽部?」


「傍観倶楽部と言います。こっそりと他人を観察して勉強する倶楽部なんですが、只今会員募集していまして、チーボー入りませんか?」


(とりあえず、チーボー呼びのファーストトライ。)


「ぜひ!傍観倶楽部!凄く良いですね!入部しまーす!」


(かわいいーーーー!簡単に受け入れてくれてるぞ!!しまーすだって♡)


「会員が増えたので(傍観倶楽部~ヒロセ アンド チーボー)って名前にしようかな?なんとなくゴロが良いような気がしてふっと頭に浮かびました。」


「ははは、なんか歌うたっている人達でそんな方いたような・・・・。」


「勘違いですよ。オリジナルです。安心してください。チーボー。」


「分かりました。よろしくお願い致します!ヒロセ!!」


(あー、なんか女性からの呼び捨てが心地よい・・・。)


「まあ、今後、傍観倶楽部として活動していくわけですが、お互いに男女の気持ちを教えあってレベルを上げていきましょう!」


「ぜひぜひ!でも私なんかで役に立つか分かりませんが。私に出来る事は!でも、ヒロセも教えろよ!」


(おーー!最後が命令形。悪くない・・・。寧ろ、心地良い・・・。もっと呼び捨てに!!)


という事で二人の新しい倶楽部はスタートしたのだった。




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