第11話 CASE2 洋服屋さんトーク

やはり会話と言えば洋服屋さんの巧みなトークだ。

そうだ、服を選ぶついでに会話を盗もう。

なんで俺は今まで思いつかなっかたのか・・・。

無料で得られるプロフェッショナルの会話テク。

今まで気付かなかった自分に腹が立つ。

という事で、少しお洒落な原宿の洋服屋さんに出かける事にした。


_____


「いらっしゃいませー」

(やばい、すでに突っ込みどころが。なぜ、最後の「ませー↑」と、上がるんだ?)

この挨拶のせいで、少しだけ照れながら店員さんに笑顔で頭を下げてしまった。


「今日は何か、お探しのものとかありますか?」


(いや、洋服じゃなく、どちらかというと恋を探しています・・・とは言えない。)


「あ、とりあえず何か良いものあれば?と思いまして。」


(やばい、傍観するはずが接客に答えている。さすがプロ。言葉を勝手に引き出されている。これだ、俺が欲しいのはこの引き出せる話術!)


「よろしければどうぞ広げてご覧になってくださいね!」


(いやいや、貴方、洋服を広げていいですか?と確認しないと広げちゃダメなお店なんかあるんですか?・・・始まってしまった!既に悪い癖で突っ込んでいる。)


「あ、はい、ありがとうございます。」


「それ良い感じですよね!とってもオシャレっぽいんですよ!特に袖のあたりとか。」


(オシャレっぽい?とは、オシャレなのか、それとも違うのかはっきりしてくれ。正確な答えは・・・その服は普通とオシャレのちょうど真ん中です。になるのか?)


「あ!そのシャツ、良いですよね!僕も持っているんですけど、とても着心地が良いんですよ。」


(いやいや、これ買ったら貴方とペアルック?有り得ない。しかも、着心地良いんですって接客はおかしくないか?着心地悪い服探しに来てる奴なんかいないだろ。)


「へー、素敵ですね。」

(やばい、相手に合わせて適当な答えをしてしまった。)


「お客様が今見ている服と、このパンツとか合わせると良い感じですよ!」


(おいおい、抱き合わせで買わせるのか。これが原宿。恐ろしい。近所のGパン屋のおじさんなら、俺がお店入っても買うまでほぼ無視だぞ!)


「なるほど、この着こなしカッコいいですね。」

(やばい上下を持たされて鏡の前で合わせて見ている俺がいる・・・。)


「でもー、これなんかもそのパンツには合いますよ。」

と、さらに上着を持ってくる店員さん。


(おー!一枚と言わず、トリプルで売ろうという魂胆か!!)


「うん、うん、良い感じですね。」


(服を合わせている俺と共に鏡に一緒に映り込んでの頷き・・・何が、うんうんなんですか?必殺のフレームイン!)


「今持たれているそちらの商品は結構売れていまして、残りが僅かなんですよ。買うなら早い方が良いですよ!」


(それだけ同じ服着た奴が歩いているのか?まるでチームの一員にしようというのか?俺から言わせれば、まさしく同じ服着た「軍団」だ・・・。)


「なるほど、人気あるんですね。」

(冷静に答えるのが難しくなってきた。)


「只今、二枚買うと10%オフになるんですよ。」


(もはやそれがお得なのかそうでないのかも分からないサービス!)


「あ、もしあれだったら、試着も出来ますからね!」


(あれとは何ですか?そして試着出来ない店なんかあるんですか???と聞きたい!!)


「あ、ありがとうございます。でも、今日は大丈夫です。見に来ただけなので。」


「いらっしゃいませー↑。こんにちは、どうぞ気になる商品がありましたら広げてご覧くださいね!」


(あ!買わないと言った途端、あっちのお客様の所に行っちゃった・・・そしてセリフがリピートしてる。まあ、気持ちの切り替えが大切なんだと勉強になりました。)



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