六、人類の夢が辿る末路

 宇宙進出――それは人の更なる発展だ。貪欲どんよくに知識を吸収し、何度でも難問に挑戦できる存在が辿り着ける境地だ。理解しがたき現象ばかりの不思議な空間は、古来より人類を魅了してきた。そして、夢を見る。


 いつの日か、宇宙を旅することができれば、と――。


 その鍵を人類は得た。永久機関に等しいエネルギー効率の持ち主、アタナトス彗星から舞い落ちた砂である。いまだ健在な宇宙へのあこがれは、砂の力によって現実味を帯びたのだ。巨大な宇宙船の開発と、長期間の航行、生活環境を支える最優の力。完成した暁には僕も含めて、ほとんどの人が乗るはずだ。地球に残る者はほんの僅かだろう。

 宇宙に出るとはつまり、母なる地球を独立するということ。地に足が着かないふわふわとした状態に、自ら陥るということ。安定を捨て、かつてのように未知へと踏み込む。命に係わる挑戦だ。もっとも、不死人は命を落としはしないのだが……。

 だからこそ、大きな危険性が伴うのは、深く考えずとも分かる。


 もしも宇宙船が大破して、宇宙空間に放り出されたならば――のだと。いつかは間違いなく、そうなる。一年大丈夫でも、千年問題なくとも。人類は、そんなリスクに満ちた旅をするのである。

『そんなのごめんだ』と僕は思った。

 

 僕は幼い体のまま、彗星の砂を探る者。断言しよう。我々は悲惨な末路を辿る! 故に、人々の運命を変えたい。彼らを想うのであれば、当然の思考だろう? 研究者になって以来、揺らいで仕方がなかった心がある。薬を開発してきて、抜け切らなかった思想がある。



 僕たち生物はみんな――

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