第9話 生まれ変わる
あれ以来、人間不信になった俺。
憧れて出てきた東京。
まさか東京でも辛い思いをするとは。
結局は茨城にいても東京でも変わらない俺の人生。
変わったと言えば、その受けたダメージのスケールの大きさの違いだけだ。
やはり、トーキョー。レベルが違う。
ただ殴られて、無視される事の方が楽だったかもしれない。
あれは亀のように自分の頭を守って、ただただ時間が過ぎるのを待てばよかっただけだ。そう、まだ耐えられた。
でも・・・ヘロンさんは、あんなに優しい顔で、涙なんか見せたりして、なのに、なのに・・・ひどい。お金までも・・・。
女の子の涙には騙されるな・・・と、俺の教本に書いてはあったが、正直好きな子の涙を疑うわけがない。だって、好きなんだから無理ですやん。
東京に出てきて恋の初体験ではなく、騙される初体験になるとは。
あれから俺の心は打ちひしがれ、毎日毎日、幽体離脱をしているかの如く、魂はどこかへ行ってしまった。ああ、俺はやっぱりダメ人間じゃないか。
結局、誰も俺の事を相手になんかしていないんだ。
来る日も来る日も、ネガティブ壮介が頭の中で暴れまわる。
・・・そう思った俺だったが、・・・ネガティブになると思いきや、逆転の発想で生まれ変わる事を決意。そうだ、生まれ変わる為には東京に出てきてからの自分の「ライーフ・スターイル!」を変えなければいけない。
そう思って一念発起、広瀬壮介、会社を退社する事に致しました。
元々、会社に行っても誰も俺とは関わろうとしない。それならば俺から関係を絶とうじゃありませんか。
という事で早速会社を辞め、少なかったがちょっとだけ出た退職金を元手に新たなる野望へと向かう。
そして当分の間は失業保険で暮らす事にした。払ったお金はきちんとお国から回収しましょう。そう決意した俺。
失業保険を貰いながらも、お国にバレたらまずい日雇いの土方の仕事をひっそりとやる事に。日雇いも「取っ払い」という支払方法なので、帰りにはそのままポケットにお金が入る。その日、働いたお金がその日にもらえる。最高だ。
お金が欲しい時に土方をやればいい。
ただ、メンドクサイのは、定期的なハローワーク通いだ。仕事を探すふりをしなくてはいけない。まあ、それも含め、自分のこれからを楽しむ事にした。
一つだけ気になるのは、その(ハローワーク)という呼び名を、どうしても「ヘローンワーク」と読んでしまい、まだまだヘロンさんの事を引きずっているという自分に毎回気付かされてしまうという事だ。
忘れなくては、過去の自分を・・・おさらばだ。そして、ニュー壮介を。
俺は一人孤独になるのではなく、自分の得意とする「人間観察」をして、より自分のマインドを高めようと考えた。
そして自分一人だけの倶楽部を立ち上げる。
__その名も「傍観倶楽部」__
もちろん入会希望があれば審査の上、入れるつもりだが、何しろ秘密裏に行う予定の倶楽部だけに人が集まるのは考えづらい。
考えてみると、いきなり女性と向き合い恋愛するのは俺にはレベルが高過ぎたんだ。
まずはリアルな人間観察の勉強により、仮想的な経験値を得てグレードを上げていく。「恋」の入門コースから師範にまで昇りつめる為の決意表明。
そして俺は自分がどんな場面で、どのように行動し、どのような会話をすれば相手に認めてもらえるか、それら全てを網羅する為に、色んな場面での営業トークからカップルトークを自分の目で観察する事にした。
あくまでも「傍観」がテーマだが、多分性格上、心では会話に入るだろう。
自分の中の突っ込み精神が黙っていないと思うし、もはやそれを抑える事も出来ないだろう。既に自己制御不能状態。考えるだけで震えがくる・・・。
でもそれが、広瀬壮介なのだから・・・。仕方ない。
心であなたの代わりに返事をしましょう・・・。
やり直し壮介!行きます!
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