第20話
なんだかんだ、ヴェール寮に寄ってしまったけれども。
今日は、しっかりと門限の時間までに寮についた。
けれども、先輩は怒っていらっしゃる……。
「先輩、今日は門限よりも早く帰ってきましたけれども……」
「お前は、いろんなところに出歩いているらしいな」
「……はい?」
どこから仕入れた情報だろう。
というか、僕は自由にであるいちゃいけないのかな……?
「俺にも情報網があってな。お前の行動は大体わかるんだ」
「へぇー……、そうなんですねー……」
先輩は、怒った顔から真剣な顔になった。
僕に対して、誠実な態度をとってくれる時の顔。
「魔法を教わりたいなら、直接俺に聞いてくれよ!」
「いや、僕もですね、そうしたいのはやまやまなんですけれども、つい流れで……」
僕の受け答えが悪かったのか、一瞬で鬼の形相になった。
「なにの流れで、大自然の中で股間を見せびらかすなんてことするんだ? 何が普通なんだ?」
「ひ、ひぇっ……。何で知ってるの……。もしかして、草原の方から見てたり……?」
先輩は、僕の疑問には答えてくれなかった。
今度は、怒っている顔がだ弾と悲しそうな顔になった。
「うちの寮もな。俺が立ち上げたようなもんだが、設備が足りないんだよな……」
何かを考えたように先輩は続ける。
「うちも、森の中に露天風呂でも掘ってみるか? それで、一緒に自然を感じてみるか!」
「い、いや……。それは大丈夫ですてみるか」
先輩は、むっとした顔をした。
「相変わらず、俺と風呂に入れないっていうのか?」
「あ、いや……。そういうことじゃなくて……」
ころころと変わる表情の先輩。
怒ったり悲しそうになったり。
中々忙しい人だな……。
今度は、何か見下すようにして言ってくる。
「それじゃあ、魔法を教えてもらいたかったら、俺の背中を流してもらおうか?」
「えぇ、それってなにかのハラスメントになりませんか……」
僕は思ったことをそのまま口に出したのだが、どうやら伝わらなかったらしい。
「なんだ、ハラスメントって?」
「あ……。これは通じないのか」
ハラスメントの概念だけでも、ある世界だったら良かったのに。
先輩は不思議がっていたが、話を続けた。
「で、結局俺の背中を流していたのか」
「はい、そうです。流させてもらいます」
最後の僕の返答に対して、先輩は満足そうに笑ってくれた。
◇
学校の机に頬杖をつくと、自然とため息が出てしまう。
「はぁーー……」
「ヴァイス君、どうしたの?」
ヴェール寮の
なんで、みんな風呂が好きなのかな……」
「お風呂って、魔力の源だからかな。自然と一体になるっていうのもあるけれども、魔力の泉って知ってる?」
「え、いや……、知らない。僕は初耳だよ」
「魔力って、誰でも持っているものだけれども、魔力を自分の中以外から取り入れて魔力量を上げることができるんだ」
「そうなの……?」
「各寮にある風呂って、その寮にあった魔力のレベルアップができるように、魔力の泉から引かれた水なんだ」
あぁ、それだからなのか。
ここの寮生たちがみんな風呂好きなのは。
何かあるごとに風呂に入ろうと言ってきて。
それぞれの寮っていうけれども、うちの寮ってどうなっているんだろう。
ちゃんと僕の魔力に合ったお風呂だといいけれども。
あまりお風呂のことを聞きたくないけど、先輩に聞いてみるしかないか。
けど、僕は少し疑問に思ったので聞いてみた。
「けど、もしかして、その魔力の泉っていうところに直接行くと、魔力量を上げることができるんじゃないか?」
ゲルプはうんうんと頷きながらも、難しい顔をした。
「もちろんそうだけど、ずーっと遠くにあるんだよ。うちの校長が独自の経路で引いているらしいけど」
僕の異世界冒険ライフに、魔力は絶対欠かせないけど。
いろんな寮の風呂に入るっていうのは、恥ずかしいから、ちょっと控えたいな……。
地下の大浴場のアズール寮。
開放的なヴェール寮やら。
もう一つは、入ったことがないけれども。
そういう寮のお風呂に入るよりも。
それよりも、魔力の泉を抑えよう。
そうすれば、僕ももっと魔力がみなぎるはずだ。
その時、赤色のローブを着たオランが教室に入ってきた。
とても慌てている様子だ。
「みんな、大変だ。風呂の水が無いんだ!」
「「えええぇえ!」」
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