狂気的な彼女3
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気が狂いそうな湿気。
熱病。毒虫。
闇からの銃弾……
緑に覆われていても、ここは地獄だ。
ゴヨウと混沌はジャングルの中にある傭兵基地にいた。
「行くぞゴヨウ!」
ビキニ姿の混沌は、高さ四メートルほどの人型ロボット「アーマー騎兵」に飛び乗った。
暑さ対策のために黒いビキニ姿の混沌。彼女の健康的なお色気を醸し出す肢体に浮かんだ汗が、男達を刺激し活気づける。
「出撃だ、気合入れろお前ら! くたばった奴にゃ分前はねえ!」
傭兵団の指揮官の号令一下、人型の戦闘ロボット「アーマー騎兵」が傭兵基地から次々と出撃した。
ジャングル戦に適応した「沼亀」というアーマー騎兵がほとんどだが、ゴヨウと混沌は「猟犬」に乗りこんでいた。
猟犬はコストパフォーマンスが高く、様々なオプションによって沼地戦にも適応できる。
「渡河作戦だ、ゴヨウ先行しろ!」
指揮官の嫌がらせにも等しい指揮に従い、ゴヨウの駆る緑色の猟犬は沼に侵入する。
アーマー騎兵の左右腰に取りつけたエアパージによって浮力を得た猟犬は、ゆっくりと沼に侵入し、進んでいく。
意外なのは混沌がゴヨウのバックアップについている事だ。混沌はピンク色の塗装を施した猟犬を駆り、ゴヨウの背後にピタリとついて周囲を索敵する。
この状態で敵から狙い撃ちされれば、高い確率で被弾し爆発するだろう。ゴヨウも混沌も命がけだ。
指揮官はコックピットで苦い顔をしているが、混沌のTバックの尻に悩殺されている毎日なので何も言えない。
やがてゴヨウと混沌の猟犬が沼を渡りきった。それに続いていくつもの沼亀が沼に侵入する。
その時だ、敵軍領地から飛来したミサイルが沼亀を吹き飛ばしたのは。
爆風によってジャングルの緑の木々が揺れ、木の葉が吹き飛ぶ。
場に生じた緊張の中で、敵軍のアーマー騎兵が次々と姿を現した。
傭兵側の沼亀はほとんどが渡河中であったから、突然の襲撃によって次々と被弾し、爆発した。
尚、指揮官は数発被弾したが爆発する事なく、対岸へと渡りきっていた。なかなかしぶとい。
「ゴヨウ!」
「ああ!」
混沌とゴヨウが駆る猟犬は、ローラーダッシュで小さな円を描きながら四方へマシンガンを連射する。
二人の息のあったコンビネーションに、奇襲してきた敵軍のアーマー騎兵が、次々と撃破されて爆発した。
だが、そこに新たに現れた青いアーマー騎兵を視認して、ゴヨウの緊張は高まった。
「あ、青いやつだー!」
傭兵の指揮官は再び沼にとびこみ、真っ先に逃げ出した。
ゴヨウの駆る猟犬は、その名のごとく、新たに現れた青いアーマー騎兵へと突撃した。
「ゴヨウ!」
混沌はコックピットで叫んだ。
「キリオー!」
青いアーマー騎兵のコックピットで、パーフェクトファイターのイプエロンも叫んだ。
「誰の事だよ……」
ため息をもらしつつ、ゴヨウの猟犬は右に左にと敵弾を避けつつ、マシンガンで応戦する。
(狂気のような奴の闘志、それに比べて俺の心は燃えはしない、俺があえて受けて立つのは…… その哀れな闘志を満たしてやるためかもしれない……)
ゴヨウは混沌のサポートを受けながら、イプエロンの駆る青いアーマー騎兵と交戦する……
**
「いやあ、面白かったのう、バーチャルゲームというのは!」
混沌は興奮冷めきらぬ様子で缶ジュースを飲んだ。
場所はアバキハラのゲーセンだ。
混沌はゴヨウと共に話題のバーチャルゲームを楽しんでいたのだ。
「それにしてもAI女王め、わらわの楽しい時間に割り込んできおって」
「え、何の事?」
「こっちの話じゃ」
ゲーセンの隅の自動販売機側で混沌とゴヨウは尚も話しこんだ。傍目には若い恋人同士のようだった。
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