五、薬品開発
彗星の砂一粒に対して、一リットルの純水を混ぜる。そこに煮沸した母乳を同量入れて、密閉し、しっかりと振る。そして、五時間、火にかける。
これが〝若返りの薬〟の作り方である。即効性があるものではなく、日に一度コップいっぱい飲む、ということを五日は繰り返さなければならない。すると、如何なる老人であっても、たちまち二十代前半まで若返るのだ。需要は今日にもなると、全くないのだが。ただ、今でも求める人がいるのは――稀に彗星の砂で不老不死に成れない人がいるからだ。もちろん、人以外の生命体にだっている。むしろ、そちらの方が比率としては多いと言っていいだろう。
どうして不老不死に成れないのか、理由は分からない。一見すると、なんの変哲もない人ばかり。細胞か、生活習慣か。いずれにせよ、僕が見てきた限りだと、不死者とは決定的な相違点が存在していた。
揃いも揃って、浮世離れしているのだ。人も、鯉も、牛も、鳥も、孤高を好み、周りとは違った食性だったり、群れに逆らったりする。人の場合だと、仏陀のように悟った人であることが多々ある。
そういう奇妙な存在たちにも効くのが、彗星の砂を使った薬であった。
若返りの他にも、身体機能の促進、視力回復、痛覚遮断、五感増幅の薬などが作られている。今もなお、新たな活用方法を探って、僕たち研究者は日々励む。
しかし、最近、宇宙進出が話に上がって、僕の以前から揺らいでいた心は定まりつつあった。
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