ビッグバトル! 4


   **


 虚無の世界で戦いは続く。






 バーチャルゲーム「バトリング」内のイベント、ビッグバトル。


 知多星ゴヨウはメロリンと共にビッグバトルに参加していた。


 アーマー騎兵を駆るゴヨウだが、敵軍ユニットから激しい銃撃を受けた。


 アーマー騎兵「デッドショルダーカスタム」は爆発、炎上した。


「ゴヨウー!」


 対アーマー騎兵ライフルを構えたビキニ姿のメロリンは叫ぶ。


 次の瞬間、炎の中から何かが飛び出した。


 それはメカだ。


 クロ○ティ高校に登場するメ○沢にそっくりなロボットだ。


 そのロボットは戦場である市街地に降り立つや否や、バイク形態にトランスフォームした。


「さあ乗れメロリン!」


 バイク形態のロボット「メカゴヨウ」はメロリンを促した。


「は?」


 メロリンは目を点にしていた。あまりの展開に思考回路がショートしていた。


「ゾンビ○ップっていう古い映画があってね…… 主人公は最後に美少女の乗る自転車のサドルになりたいって言っていた」


「はあ……」


 メロリンはメカゴヨウ・バイク形態にまたがった。


 そして自動操縦で市街地を駆け抜けながら、対アーマー騎兵ライフルで敵アーマー騎兵を狙撃・撃破する。


 戦場を駆けるビキニ姿のメロリンは、世界中のプレイヤー数万人から注目されていた。


「……あなた、ゴヨウのコピーね? 本体は何処に行ったのよ?」


 メロリンーー瞑想の神「混沌」と、ネットの海から誕生した「A.I女王」が融合した存在ーーはメカゴヨウに質問するが、メカゴヨウは答えない。



   **



「……水着があるわね、暑いから着替えましょうよ」


 ギテルベウスはそう言った。


 彼女らがまぎれこんだ「昭和の日本」という空間内の駄菓子屋には、なぜか水着があった。


 暑い陽射し、蝉の声、駄菓子屋の店先のよく冷えたアイスのケース。


 平和な雰囲気漂う虚無空間だが、ここには人の気配はなかった。


 チョウガイとソンショウ、そして謎の子ども達はすでに水着に着替え、駄菓子屋の店先に待機している。


 大きなビーチパラソルを構えたチョウガイとソンショウは、恋人が出てくるのを待つ。


 謎の子ども達も水着姿ではしゃいでいた。


 平和で幸福な光景だ。


「おまたせ〜」


 水着姿のギテルベウスが駄菓子屋の奥から出てきた。


 細身で華奢な体つきのギテルベウス、彼女は真っ赤なビキニで着飾っていた。


「ど、どう?」


「お、おう、もう少し胸があればなー」


「何よ、このバカ!」


 ギテルベウスの右フックが海パン姿のソンショウに炸裂した。


 仲の悪そうな二人だが、だからこそソンショウとギテルベウスは強い男女の絆で繋がっているのだ。


「チョウガイさん……」


 フランケン・ナースのゾフィーも水着で現れた。


 セクシーなV字ワンピース水着だ。


 土気色の肌の全身に縫合痕の刻まれたゾフィーだが、豊かな胸にソンショウもギテルベウスも目を奪われた。


「ど、どうですか?」


 ゾフィーの頭部の左右一対の電極が、ピコピコと激しく点滅している。


「……最高です!」


 海パン姿のチョウガイは顔を真っ赤にして叫んだ。


 百八の魔星の守護神にして、半神半人のチョウガイ。


 決してギャグなどやらなかった男は、ゾフィーと出会って変わったのだ。


「も、もうチョウガイさんったら!」


 ゾフィーは慌てて顔を両手で覆った。チョウガイの思いが下半身に現れていたからだ。恥ずかしくもあるが、ゾフィーは満足だった。


「そ、それじゃ行きましょうか」


 ゾフィーはチョウガイの左腕に抱きついた。


「う、うむ」


 大きなビーチパラソルを右手で握ったチョウガイは、全身を震わせていた。


「我が生涯に一片の悔い無し……!」


「ああ、幸せ……」


 チョウガイもゾフィーも幸福感のあまり、人生を終えようとしていた。


 チョウガイは静かに両目を閉じ、ゾフィーの頭部の電極が光を失う。


「おい、死んでどうすんだよ!」


「あんた達はバカップルすぎるわよ!」


 ソンショウとギテルベウスがツッコミを入れた。


 二人でいる時が最高の幸せであるチョウガイとゾフィーは、満足するとすぐに人生を終えようとしてしまう。


 たまにしか会えぬ二人だが、だからこそソンショウとゾフィーは不滅の愛の体現者なのだ。


「ねー、どこいくー」


「楽しいとこー」


「プールう」


 謎の子ども達は楽しげにはしゃいでいる。


 彼らは「未来」の概念が具現化した存在だ。


 チョウガイとゾフィー、ソンショウとギテルベウスには「未来」がある事を示唆しているのだ。

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