りるるのひみつ②

そこは、町の狭い路地の一角にあった。

古くから在る小さな果物屋で、店の名前は

スマイルフルーツ

店の軒先では、そこの店主と思しき40代半ばの女性が一人で、店頭に並ぶ果物の鮮度を確かめていた。


そこへ


「こんにちは叔母さん」


とその女性に声を掛けながらそこへやって来た りるる が声を掛け、りるるに叔母さんと呼ばれた女性はすぐにその手を止めて、りるるの方へと振り返った。

そしてりるるの姿を見るなり、りるるの叔母は


「あれま、予定よりも大分遅かったじゃないかい。また、道に迷ったのかい?、アンタも生粋の方向音痴だからね。」


その叔母の言葉に りるる は「てへへ」と照れ笑いながら、魔法で作った蝶々と一緒に、その叔母の方へと歩き近付いて行った。


すると叔母さんは、りるる の手前をひらひらと舞う蝶の姿を見て


「まさか魔法を使っていたのに迷子になったのかい?」


と呆れ顔で りるる に返し


「しかも、そんな蝶々を作ってここへ案内させるとか。アンタその気になれば……」


と言いながらも、りるる の笑顔に最後の言葉を濁し、そして、[やれやれ]とばかりにため息をひとつ吐くと


「まぁ、長旅で疲れるでしょう。早く家に入りなさい。」


そう言って


りるるが笑顔で


「ありがとう、ふれいる叔母さん」


返事を返すと

そのまま、店の中を抜けて家の中へと向かう、りるる の背中へ向けて


「リリルール・アンソワー。疲れたでしょ、もう、その変装の魔法も解きなさい。」


りるるはその言葉に咄嗟的にその足を止めて、「えっ?」と声を漏らして叔母を振り返った。


突然に本名で呼ばれた事と同時に本心を突かれた。その事が1番の驚きだった。


「魔法を使えない私だって知っているんだよ。魔力を使い続けていると人の何倍も疲れるって」


その言葉には りるる に対する思いやりが沢山に溢れていた。


『叔母さんは、解ってくれている……』


そう思うと少し涙が溢れて来た

しかし、りるる にはまだ譲れない[何か]と、彼女の[心]を縛る何かによって、心を堅くなにしなければ。との思いから


「私には、父、ブレイディ・アンソワーとの約束がありますから……」


そう、叔母のフレイルに毅然と返すと

フレイルは悲しげな顔で


「りるる、ここに私の弟はいないのよ。この街で立地なメイドになって自立するんでしょ?」


と言う、フレイルの言葉に りるる は黙ってその顔を俯かせた

フレイルは りるる の心を縛る元凶を知っていた。


だからこそ、今、自分の所迄やって来た姪っ娘の りるる を縛る、弟ブレイディの呪縛から解放させてあげたい。


その一心から


「りるる、私は本当の貴女の姿が大好きなの。さぁ、その魔法を解きなさい。もう大丈夫だから。」


と優しくりるるに促すと


りるるはその叔母の優しさに触れ

身体を小刻みに震わせながら


「うん……」


とフレイルに答え ポン!と言う音を立て、その変装の魔法を解いた。


すると、りるるの頭には人間の耳とは別にもう一つの耳、ネコの耳、所謂ネコ耳が現れ、お尻からもネコの尻尾が現れ、それは足元迄垂れていた。


そう、りるる はヒューマノイドの人間では無く、ネコ科のけもの族の人だった。


その姿は彼女をより可愛らしく見せていた。


フレイルはりるるが本当の姿に戻ると、顔に安堵の表情を浮かべ


「やっぱり、その姿の方がアンタらしくて可愛いらしいよ、だって正直な姿だからね。あの差別意識の塊の言葉はもう捨てなさい。」


そう言うと


「ありがとうフレイル叔母さん」


と返して来たりるるへ


「-さぁ、部屋は片づけてもう用意してあるから、中に入りなさい。」


と家へ入る様に促すした。



















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