遅刻したアイツ。

クライングフリーマン

遅刻は常習犯、それはアイツ。

遅刻は常習犯、それはアイツ。


父親の葬儀に遅れたアイツ。

父親のお通夜に付き添わず、帰宅したアイツ。


母親の救急病院からの転院日。転院先のリハビリ型の病院に遅刻したアイツ。

母親のリハビリ型病院からの転院日。転院元リハビリ型病院に遅刻したアイツ。


母親の転院先の老健施設の契約に遅刻したアイツ。

母親の転居先のサ高住への引っ越しに遅刻したアイツ。


母親の2番目のサ高住への引っ越し先に遅刻しなかったアイツ。

だが、引っ越しの荷物の荷ほどきすらしなかったアイツ。


母親の3番目のサ高住に引っ越ししてから、半年以上経ってからやって来て、母親が覚えていなかった、アイツ。


サ高住で1回目の救急搬送になった時、来なかったアイツ。

サ高住で2回目の救急搬送になった時、来なかったアイツ。


サ高住で1回目の危篤状態になった時、遅刻したアイツ。

救急病院に入院した時、遅刻したアイツ。


救急病院から療養型病院に転院した時、母親が覚えていなかった、アイツ。

私に「世話をかけて済まなかった」と謝ったアイツ。

眠り姫になった母親の面会に来ないアイツ。


「くるま」が無ければ、移動出来ないアイツ。

五体満足でも、母親に「育て方を間違えた」と言わせてしまったアイツ。


いつか母が亡くなった時、私はまだ生きているだろうか?

私は、遅刻するアイツを、まだフォローしているのだろうか?


アイツとは、2つ年下の妹である。

私が、母親より先に「お迎え」が来たら、遅刻して、他の人に迷惑をかけるのだろうか?

私は、まだ生きている。

―完―



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

遅刻したアイツ。 クライングフリーマン @dansan01

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る