第14話

「近藤、ちょっといいか?」


 蓮達は試合が終わり、観客席に向かおうとする近藤達に声をかける。


「あぁ? 何の用だ、岩本?」

「いや、ちょっと宣戦布告をしようと思ってな」

「宣戦布告、だと?」


 蓮の言葉に、近藤たちは眉を潜める。


「今回の対抗戦で、お前達は間違いなく決勝戦まで勝ち進めるだろう?」

「当然だ、天川達が出ないとなれば、俺達の優勝は確定だ」

「いや、残念だが、優勝するのは、俺達だ」


 蓮がそう言うと、近藤たちは一瞬、呆けた顔をすると、次の瞬間、笑い声をあげる。


「何かおかしいことを言ったか?」

「おかしいも何も、お前達が優勝できるわけないだろ!」


 近藤がそう言うと、後ろにいたチームメイトも「そうだそうだ!」と声を揃える。


「大した力もないお前達じゃ、一回戦で敗退だろうな!」

「まぁ、そう思いたいなら、そう思ってな」

「へっ、負け犬の遠吠えだな!」


 その言葉を最後に、近藤たちは二人の横を通り過ぎて行った。


「言いたいことは言えたし、俺達も戻るか」

「だな」


 その後、二人も満足げな笑みを浮かべ、観客席へと戻っていくのだった。



「二人とも、出番が来るまで、そこに正座」


 ちなみに、何がしていたのかを説明した結果、二人が英司から雷を落とされたのは言うまでもない話である。


――――――――――――


 そして、一回戦最後の試合、つまり、蓮と蒼衣の出番がやってきた。


「う、ようやく来たか……」

「始まる前からボロボロだぜ……」


 両足を押さえ、訓練場の中央に立つ、蓮と蒼衣。


「おいおい、アレだけの大口を叩いておいてビビっているのか?」

「まぁ、所詮、口だけってことだろ?」


 対戦相手である同級生達は笑いながら、挑発するが


「あー、そういうの、もういいから」

「ゴート、早く始めてくれ~」


 それを無視し、二人はゴートに試合開始の合図を要求する。


「はぁ……両チーム、指定の位置に着いているな?」


 両チームから首肯が返ってきたのを確認すると、手を挙げる。


「それでは……試合開始!」


 ゴートが手を振り下ろすと同時に、開始の合図である銅鑼の音が響く。


(とりあえずは、様子見か?)

(そうだな、アイツらが真銘魔法を使うまでは拮抗するぐらいの力で行くぞ)


 迫りくる相手チームを眺めながら、二人は魔力による念話を用い作戦を共有する。


「くらえっ!」

「そんな攻撃、当たるかよ」


 雄叫びと共に振るわれる長剣を、蓮は難なく躱し、隙が出来た腹に剣の柄を打ち込む。


「ぐへっ!」

「チッ、なら、二人で行くぞ!」

「おう!」


 その言葉と同時に、蓮の両サイドから槍と槌が振るわれる。


 しかし……


「まぁ、それぐらいはするよね、っと」

「あ、俺のぶ、がっ!?」

「な、何だよ、その動、き!?」


 一瞬で、一人の背後を取った蓮が手にしていた槍を奪い、棒の部分で顔面を強打し、呆然とするもう一人の選手の腹に、先ほどと同じように剣の柄を打ち込む。


「おい、蓮。手加減を忘れていないか?」

「いや、予想以上に弱くて、これぐらいの力でも倒れるんだよ」

「なら、もっと手加減しろ」

「はいよ~」


 二人の会話に、相手チームの魔法部隊が顔を真っ赤にしながら、準備していた十を超える中級魔法を放出する。

 魔法には初級、中級、上級の三段階の強さがあり、中級魔法は一発で数十の魔物を倒すことが出来る威力を有しているが……


「魔法を使うまでもないな」


 そう言い、魔力障壁を展開した蒼衣が、全ての魔法を防ぎきる。


「ただの魔力障壁で私達の魔法を防ぎ切った!?」

「ありえない!」

「うるさいなぁ、基礎だって極めれば、この程度、朝飯前だろうに」


 そう言いながら、光属性初級魔法『光弾ライトバレット』を連射する蒼衣。


 一発一発は大した威力ではないが、その分、魔力の消費が少なく連射性に優れているため、蒼衣はこの魔法を重宝していた。


「くっ、こんな初級魔法に!」

「誰か! なんでもいいから防御の魔法を!」

「ま、間に合わな、い!?」


 この世界に来てから訓練を重ねたとはいえ、もとはただの高校生。迫りくる『光弾』を全て防ぎきることが出来ず、衝撃波で吹き飛ばされる。


「おいおい、蒼衣の方こそやりすぎだろ」

「蓮の言う通り、弱すぎるから仕方ないよ」

「はぁー、期待外れすぎて泣けてくるぜ」

『ッ……!』


 二人の言葉に、歯を食いしばり、睨みつける相手チームの選手達。


「だったら……!」


 すると、一人の選手が立ち上がり、詠唱を始める。


「お、この魔力量は、来たか?」

「あぁ、真銘魔法だろうな」


 集める膨大な魔力に、二人は笑みを浮かべる。


「さぁ、どうする?」

「とりあえず、強化魔法だけで行ってみるぜ」


 蒼衣の問いかけに、蓮は答えながら、無属性の『強化魔法』を発動する。


「 【全てを焼き払い、滅せよ】———【紅炎双撃ツインブレイズ】! 」


 高らかに告げられた詠唱によって生まれた、巨大な二本の炎槍が凄まじい速さで二人に襲いかかる。


「フゥ……」


 それに対し、蓮は剣を正面に構える。


 そして……


「ハッ!」


 裂ぱくの気合と共に、一閃。



 次の瞬間、放たれた二本の炎槍が『真っ二つ』に切り裂かれた。

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