ピンク・マゼンダ

通称・ドラゴンロード


その急斜面の坂道は、ここフランソワーズの街へ向かう為の最初で有りながら、それと同時に最大の難関で、今、この世界の各地で起きている、戦争から逃れ、フランソワーズで平和な生活を求めて来た人々や、又は、ここ、フランソワーズでしか取れない資格や、出来ない仕事に着くために、移住や移民などしにやって来た者達や、旅人達に取っては、乗り越えて無ければならない、最初の試練の場所で、坂道を頑張って登って行くのか。又は、無理だからと引き返してしまうのかが試される。


そんな場所でもありました。


そして、更に言うと、ここフランソワーズと言う国は平和的中立国と言って、

争い有って居るどの国にも戦いの協力をしないよ。

でも、その約束を守って平和で自由にここで安全な暮らしを約束するよ。


だから、戦いの道具となる武器は持ち込まないでね。


と言うやはり大きな【約束事】の上に成り立って居る国で、りるる を初めとする列車で訪れやって来たその乗客だった人達は駅の出入り口に有る【関所】でまずは手荷物検査や着ている服の中などに武器となる物を隠しては居ないのかのチェックを受ける必要が有り、りるる も当然ながら、女性の衛兵によって、どこかに武器や又は危険な薬などの持ち込みは無いかの手荷物と身体検査を受けて、今はその駅前に広がって居る広場の中に独りでポツンと立っていました。


りるるの頭の上には何処までも続く


青く広い空が広がっていて


時おり、その駅前のロータリーにはどこからとも無くほのかに春の花の香りを乗せた

そよ風が吹いて、りるる の頬を撫でて行きました。


そんな、爽やかなひと時に


りるるは目の前に有る険しくて急な坂道、ドラゴンロードを


『わぁ、私、こんな坂を歩いて登るの嫌だなぁ・・・・』


と、苦手意識が丸見えな顔をしながらジッと見ていると


ふと、りるる のいる場所の周囲が慌しく賑やかになって居ることに気が付いて


りるる は思わずに自分が居るその場所、駅前ロータリーの周りを確かめる様に見回していました。


駅前広場、またの呼び名をロータリーと呼ぶその場所の真ん中にはその周りを人の膝程の高さにほどに積み重ねられたレンガが丸く円を描きながら、その中心に有る石細工師によって作られた幾つもの数の噴水台を取り巻いて居る、噴水が今も水を高く噴き上げながら、その存在感をアピールしていて。


その隣には、旅人たちや友達や恋人達の待ち合わせ場所にピッタリな小さな時計塔が有って、その中の時計は今もゆっくりとそして確実に時を刻み続けており


更には駅の周りに有る花壇では赤や黄色に白などの色を付けた小さな春の花々が可愛らしく咲いて、紋白蝶などの蝶々たちがパタパタと楽しそうに飛んでいたりとか、その様子はまるで春の歌を歌っているかのようでもありました。


そんな中で1番に りるる の気を引き付けて居たのは、広場のあちらこちらに、楽に、そのドラゴンロードを登り、その乗客を目的地にまで有料で運んでくれる【馬車】や、エレキテルと魔力を合わせて動力として動いている【バス】の存在でした。


ナンバーで振り分けられたロータリーの中の各ターミナルには幾つものバスや馬車が停まり、駅構内の関所でチェックを終えたばかりであろう人達が足早にそちらへと向かい、バスや馬車へと乗り込んで行く姿を見ることが出来ました。


そんな人達の様子を りるる も目にしながら


「う〜ん、馬車とバスか・・・・お金は掛かるけれど、歩いてこの坂を登るよりはやっぱり楽にフランソワーズの街へ行けちゃうよね・・・・」


ふと、そんな事を呟くと


それにかん発を入れずに不意にどこからか


『りるる様それはなりません❗️』


と、明らかに りるる を叱る女の子の声が聞こえたかと思うと


「ありゃ〜、やっぱり聞いていたのか」


りるる はその声の主に向かって苦笑いで答えると


『それはそうです、私たちは常にりるる様の側に使えているのですから❗️』


と、今度は先程とは別な姿の見えない女の子が りるる をそう言って叱りつけると、

りるる はその手厳しさに流石に参ったのか、脱力したのかその肩を落として項垂れながら


「はいはい、二人ともにご苦労さまで、生真面目過ぎるんだからもう・・・・」 


と、姿の見えない りるる の、お使いさんの二人に応えて返すと

今度はお使いさん達はよほど気が合うのか無意識に声を合わせハモらせながら


『だって、さっきも言って居ましたが、メイド学校の事で反対しておられた、お父様に、りるる頑張ります❗️って啖呵(たんか)を切って見せたのは他ならぬ、りるる様ご自身なんですよ❗️。それで行き成り坂道が嫌だから楽をしようとか思うだなんて❗️』


その二人の口撃(こうげき)は、りるる に見事な致命傷を与えてしまい


りるる はがっくしとその場所にまるで崩れ落ちていく様に膝を折ると、そのまま道の上に座り込みながら


「あぁ〜〜二人とも、もうわがっだよぉ〜〜っ、わだしわがっだからもうそれで以上、言わないでぇ〜〜〜っ❗️❗️」


と、声を上げて泣き出したのでした。


しかし、まぁ、そんな りるる の姿は全く事情の解らない他の誰かからすれば、ひとり言を言って居たかと思えば、突然に地べたに座り込んで泣き出した、【あぶない人】で【気の毒】な上に【無視した方が良い人】としか映らなかったのですが・・・・


