第23話

 ビックスライムとでも呼べばいいのか、スライムが集まって合体していく。

 みるみるうちに、一体の大きなスライムになっていった。



 小さいスライムは一体だけだと、服を溶かす程度の酸だ。

 小さいから、その程度で済むけれども。


 もしも、大きなスライムになった時には、酸の威力がどれだけ強くなるのか……。

 想像しただけで、危険な気がする。


 こいつを野放しにしておくのは、不味いぞ。


「みんな、このままスライムが合体すると手に負えなくなると思うんだ。今のうちに一斉に攻撃をしよう!」

「「分かった」」


 皆が返事をしてくれると、すぐに魔法を唱え始めた。


「ファイヤー・ボール」

「グラビデ!」

「アイス・スピアー!」


 各々唱えた魔法が、ビックスライム目掛けて飛んでいく。


 飛んで行った魔法がビックスライムに当たるのだが、それぞれの魔法は、ボワンとビックスライムの表皮を揺らす程度の威力で、弾き返されている。

 風に揺れる波のように、ボワンボワンとビックスライムは揺れている。


「全然効いてなさそうだぞ……?」


「もしかすると……。聞いたことがあるぞ……。スライムの中には、魔法攻撃が効かない種族もいるって」

「そうなのか……。それは、魔導師にとっては、天敵じゃないか……」


 魔法が効かないなんて、魔術師は全く歯が立たないだろう。

 身体強化でも上手くできれば。

 けど、それをしたとしても、物理的に攻撃できるような武器も持っていないし……。


 ビックスライムは、なおも合体を続ける。

 パイプの中から、どんどんとスライムが出てくる。

 それらは、全て一体のビックスライムへと合体していく。


 合体したスライムは、どれだけの数がいたのか。

 ビックスライムが、ちょっとした山のような大きさになってきた。


 ゲルプが言う。


「魔法が効かないと言っても、こいつを氷漬けにさせてしまうのはどうだろう? 少なくとも動きを遅くしたり、追加でがったいするのを阻止することはできるんじゃないか?」


 僕たちの攻撃魔法が、効かないとなると。

 どうにか応援が来るまで耐えなければならない。

 氷漬けにして足止めをするというのは、作戦としてかなり効果的な気がする。


「やってみる価値ありかもしれないね」


 氷魔法を打つ時の心得が、最近僕の中でアップデートされたんだ。

 アズール寮で習った通り。

 瞬間で凍らせるイメージを持とう。



「アイス・レイル!」


 ――パキパキ。


 魔法を唱えるや否や、辺り一帯が凍っていった。

 動く水は凍りにくいというが、パイプから吹き出している水も一瞬にして凍った。


 ビッグスライムの巨体も一瞬で凍ったように見える。

 透明度の高い氷で凍り付いている。


「よし!」


 僕も成長できている。

 アズール寮の寮長までは行かないまでも、かなり透明度の高い氷が出来た。


「おぉーー! すげー!」

「さすが、ヴァイス君です!」


 同級生から褒められるっていうのも、なんだか恥ずかしいな……。


「ま、まあね!」


 褒められるのは、いつでも慣れない。

 少し照れくさいので鼻をさすって誤魔化した。


 ビックスライムが凍っていれば、まずは安全が確保できたと言ってもいいかも知れない。

 このまま、先生たちが来るのを待とう。


「しかし、ヴァイスの魔法ってすげーよな。前よりも進化したんじゃない?」

「ありがとう」


「今度教えてくれよ」


 そんな話をしていると、凍っているビックスライムが震え出した。

 氷の中で動いている……?


 次第にビックスライムの揺れが激しくなった。


 ――パリンッ!!


「「……なんだって!」」


 僕が凍らせていたのが解除されてしまったらしい。

 氷が割れた衝撃でぶるんぶるんと、ビックスライムは揺れている。



 くっ……。こんな魔法では、ダメだったか……。

 あの時のアズール寮の寮長の氷魔法に近付けたと思ったのに。


 ビックスライムは、四方八方に溶解液を散らしてきた。

 僕たちの近くに落ちる。


 一瞬にして、生えていた草木を枯らしてしまった。


 これは、触れるのもまずい。

 僕の魔法が効かないんだ。このままじゃ四人ともやられてしまうのも時間の問題……。


 その時上空から声が聞こえて来た。


「こうやるんだよ」


 天から降り注いだ魔法にて、ビックスライムは飛び散っていった。

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