狂気的な彼女1


   **


 百八の魔星の守護神、托塔天王チョウガイ。


 百八の魔星の一人、天間星入雲龍ソンショウ。


 二人は圧倒的な強さで混沌との戦いに勝利し続けているが、致命的な弱点がある。


 それは女に弱いという事だ。


「きゃあー、チョウガイ様!」


 フランケン・ナースのゾフィーは悲鳴を上げた。


 今日はチョウガイとのデートなので、胸元の開いた衣服だったが、まさかそれだけで彼が鼻血を吹くとは。


「あんたさあ、何処に連れてってくれんのよ」


「今日は楽しみだわ〜」


「ねー、会長の甲斐性が楽しみですね〜」


 と、ギテルベウス、さくら、こゆきの三人娘を前にソンショウは蒼白だ。


 三人に回らないお寿司をおごるのは男の甲斐性だが、すでにソンショウのキャパシティを越えている。


 そんな有り様だ。これは混沌の勝利と言えるかもしれぬ。


 この宇宙の秩序と混沌、光と闇、男と女、その闘争に混沌が勝利すれば宇宙は暗黒に呑みこまれる。


 いや、それは新たな宇宙の始まりかもしれないが――






 混沌の意思は人の形を為して、人間世界の地球(テラ)にやってきた。


 かつて混沌はゴヨウに驚愕した。


 ゴヨウならばあるいは?


 人類の未来に何かの答えを出せるのではないか?


 混沌にはそう思えるのだ。


「どれ、奴を待つとするか……」


 混沌の意思は女の子の姿となり、アバキハラという煩悩の地に降り立った。


 白いワンピース姿で改札口に立つ彼女を男達がジロジロ見ている。


 やがて、ゴヨウが改札口から出てきた。


 彼はお目当ての本を買いに来たのだ。


「お、おほん!」


 混沌は咳払いした。頰が紅潮し、胸の高鳴りを抑えられない。


 宇宙開闢から存在し続ける混沌は、今初めて恋を知った。


「さーて、あれを買わなくちゃ!」


 ゴヨウは混沌の側を駆け抜け、目指す本屋へ向かった。


 豪快にスルーされた混沌はぶちギレした。


「おるあああ!」


 混沌はゴヨウの足に背後から組みつき、豪快なドラゴンスクリューで転倒させた。


「な、なんだ、なんだ!?」


「貴様というやつはー!」


 ゴヨウと混沌。男と女。光と闇。


 二人の出会いはドラゴンスクリューから始まった。'

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