第24話

 魔法が効かないと思われたビックスライムだが、天から降り注がれた魔法で一撃で姿形がなくなってしまった。


「スライムの倒し方は、いかに素早く魔法を打ち込むか。その一点だけだ」


 そう言いながら、空からルージュ寮の寮長が下りて来た。

 やっぱり、寮長クラスになると、いとも簡単にモンスターを倒してしまう。


 その場にいた全員が呆気に取られて、寮長を眺めていた。

 寮長はこちらを振り向くと、驚いた顔をした。


「おい、お前ら、服も着てないなんて……。露出癖でもあるのか……?」


 寮長は最もらしいツッコミを入れてきた。


「いや、これはスライムに服を溶かされて……」

「ははは。全員やられたのか! 今年の一年は中々面白いだな!」


 寮長は笑いながら、僕たちの身体を上から下まで眺めてくる。


「しょうがないから、ここで湯でも沸かすか。湯沸かしは、うちの寮の専売特許だからな」


 寮長がそう言うと、みんなニコニコと笑顔になった。


「やったー!」

「ルージュ寮長と風呂だ!」


 口々にそう言っている。

 ゲルプは、相当嬉しかったのだろう。

 陽気に尻まで振りだした。


 はぁ……。

 子供っぽいと言うか、なんというか……。


 一年生が喜んでいる間に寮長は、水が吹き出す横へ火魔法を置いた。

 消えない炎を水の周りにぐるりと一周。

 これで、水が温められるのだろう。

 魔法を使った源泉の出来上がりだ。


 気がつくと、ゲルプ以外にもお尻を振って踊っていた。

 そして、僕のことを誘ってくる。


「やったぜー! お前も踊ろうぜ!」


 そう言ってみんなはお尻をフリフリとさせて、僕に近付いてくる。


「それは、ちょっとお断りだな……」


 お尻ばかりで下品だなと思っていると、後ろから寮長に話しかけられた。


「ははは、良いじゃねえか。お前も混ざったら」


 先輩はそう言うと、その場で服を脱ぎ出して、全裸になった。

 そして、先輩もお尻をフリフリと踊りだした。


 えぇ……。

 ルージュ寮長……、そんなことするんだ……。

 ちょっとイメージが……。、


「ほら、混ざらないのか?」


 寮長からの誘い。

 この人に魔法を教えてもらおうと思ったら、ここで友好関係を作っておいた方が……。


 寮長が思いついたように、僕に聞いてきた。


「お前も、穴ぐらい掘れるだろ?」

「え、えーー!? いや……。え? 穴?」


 どんな誘い方をしてきてるんだ、寮長……。


「この前も、ヴェール寮と一緒に穴掘ったって聞いたぜ?」


 一緒に大自然の中でお風呂には入ったけれども。

 そんな風に噂って伝わってしまうのか……。


「い、いや、あれは別に掘ったわけじゃなくてて、ただ自然の流れで……」


 僕があたふた答えているの、先輩は笑って背中を叩いてきた。


「大丈夫だって、謙遜しなくても分かってるよ。校庭にあんなに穴を空けたやつは初めてだぞ!」


 あ……。

 そっちの穴か……。


 僕は何を勘違いしてたんだろう。

 恥ずかしい……。


「はい、そっちの穴ですね。それから、楽々と。グラビデ」


 ――ドンッ。


 地面に大きめの穴が空いた。


「とりあえず、助けが来るまでここにいるか。まぁ、このまま裸で帰ってもいいけどな」

「さすがに集団で、全裸なのは……」


「ははは、冗談だよ! 風呂でも入って待とうぜ」

「やったね! ベタベタしてたから!」


 僕としても嬉しい。

 これで、魔力が湧いてくるだろう。


「お前、やっぱり筋がいいな。うちの寮に来ないか?」


 余裕のある感じ。

 これは、モテるっていう雰囲気を醸し出している。

 僕が女の子なら、イチコロだったと思う。


 小さいのに、懐が広い。

 こういうのも、結構良い。


 けど、僕には着いていくべき先輩がいる。


「お誘い嬉しいですけれども、僕には先輩がいますので」

「へぇー。意外とガードが硬いんだ」


「ガードってなんですか?」

「いや、こっちの事だから気にしないで」

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