ビッグバトル! 2



 混沌とAIの混じり合ったネットの海。


 そこから新たに生じるのは何か。


 人類の救済か、緩やかな破滅か。


 何にせよ、ネットは新たな命の海なのだ。


 その海を支配するのはメロリンだ。


 彼女は、宇宙開闢以来存在し続けた神である混沌と、AI世界で誕生した女王が融合した、新たな超越者だ。






 バーチャルゲーム「バトリング」の世界で戦いは始まった。


 ゲーム内イベントである「ビッグバトル」に今この瞬間、世界中で数万人のプレイヤーが参加している。


 そして、ビッグバトルにはメロリンも参加しているのだ。


 バーチャルゲームではあるが、この戦いが世界の行方に多少は影響を及ぼしている……


「メロリン頼むぞ!」


 ゴヨウはコックピット内で叫んだ。


 アーマー騎兵の「猟犬」デッドショルダーカスタムは、赤く塗られた左肩にメロリンを乗せ、戦場である高速道路をローラーダッシュで疾走する。


「任せて!」


 メロリンはデッドショルダーカスタムの左肩に腰かけ、対アーマー騎兵ライフルで敵を狙い撃つ。


 メロリンの狙撃を受けて爆発、炎上する数体の敵アーマー騎兵。


 火の手が上がる荒れ果てた高速道路上での戦闘も終了した――


「第1ラウンド終了か……」


 ゴヨウはアーマー騎兵のコックピットを開き、非人間的な印象のヘルメットも外した。


 アーマー騎兵の左肩に腰かけていたメロリンの笑顔(とマントの下の肌にピッタリしたボディスーツ)にゴヨウは癒された。


”mission complete“


 空中に浮かび上がる文字を眺め、ゴヨウは一息ついた。


 ゲーム内とはいえ、リアルな感覚に緊張を覚えた。


 視線の先、数十メートル向こうでは肝油を初めとしたアバキハラのプレイヤーが集まっていた。


 その中心には、相変わらずのマイクロビキニ風の戦闘服に身を包んだ「混沌」がいた。


「ん? あれ?」


 ゴヨウはメロリンと混沌を交互に眺めた。


「ああ、あれは私自身であって、私のコピーよ」


 メロリンはさわやかに言った。どうやらメロリンは「混沌」という分身を生み出し、ゲームに参加させているようだ。


 肝油などはさりげなく混沌の背後に回って、Tバックの尻をガン見している。それはいつもと変わらぬプレイ状況だ。混沌はみんなのアイドル的プレイヤーなのだ。


「いつまで続くんだ?」


「最後の一部隊になるまで続くのよ」


 メロリンは暗い空を見上げた。


 バーチャルゲーム内の空も曇っていた。


 現実世界の不安を映し出すかのように。

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