第43話
バルネラの見た目は……なんといえばいいんだろうか。
鶏とトカゲを足して二で割ってからめちゃくちゃデカくしたような、特徴的な感じだ。
身体は赤く、至る所が白と黄色に白光している。
サイズはかなりでかい。
ボルケーノスコーピオンやブレイズサウルスが比較にならないほどの巨体だ。
ただ図体がデカい分、動きはそこまで早くはなさそうだ。
どれ、まずは一当て。
「――シッ」
俺はバルネラが咆哮を上げている間に即座に身体強化を無駄なく使い、滑らかにかつ高速でバルネラの右前足目掛けて駆けていった。
基本的に接近戦が主の俺は、強力な遠距離攻撃を持っているこいつから距離を取るべきではない。
「おおおおおっっ!!」
手に持って振りかぶっていたアズロナを叩きつける。
反動と身体の勢い、そして腕力。
全てを一つの流れの中に組み込みながら放つ一撃は、前足にしっかりと命中。
巨大な質量の一撃は斬撃の痕を残すが、前足の皮膚をわずかに裂くばかりだった。
「GYAAAAAA!?」
「流石に一撃で持っていけるほど、甘くはないかっ!」
戦いにおいて大切なのは、一切手を緩めないことだ。
相手の弱点を容赦なくつき続け、相手の嫌がることをし続ける。
決して相手の土俵には立たず、こちらの得意を一方的に押しつける。
それを繰り返していくうち、戦いの流れとでも呼ぶべきものをこちらに引き寄せることができるようになるのだ。
右前足だけを、執拗に狙い続ける。
切り下げ、切り上げ、袈裟懸け、逆袈裟。
身体強化を使っていれば、たとえ大剣であろうと短剣と変わらぬ勢いで振り続けることが可能だ。
アズロナの一撃一撃が、バルネラの足に傷を創っていく。
バルネラの方は噛みつきや前足の一撃、尾による打ち払いなどで対応しようとしてくるが、俺はその攻撃をしっかりと見切り、かわしていく。
「GAAAAAAA!!」
もちろんこちらの攻撃を黙って受け続けるはずがない。
俺が連撃を叩き込んだところで、バルネラはその左前足を向けてきた。
先ほどと比べても明らかに速い、ようやく本気を出したのか。
攻撃を途中で制止して、後ろに下がる。
数瞬前まで俺の居た空間を、鋭い爪が通り過ぎていった。
俺が距離を取ったことを好機と捉えたバルネラが、そのまま身体を回転させながら後ろに下がる。
そして噴き出すマグマの中へと分け入り、顔が見えなくなるほど深く潜ってからその姿を消してしまう。
バルネラはマグマの中でも問題なく活動できる。
というかこの魔物は、マグマの中に入っていると体力が回復する特殊な生態を持っているのだ。
回復ができるのはこちらだけではない、ということだ。
こうして小康を保っている最中であれば、扉を抜けて深層に戻ることも可能だろう。
もちろんそんなことをするつもりはないが、どうしようもなくなったら出直すことも視野に入れている。
何も一度で倒さなければいけないわけではない。
「大丈夫ですか?」
ミーシャの回復魔法が、身体の至る所にできていた傷を癒やしてくれる。
「以後回復は明らかな怪我をするまでは使わずにおいてくれ、なるべくミーシャの魔力を温存しておきたい」
「わかりました」
ジジジ……と音がしたかと思うと、屹立していた五本の光柱のうちの一本の光が、明らかに短くなっていく。
これは一体、何を意味しているのだろうのか?
制限時間か、あるいは……。
「GYAAAA!!」
柱の長さが半分ほどになったところで、バルネラが勢いよくマグマから飛び出してくる。
全身が熱されているバルネラと接近戦をすれば、近くにいるだけでダメージを食らうようになる。
バルネラを倒そうとするなら、こちらのダメージ覚悟で相手にそれ以上の痛打を与え続けなければいけないのだ。
「つまりは……ここからが第二ラウンドということだ」
幸いなことに、こちらには優秀な防具がある。
我慢しながらの戦いも、問題なくこなせるはずだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます