第22話
魔力の泉の源泉へ通じるパイプに沿って移動していく。
なかなか快適なロープウェイっていう感じだ。
中は何人か入れる形で。
個別にチームを作っている感じだ。
僕は、一年生チームで乗り込んだ。
客車の中では、寮トークに花が咲いていた。
「いろんな寮があるけど、どこがいいのかって、寮長によるよね」
寮長目当てというか、そんなに寮長って人気があるんだな。
「やっぱり、アズール寮がいいだろう。寮長のあのクールな感じ。溜まらないと思わない?」
「いや、ヴェール寮の自然的なところも良いと思うんだよ」
「やっぱり、ルージュ寮がいいと思う。一番強いイメージがするだろ?」
ルージュ寮の寮長って言ったら、あれだよね。
入学式で、水の魔法を乱射していた人だよな。
魔法としては、強そうというよりも、どこか繊細な感じがするけど。
「あ、あそこ。水が噴き出しているよ!」
「ちょっと行ってみようぜ」
うちのチームは、僕がいるからか最後方を任されていた。
だから、水が噴き出しているポイントに気付くころには、他チームは先に行ってしまった。
確かに怪しい場所がある。
そこだけ不自然に水があふれているのだ。
「降りてみよう!」
ヴェール寮のゲルプを促して、その場所へと客車を上陸させる。
近づくとよりわかるのだが、確かに水が沸き上がっているかのように、山肌が水浸しになっているのが見えた。
あたかも、その場所から川が流れ始めているようであった。
その下にある木々は、どこか魔力を帯びているような。
生命力にあふれているようだった。
「やはり、この水が魔力の泉の水と見て間違いなさそうだな」
「うわぁっ!」
「おい、どうした!」
ゲルプは滑って転んだのか、衣服が濡れてしまっているようだった。
「いててて……」
「気をつけろよ。山肌に水がしみていたら、ぬかるんで滑りやすくもな……。うわっ……!」
立て続けに、二人が足を滑らせて転んでいた。
確かに滑りやすくなりそうだが。
気を付けないとな。
「あぁっ! なんだって! 僕の服がぁ……」
「なんだか、すごくべちゃべちゃだぞ……」
泉の水で濡れたかと思ったが、そうではなさそうだ。
水の中に紛れて、何かがいる。
「おい、何かついているぞ……」
「これは、スライムだ!」
スライムと言えば、あの最弱と言われるようなモンスター。
それがこの辺りにいるらしい。
「だめだ、服がボロボロだぁ……」
濡れると溶ける紙。
そう、トイレットペーパーのように、ゲルプの服が分解されて溶けているようだ。
これはきっとスライムの仕業だろう。
二人ともに、服が溶けていく。
「これは、まずいな。一度服を脱げ! 身体まで溶かされてしまうぞ!」
「マジか。それはやばい……」
急いで、服を脱ぐ二人。
既に、かなり酸にやられたようだった。
「ふぅ……」
パンツ一枚の姿になる。
上半身、下半身はもちろん、靴もやられていたから、靴も脱いでいる。
魔導師の心得にもある通り、杖だけはどんな状況でも持っている。
杖を持ってパンツ一枚スタイル。
なかなか、見れない光景だろうな。
これで身体を守れるものはなくなってしまうわけだから、補助魔法でもかけておいてやろう。
皮膚までとかされてしまうと、大変だからな。
「おいおい、嘘だろ? 俺のパンツが溶けて来た!」
「俺もだ!!」
「まずいな、それも脱いでおくといいかも。僕の魔法で身体は防げているけれども、どこまで持たせられるかはわからないから」
最後の一枚の防御素材がなくなってしまった。
すっぽんぽん。
「ふぅ、危なかった。今回もお前に助けられたな」
「ありがとうな!」
「う、うん」
笑顔で、こちらを向いて来るが。
防御素材が無いんだよ……。
こんな山の中で、恥ずかしい。
ちょっと、視線に入れないようにしながらパイプを眺めて考える。
スライムは、物を溶かす酸のようなものを出すようだ。
おそらく、こいつらのせいで、魔力の泉からの配管が溶かされてしまったのだろう。
ここで水が溢れているっていうことは、ここが原因とみて間違いないだろう。
ここら辺のスライムを倒して、配管を直せばおそらく問題解決だ。
その時、一気に水が噴き出してきた。
「な、なんだ!」
火山が噴火したかのように、空に舞う水。
そして、その中に肉眼でも見える。
スライムの群れだ。
――ピギャーーーー!!
スライムの鳴き声なのか。
初めて聞いた。
配管の中を進んでいたスライムなのか、それがこの場所にやってきたらしい。
突如出現した大量のスライム。
避けるすべを考える前に、地面へと次々と降り注いでくる。
「くっ。当たってしまった」
「僕もだ」
みるみるうちに服が溶けていく。
応急処置的に、先程の防御魔法を唱えておくけれども、服が服が溶けてしまうのも時間の問題。
僕も脱ぐしかないか……。
四人パーティは、すべて衣を纏っていない状態になってしまった。
これは、防御力は0だな。
辺りに散らばるスライムは、意思を持っているようで次々に集まり始めた。
「なんだこいつら」
「もしかして、こいつらって……合体しているのか……?」
そういう通り、みるみる大きくなっていった。
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