第14話 CASE5 ホテル喫茶室お見合いトークPART2

一回目のカップルはまんまとダメな例だった。

最初のドリンクオーダーだけだったな。すいすいと言えたのは。

残念無念。山田の完敗だ。


二人が去った後、俺は次の獲物が横に座るのを待つ事にした。

先程のイケメンの店員さんが二杯目のコーヒーをテーブルに置いてくれる。

それと同時に男性が一人、山田がいたそのテーブル席に座る。

ふふん。来たな。次のカモが。

(なんだか分からないが、どんどんと上から目線になっている俺。)


その男は30代半ばくらいの少しぽっちゃりした黒縁メガネの人物。

5分ほど遅れて同じく30代前半位の背の小さな女性が現れる。


ここにきて!!!なんと!

恐れていた?いや、期待していた事が「ま・さ・か」で起こった!

瞬間、鼻の穴が広がりながら直立している俺。

もちろん俺の手は、子供の時に先生から言われていた「膝の上」だ。


「あの西田さんでしょうか?」

その女性が私に聞いてきた。

慌てて俺は、

「いや、違います。シングルです。あ、間違えた。一人です・・・。あ!!違います!!!広瀬です・・・。」

(やばい!訳の分からない返事をしてしまった!しかも自己紹介まで!!)


「あ、すいません!」

と言って、彼女も恥ずかしそうな素振りで後ろを振り返り、横の席の男性に改めて尋ねていた。


「あ、私が、西田です。初めまして・・・。」

彼女も恥ずかしそうに西田の前の席に座る。


「すいません!初めまして。矢田と言います。遅くなってすいません。しかも、間違えちゃって。」


(うん、でもこういうハプニングが良い展開になる事ってあるからな。と、勝手に推測している俺。しかし、先程目を見つめられて間違えられた事に嬉しくなっている俺がいる。なんとなく得した気分だ・・・。なんだったら西田ですと言えばよかった。)


「いえいえ、とりあえず何か飲み物を先に頼みましょうか?」

(西田もスムーズだな。やはりドリンクは最初にすぐ頼む方が慣れた感じがする。)


「じゃ、私は・・・メロンソーダで。」


(おいーーーー!またもメロンソーダ!女子はやっぱりメロンでしょ!)


「あ、ハイ、じゃ私は・・・何にしようか・・な・・。」

西田が指でメニュー表をいろいろと指さしながら考えている。


(これ絶対に西田がウインナーコーヒーのパターンになるやつだ!!こい、こい、こい、こい!ウインナー!!!ウインナーーーーー!)

心で絶叫してしまった。しかも矢田さん同様、西田を凝視してしまっている。


「私も・・・メロンソーダでお願いしようかな?」


(まさかのダブルメロンソーダ!・・そうか、こ・・これは・・・ドリンクを共通項にする事で、好みが同じように思わせる思考錯覚作戦か。「恋のメタモルフォーゼ!!!」・・・これはメモだな。)


「すいません、改めまして、先ほどは間違えっちゃってすいません。なんだか私・・・恥ずかしい。」

(俺と西田を間違えた事で恥ずかしがっているその様子が可愛いぞ!俺はむしろ嬉しかったぞ!間違えて大正解だ!)


「いえいえ、この場所は沢山の人達がお見合いやってますからね。よくありますよ。」

(うん、この西田、やるな・・・。スマートなフォローだ・・・。)


そして二人のメロンソーダ到着。

お互いがとりあえず乾いた喉を潤すためにストローで一口ずつ飲む。

炭酸が喉を通った後の「ぷはーーー!」みたいな顔を同時にしているのが少しだけうけるぞ。面白い・・・そこまで同じ動きとは、この二人なかなかいいかもしれない。

「恋のシンクロナイズドスイミングだーーー!」


「やっぱり、メロンソーダ美味しいです。私好きなんですよね!。」


「あ、私も好きです。懐かしの味ですよね。」


(意気投合・・・。西田はやはり話を合わせるのが上手いな。・・・そうか、そういう事か!とりあえず YES!と、言ってれば好印象かもしれないな!!)


この時の俺のバックミュージックは、間違いなく早見優の「夏色のナンシー」だった。

(恋かなー、イエースー!)♪


____


(ん?先ほどの一人で来ている女性がまたもやメモを取り始めている。一体何者だ?)

私は彼女に対し、不信感を抱きながら西田の話を中途半端に聞いていた為に話が頭に入らない。

(あの子、何やっているんだ。気になる。そのメモは何だ?見たい。見たい。)


(ん?今あの子、俺の事ちらっと見たよね?絶対に見たよね??)


____とりあえず西田に集中しなければ。


「矢田さんは、こういうお見合いみたいのは何度か来ているんですか?」


と、西田が素直に聞いている。素晴らしい。俺も聞きたかった。


「え?あ、はい。私は・・・二度目なんです。でも、なんだか難しいですよね。こういうので会うのって。でも、今日は少しだけホッとしました。西田さんがとても優しそうな方で良かったです。」


「本当にですか?そ、それは嬉しいです!」


(あれれ?さっきまでのクールな西田が消えて、以前の俺の様に緊張感が丸出しになってるぞ!さっきまでの姿はFAKEだったのか??西田!)


「はい、今日来なかったら、西田さんに会えていなかったと思ったら本当に来て正解でした!」


「そ、そ、それは嬉しいです!!」


(声が上擦り過ぎているぞ!顔に出てるぞ!鼻の穴広がってるぞ!!西田!!という俺も横の席で鼻の穴広げている始末。)


「今日、実は父が体調悪くてどうしようか迷ったんですけど・・・来てよかったです。」


(なんだかこのパターンどこかで聞いたような・・・。)


「え?そんな日に大丈夫でしたか??」


(この返しもどこかで・・・)


「だから今日は早めに帰らないといけないんですけど、次、是非二人でもう一度会ってもらえたら嬉しいです・・・。私、ちょっと図々しいですかね?」


(へ、へ、へローンさんではないですか!このパターン!騙されるな!西田!)

と、心で思いながら俺は西田の方を向いて顔を横にビュンビュンと振る。

でも、気付くわけがない。何故なら西田はその手中にどっぷりとハマっているからだ。見てわかる。この西田の垂れた目を見れば・・・。


「わ、私でよければー↑」


西田の声が最後は上擦って変な返事になっている。

・・・。終わりだよ。西田。俺からのアドバイスは・・・。

貯金、少しは取っておけよ・・・。それだけだ、俺が言えるのは。使い切るのだけはおやめなさい・・・。


という事で二人は連絡先交換をしてカフェを出た。


偽ヘロンさんが色んな所にいるんだな・・・。怖い怖い。

西田・THE/ファイナルストーリーみたいな展開だったな。


____


??やはりあそこの女の子こっちをチラリズムしてないか?

もしや!!俺に惚れたのか?

そんなに俺の横顔が好きなのか???

カモーン!いつでもカモーン!

広瀬壮介!いつでもカモーーーーン!

と、俺は照準をその子にあてていた・・・。









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