その りるる に先程まで声を掛けて居たのは、二人の妖精たちでした

今は人目を避けてその姿を魔法によって消して居ましすが、その妖精達は双子の姉妹でも有りました。


そうです、この双子の妖精達の存在や口にする言葉などは りるる にしか今は聞こえてはいません。


当然な事ですが、それを横目で見ている赤の他人で有る人達からは


りるる は 【残念な娘(こ)】として捉えられていても仕方がなかったのが現実でした。


ですが、その事の成り行きを知る双子の妖精達には、ちゃんとその理由も解っっていて

自分たちが りるる に『少し言い過ぎてしまたったな』とか、『また、ヘソを曲げてしまって、お得意の駄々をこね始めたな』がちゃんと解っていて、それがまるで手に取るように解るからこそ『・・・・また、おバカな事をやらかさなけれりゃ良いだけど、やっぱりやっちゃいそうだよねこの流れは・・・・』と、冷や冷やとしながら、りるるの様子を見守っているのでした。


そうですこの春で間もなく16歳の誕生日を迎える、りるる でもそれは、りるる もまだまだ【おこちゃま】な気質がたっぷり残っている、お茶目な、お茶目な 普通の女の子で、見知らぬ土地へとやって来た緊張と不安のある中で、気を許せる【誰か】が側に居てくれてくれるんだな。と気がつけば、すっかりと【安心】をして仕舞い、そこで突然に【子ども】の【自分自身】をさらけ出してしまい、駄々をこねるて見たり、ワガママを言って、その【誰か】を困らせてしまったりしてしまうのは、無理もない普通の事なのかも知れません。


そして遂に双子の妖精が心配してた りるる の【やらかし】が始まる時がやって来て仕舞いました。


妖精達の見ているその目の前で、りるる は不機嫌な顔を【ぷうっ】っと膨らませたまま立ち上がると、プンスカプンとこれ見よがしな態度で【スタスタ】とキャリーケースを引きながらドラゴンロードの方ヘと1人で歩いて行きました。ですが、 りるる はそこでいったん足を止めてから、チラッと後ろを振り返ったかと思うと、


『・・・・・・』


と、気をもんで心配している妖精たちの気持ちを知ってか知らずか


またすぐに坂道の方へと1人で歩いて行き


そしてまたすぐにその足を止めて立ち止まったかと思ったそのすぐ後のことでした


りるる は


パッとすぐに妖精たちの居る方へと振り返ると


「いいもん、私は頑張るのは少しだけで良いんだから、少しだけ頑張るから、そうでしょう❗️❓️坂道を歩いて行けば良いんでしょう❓️、でも、この荷物は重いから、から荷物はか〜るくしちゃうんだから❗️、それだけは止めさせないんだからねっ❗️❗️」


と、いきなり、拗ねを交えた大きな声を上げて泣き叫ぶと、それを聞いた妖精たちは勿論の事、その場に居た何も事情も知らない大勢の人達が一斉に驚いて、そんな りるる に視線を集めてしまい


りるる は一躍に注目の的となりました。


多くの人達が『これは何事か❓️』


と、騒然としている中で


妖精達は、事の重さに

ハッと息を飲んで『これはいけない❗️❓️』と りるる が本気で何かを【やらかすな】と気が付くと、直ぐ様に身を隠している魔法が解けかけて居ることも忘れ、半透明(はんとうめい)に、なって、その姿と形が見えているのも知らずに、双子の妖精達は背中に生えている、そうそれはまるで虫達のそれにとても良く似たような、二枚の羽をバタバタと音を立てて りるる が今やろうとしていることを【やめさせなければ】と必死になって、その りるる めがけて急ぎ、そして、まるで飛び込んで行くかの様にその側まで飛んでいきましたが、時は既に遅く


もうこの時には りるる は口の中で【ぶつぶつ】と普通には言霊としては聞き取る事がとても難しい何事かを呟くことを始めていたのでした。


りるる がいま呟いているその言葉は紛れもなく、これから魔法を唱えるための詠唱(えいしょう)又はチャントと言って『これからこの魔法を私は使います、だから精霊の皆さんこの私にその為の力を貸して下さいね、お願いします』と、使う魔法を管理している精霊たちにお願いをして唱える、『お祈り』の様な、又はずうっと山もなく谷もない同じ曲調で、その唱えている魔法が完成するまで何時までも、唄われれ続けるものれている『うた』の様な言葉の連なりとも言えました。


りるる がその詠唱(えいしょう)を唱えているその時


りるる と 双子の妖精たち の周囲は時の流れが止まり深と静まり返ってしまい

その時に、そこだけが、世界の中から切り取られて孤立した世界、そう別世界へと変化を変わっていたのでした。


魔法の力が満ちたのでしょうか❓️


呪文を唱えている りるる のその姿にも変化が起きいました。


まずは、腰にまで届く軽くゆるふわでウェーブの掛かった長い髪の色が

続けてタレ目がちだった目付きがキッとつり上がったツリ目になり

その瞳も透き通ったピンクと紫色を交えた妖しい色を持つ、そう、まるで薄紫色の宝石、アメジストの様な輝きを放つ色へと変わり

そして唇の色もまるで艶の有る、その色のマゼンタ・ピンクルージュを引いているか様に艶やかな彩(いろ)に艶めき出していて

そう、まるで妖しく人を誘いそして虜(とりこ)にもする事が出来る、妙に大人びた彩(いろ)へと変わり


今 りるる の全身を包み込む、その妖艶(ようえん)色の名の

マゼンダ・ピンク

そのマゼンダ・ピンクはその色に取り込まれた りるる 容姿も又その雰囲気も


小悪魔的となってその印象も全くに変わっていたのでした。


そう、それは正に りるる が持つもう1つの、性格や素性と


そして


彼女が持つ女性としてのまた別な側面を


伺わせて居る、そんな姿でも有ったのです。



つづく















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る