第13話
そして、一週間が経過し、遂にチーム対抗戦の日がやってきた。
訓練場の観客席には、多くの騎士団の面々や対抗戦に参加しない生徒が座っており、会場は対抗戦が始まる前から賑わいを見せている。
「これより、対抗戦のルールを説明する!」
訓練場の中央で装備を身に纏った選手たちの視線が自身に集まったのを確認したゴートが、空中にルールを提示する。
———
試合形式:チーム同士によるバトルロワイアル
勝利条件:相手チーム選手の全滅
トーナメントにて、優勝したチームを『奈落』攻略部隊の追加メンバーとする
———
「なお、試合開始と同時に結界を展開するので、各々、手加減なしで挑んでくれ」
『はい!』
「では、これより、抽選を始める。各チームの代表者は前に出るように」
ゴートの指示に従い、各チームのリーダーが次々と抽選の紙を引いていく。
そして、全チームの抽選が終わり、一回戦のトーナメントが決定したため、第一試合のチーム以外は観客席に戻っていく。
「最後か」
「最後だな」
英司達が取っておいてくれた席に座った二人が、決定したトーナメント表を眺めていると、
「おいおい、棄権しなかったのかよ?」
お前、飽きないのか? と言いたくなるほど、同じ言葉を吐きながら、須藤が近づいてきた。
「誰も棄権するとは言ってないからな」
「というか、お前らの意見なんか聞くわけないだろ?」
その言葉に、須藤は顔を真っ赤にしながら、蓮の胸ぐらをつかむ。
「ちょっと強くなったからって、調子に乗るなよ?」
「調子に乗るわけがないだろ、お前じゃあるまいし」
「それな」
「火に油を注いでどうする!?」と隣にいる英司とリーナが視線で訴えるも、二人は気にせず、須藤を煽る。
「天川の威光を借りてる雑魚が粋がるなよ」
「見ていて憐れだな」
「調子に乗るなって、言ってるだろうが!」
そう言うと、須藤が大きく振りかぶる。
その手に魔力が集まるのを感じ、蓮達は目を細める。
「無抵抗の人間に、魔法なんて使うのか?」
「へっ、お前達みたいな陰キャは俺に盾突いたら、こうなるんだよ!」
そう言い、身体強化の魔法をかけた拳を蓮の顔面を打ち込もうとした時だった。
「須藤、やめるんだ!」
こちらに近づいていた天川がそう言い、光の鎖で須藤を拘束する。
「おい、放せ!」
「気持ちは分かるが、どれだけ怒っていたとしても暴力はダメだ!」
「くそがっ!」
暴れまわる須藤を仲間に任した天川は、蓮と蒼衣の方へ視線を移すと、
「君達もあまり須藤を挑発しないでくれ、抑えるのは僕達なんだよ?」
そう言いながら、「これ以上、迷惑事を増やさないでほしい」と視線で訴えてきた。
それに対し、二人は「ハッ」と鼻で笑うだけで、それ以上は何も言わず、試合についての作戦会議を始める。
「お、おいっ……!」
「すみません、お二人は皆様と違い、大事な試合が控えていますので、そっとしてあげてください」
「うっ、わ、分かったよ……」
それに憤慨した天川が詰め寄ろうとするも、両者の間に入ったリーナの圧に思わず後ずさる。
「だ、だったら、リーナも一緒に観戦しないか?」
「いえ、私は英司達と観戦する予定なので、お断りさせていただきます」
「そ、そっか……まぁ、気が向いたら、いつでもこっちに来てくれて構わないから!」
そう言うと、天川達はその場から去っていった。
「いや~、流石、王女様! かっこいいね~!」
「超スッキリしたぜ、ありがとな!」
「いえいえ、私個人としても、思うところがあったので」
満足した顔でサムズアップする二人に、リーナも笑顔を浮かべる。
「蓮も蒼衣もほどほどにしてね。じゃないと、須藤君がまたちょっかいをかけてくるよ?」
「まぁ、あの程度の魔法だったら問題ねぇよ」
「そうそう、心配すんなって」
「なら、いいけど……」
そう言う二人に、英司はやれやれ、と首を振る。
「あ、そろそろ第一試合が始まりますよ!」
リーナの言葉に、全員が訓練場の中央に視線を向ける。
「さ~て、戦力分析と行きますか」
「負けるつもりはないが、どれくらいの強さは知っておかないとな」
ゴートの合図と共に試合が始まると、蓮と蒼衣は一言も話さず、わずかな隙も見逃さないと意識を集中させる。
それを横目に、リーナは英司に話しかける。
「英司は、今回の対抗戦で注目しているチームはいるの?」
「んー、僕もあんまり他のチームの事は知らないからな~」
そう言いながら、英司は中央を指差す。
「強いて言うなら、今戦ってる近藤君達のチームかな」
「どうして?」
「彼らは、天川君達には及ばなくとも、それなりの実力があったんだよね」
「へぇ~」
英司の言葉に相槌を打ちながら、リーナは視線を中央に戻す。
両チームの魔法が激しくぶつかり、次々と脱落していく。
「トドメだ!」
「くっ!」
そして、近藤が相手チームの最後の選手に放った強力な魔法が決め手となり、第一試合の勝者は、近藤が率いるチームとなった。
「どうだった?」
「近藤の真銘魔法は確かに強力だが、当たらなければ問題ないな」
蓮の問いかけに、蒼衣が冷静に返すと、
「無茶苦茶なことを言ってるね……」
「最近の二人には、常識が通じなくなってるからね……」
リーナと英司は、呆れたように空を見上げる。
「すまん、英司、俺達は少し出てくるぜ」
蓮がそう言うと、蒼衣も立ち上がり二人はその場から去っていった。
「二人とも、どうしたんだろ?」
「さぁ、意外と緊張していて、落ち着こうとしているんじゃないのかな?」
リーナの見解に、英司は「なるほど」と首を縦に振った。
「なら、少しでも休めると良いな」
そう言い、微笑む英司に、リーナも微笑み返すのだった。
しかし、実際は……
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