第13話 CASE4 ホテル喫茶室お見合いトークPART1
今日からは実践の現場を押さえる事にしよう。
そうだ。お見合いデートと言ったらやはりホテルの1階のキャフェだ!
という事で、お見合いデートが良く行われているというホテルの「キャフェ」に俺は乗り込む事にした。
お見合いデートが多いと雑誌でも有名な新宿のホテルに到着。
入口を通り抜け、フロアーをまっすぐ歩いていくと、フロント手前にその有名な「キャフェ」がある。
「ここだな。」
俺は鼻息荒くその場所を覗き込む。
かなり広いそのエリアには、沢山のテーブルが置かれているが、噂通りお見合いで出会った二人かな?という雰囲気の人達が沢山いる。
(すごいぞ、沢山カップルがいるではないか!皆奮闘しているんだな。見ているだけでドキドキしてしまう。)
そう思いながら空いているテーブルを見付けるのと同時に、店員さんがその席に案内してくれた。
(これって、俺がここに座っていると誰かが間違えて、〇〇さんですか?とか言われて前に座られたりしないのかな?)と、不安と期待が入り乱れる俺。
「ご注文は何になさいますか?」
きちっとした制服に身を包んだカッコいい店員さんが聞いてくる。
「あ、ウインナーコーヒーありますか?」
(なぜか、いまだにヘロンさんを引きずっている俺がいる。)
「申し訳ございません。当店にはおいて無いんです。」
「あ、そうですか、そしたら普通のホットコーヒーでお願いします。」
(残念だ、想い出のウインナーコーヒーが無いなんて・・。)
店員さんが持ってきたコーヒーを少しだけ口に含むと、早速俺の傍観タイムが始まる。隣のテーブル席に丁度良い感じの二人がいるぞ、と心が弾んだ。
ロックオン壮介!
「あ、こんにちは、初めまして。山田と言います。」
「こんにちは、私は疋田と言います。どうぞよろしくお願いします。」
(おー、まずは挨拶からスタートだな。緊張感が俺の席まで伝わってくるぞ!山田君頑張れよー!)と、どちらかというとかなり上から目線になっている俺。
「とりあえず飲み物を先に注文しましょうか?」
と、山田が疋田さんに言うと彼女も軽く頷いて返事をする。
先程のカッコいい店員さんがテーブルに来て注文を取り始めた。
「ご注文は何になさいますか?」
すると山田がまさかの!!!!!!
「ウインナーコーヒーありますか?」
(まさかの!山田!!!お前までもウインナーの虜になっているのか!)と、一瞬声が出そうになった・・・が、間一髪で引っ込めた俺。
「申し訳ございません。当店には置いて無いんです。」
さっきとまるっきり同じ展開に!そして少しだけその店員の顔に(クスッ)という表情が漏れ出たのを俺は見逃さなかった。
(仕方ないよ、店員さん。うんうん。まさかの二連チャンでウインナー来たら、そりゃ、クスッともなるよーー)と、ウインナー先輩の俺も心で笑う。
「では、普通のコーヒーで。」
(そこまで同じかーい!)
「疋田さんは何になさいますか?」
(お?山田、お前なかなかやるなー。スムーズに聞いているじゃないか!)
「私は・・・メロンソーダで。」
(まさかのここにきて、俺の憧れのメロンソーダ!ヘロンさんに飲んでもらいたかったやつだー!!)
「かしこまりました。」
___その後、飲み物がテーブルに置かれるまで二人共無言になる。
(大丈夫か?山田。リードするんだ!やまだーーーー!)
そして店員さんがスマートに去っていき、いよいよお見合いスタート。
「疋田さん・・・趣味とかは何ですか?お休みの日とかは何を?」
(やはりこの質問は定番なのかもしれない、ある意味話を続けられるからな。)
「私は普段、ワンちゃんを飼っているので散歩とかくらいですかね?」
(可愛い、可愛いではないですか!ワンちゃんとは。)
「ワンちゃん飼ってるんですね。へー、私は犬は苦手で猫派なんです。」
(おー!まさかの話を合わせないでいきなりのバックドロップ!)
「そうなんですね、私は猫ちゃんはすぐにどっかに行っちゃうので、どちらかというと苦手なんです。ワンちゃんは傍にくっついてくれるので。」
(もう、ちゃんとくっつくのが好きなんです、とアピールしてるじゃないですかー!)
「なるほど・・・。私はそれが苦手で。適当に離れてくれてる方が良いんですよね。」
(もうね、こんな俺でもこの話を合わせられない男はパスだな。)
「へー・・・。そうなんですね・・・。」
(ほらほら、話が出なくなっちゃったじゃん!)
「はい・・・。」
(おい!話を切り替えろよ!逆転のワードを!)
「・・・・。」
(あー、疋田さんストローで飲み終わってるのにずっと吸っている状態!)
「・・・。あ、そういえば」
(お!やっとネクストクエスチョンだね!頑張れ山田!)
「なんで、疋田さんは私と会ってくれようと思ってくれたんですか?」
(いいね、それは気になる。)
「あ・・・。特になくて、今日は暇だったので・・・。」
(オーマイーゴーーーーッド!)
「ははは・・・。私も同じく時間が空いていたので。」
(お前ー!対抗するなー!絶対に嘘だ!!)
という事で何も得る事無く二人のお見合いタイムは終わったが、言ってはダメな事をかなり目の当たりに出来たので、ダメな例として頭にインプットしよう。
そして、相手にどうやって合わせていくか、これがポイントだな。
(・・・?あれ、あっちの席に、そういえばずっと一人でお茶をしている女の人がいるぞ?)
その女性は20代半ば位の少し幼さの残る顔の持ち主だった。なんだろう、メモを取りながら若干きょろきょろしているが・・・。
少し気にはなったが、次のターゲットが来るのを待つ事にした。
何故なら、この席は意外と観察するのに最適な場所だったからだ。
「すいません、コーヒーお代わりで。」
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