第38話


 次の日、俺達は必要とされているAランク魔物の素材をしっかりと集めきることにした。


 全身に高熱の炎を纏い、接近戦を封じてくるブレイズサウルスは、身体強化の出力を上げて無理矢理接近戦を行う形で仕留め。


 背中に魔力の籠もった特殊な玄武岩を背負い、小山のような大きさのあるバサルトトータスは、その高い防御力を身体強化で強引に乗り越えて突破させてもらった。


 ブレイズサウルスの耐火皮膜とバサルトタートルの爪と最も耐熱性に優れているという首回りの皮、そしてロックタートルの盾をより強化するために必要なバサルトタートルの黒玄武岩をゲットした。


 首回りの皮は明らかに量が足りなそうだったので、時間をかけて二匹倒した。流石に二回目の戦闘はしんどかったが、これも問題なくクリア。

 これに今まで集めてきた素材を集めれば、必要な素材は全て揃った。


「任せてください、絶対最高の防具を作ってみせるっす!」


 ダリアが瞳を燃やしながらそう言っていたので、出来に関しては心配する必要もなさそうだ。


 というわけで空いた時間を使い、俺はミーシャを鍛えていくことにした。

 今でも自分の身を守ることならできるが、彼女が一番ほしいのはあくまで戦うための力。

 強力な魔物が出現する深層は、その練習にはうってつけだろう。

 今まで基礎的なことに終始していた分、守護者と戦うまではみっちり実戦と行こう。


「あのー……本当に深層から始めるんですか?」


「ああ、ぬるい環境で慣れても意味がないからな」


 俺はミーシャと一緒にこのグラベル火山に潜っているが、戦闘をしているのは全て俺だ。

 ミーシャはいざという時の回復役兼喉が渇いた時の水分補給役で、彼女自身は攻撃を食らわないよう結界を張って自分の身を守っているだけで、攻撃には参加していない。


 まずは今の彼女にできることを知りたいので、火山手前にある広場で軽く今の実力を見せてもらう。


「とりあえず身体強化を使ってみてくれ」


「はいっ、わかりました」


 最初は一緒に歩いているだけで息が切れることも多かったミーシャだが、当初と比べれば明らかに体力はついてきている。

 身体強化の強化の度合いは自分の身体能力に比例するため、今の彼女であればある程度の効果が見込めるはずだ。


 身体強化を使わせたミーシャに、適当に動いてもらう。

 ……うん、しっかり毎日ランニングをさせていた甲斐があったな。


 深層の魔物と戦うのには足りない気がするが、短期間でこれだけやれれば上等だろう。


「身体強化を使いながらも結界展開もできるか?」


「はい、やるとかなり魔力を使ってしまうのであまり多様はできませんし、結界の強度もかなり落ちてはしまうのですが……」


 身体強化をしながら展開してもらった結界に、思い切り拳を叩きつける。


「ふむ……深層の魔物を相手にしても数秒は耐えられるだろう」


「ギルさんのパンチに一瞬で叩き壊されたんですけど!?」


「俺の拳の方が強いからな」


 結界で数秒耐えられるのなら、本来であれば無理筋な動きをさせることもできる。

 相手の攻撃をある程度無視してこちらが攻撃できるというアドバンテージは、あまりにも大きい。


「なんだか腑に落ちません……」


「それはまだお前が発展途上だからな。せっかくだから守護者との戦いまでに、深層の魔物は問題なく倒せるレベルまで練度を上げていこう。実戦に勝る練習はない」


 こうして俺とミーシャの深層ブートキャンプの幕が開くのだった――。

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