十一、不死殺し
パン!
一つ、破裂音が鳴り響く。不死身の世界において、もはや脅威ではなくなった音、銃声。これを聞いて、怯える人はもういない。それは死ななくなったからだ。痛みに鈍くなり、怪我を再生できるからだ。しかし、僕の銃弾は違う。
放った銃弾は、ある警官の胸に命中した。本来ならば、大して効果のないもの。だからこそ、不死人は油断する。
警官は、一瞬の内に
「……は?」
刑事が、その場に居合わせた誰もが唖然とする。現実味のない事象に信じられない思いなのだろう。仲間だった塵の山に目を奪われていて、誰も僕を見ていない。何が起きたのか、嚙み砕けていない様子であって、塵が風に吹かれても、動きを止めたまま……大きな隙、見逃すわけにはいかなかった。急いで柵をよじ登り、屋上の際に立つ。そうしてやっと、彼らは我に返った。
だが、手遅れだ。僕はリボルバーを向けながら、笑んで警官たちに宣言する。
「僕は人類を救う! 君たちもだ! 必ず、救ってみせる! だから、決して捕まるわけにはいかない。死ぬわけにはいかないのだよ!」
「何を、言って……っ! 待て!」
刑事は走って制止する。が意味を持つはずはなく、僕は倒れるようにして、迷わずビルから飛び降りた。
澄んだ青空が遠ざかっていく。燦々と降り注ぐ陽光に目を細めつつ、僕は空気を押し退ける。肌には圧がかかって、風切り音が耳をつんざき、白衣は激しくはためいて……次第に地面との距離が縮まり、そして、止まっているパトカーの上に落ちた。鳴り響くは、盛大に車体が壊れる音。子供の体格ではあるものの、人一人が着地したため相応の
もし前時代の人間ならば、即死していたに違いない。しかし、僕らは不老不死。ありふれた要因で死ぬことは今やなく、間も置かずむくりと起き上がれてしまうのだ。
落下してくるのを想定していたようで、警官たちの動きは素早く、僕をすぐさま取り押さえようと寄ってきた。
好都合だった。
その中から一人を無作為に選ぶと――死神入りの鉛玉を撃った。
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