第6話
森の中は、想像以上に広い。
草木が生い茂っており、入り組んでいる。
その中を草を掻き分けて進んでいく。
先輩は、どうしてこんなところに住んでいるのかな。
それは、あまり詳しく教えてくれなかったなぁ。
他の寮から追い出されたのかな?
あの先輩なら、なんだかあり得そうなんだよね。
大事件を起こして、それで島流し的にこんな所に暮らしてるとか。
うん。
あり得る、あり得る。
もしくは、本当はどこかの寮生なのかもしれない。
強すぎるから、個別に家を与えられて特別待遇されているのかな?
うーん……。
気になるから、今度直接聞いてみようかな。
けど、今日の感じだと、絶対教えてくれないだろうな……。
まず話を聞いてくれないし。
そもそも、魔法だってちゃんと教えてくれる気あるのかな……?
やっぱり、僕の魔法学園生活は前途多難だ……。
とほほ……。
――パキッ。
足元から何かの音が聞こえた。
恐らく枝じゃないけれども。
これは動物の骨だろうか。
いくつも獣の残骸が、散らばっている。
粉々になった骨の上だ。
これは、何かの巣に入ってしまったのだろうか?
こんなことをするのは、おそらく大型の獣か何かだろう。
そう思っていると、後ろから気配を感じた。
大きなトロールが、そこに立っていた。
三、四メートルはあるんじゃないかと思う巨体。
「おぉー! 今日の飯が、自分の方から来てくれたぜ!」
人語をしゃべるようだ。
低く大きな声が、僕の身体に響いてくる。
これは、まずいな……。
モンスターと対峙するのは初めてだ……。
すこし、ビビッてしまうところもあるけれども、僕には強力な魔法がある。
一気に終わらせてしまおう。
最初から、全開放だ。
「アイス・レイル!」
周囲を凍らせる魔法。
一瞬にして森は、冷気に包まれる。
「お、なんだこりゃ……」
そう言っている間に、トロールはカチカチに凍っていった。
凍らせてしまえば、動きも封じられる。
これで、僕の勝ちだな、
「へへ。どんなもんだ! 僕にかかれば、こんなものだね」
凍ったトロールに近づいてみて、確認する。
カチカチに凍っているようだ。
これは、生命も絶たれているだろう。
このトロールは、きっと新鮮な肉として調理されるんだろうけれども。
流石にこんなやつを食べるのも、気が引けるな……。
――ドスン、ドスン!
「な、なんだ? この音は……」
先ほどのトロールと同じくらいの大きさのトロールが何体もやってきた。
「あれ、あいつ。先に行ったと思ったら、凍らされてやがるぜ」
口ぶりからすると、先ほどのトロールの仲間のようだ。
それが、1,2,3,4……。数が多いな。
しょうがない。一気に片付けよう。
「アイス・レイル!」
魔法を唱え始めると、トロールたちはすぐにこちらに気付いたようだった。
トロールは、持っていた棍棒で地面を叩きだした。
僕の放った氷魔法は地面を張って、トロールまで行く途中で棍棒によって打ち消された。
棍棒で魔法を打ち消すなんて、そんなことあるのか……。
「自分の魔法が全てだと思ってる奴っているよな。この森じゃ、そんなやつ通じないぜ」
一体のトロールがそう言うと、群れで襲いかかってきた。
トロールたちは、持っていた棍棒を振り上げた。
想像以上の速さで、こちらへ近づいてくる。
振り上げた棍棒が、僕がいた場所に振り下ろされる。
後ろに飛ぶことで、かろうじて避けることができた。
「小さいから、狙いにくいな。一発で仕留めてやるから、止まっておけよ」
トロールは、先ほどよりもスピードを上げて、僕の後ろに回り込んでくる。
その間に前方からもトロールたちは間合いを詰めて、僕を囲んでいった。
おそらく、こいつらは群れで狩りをするんだ……。
さっきの骨の山も、こいつらの仕業なのだろう。
そうだとしたら、納得いく……。
ここで、大量に獲物をとって、そして食べつくしてる……。
「じゃあ、さっさと始末するか。こんな小さい奴、腹の足しにもならないかもだけどな!」
そういって、棍棒を振り下ろしてくる。
咄嗟に氷魔法を唱えるが、トロールは一瞬で打ち消してくる。
そして、群れで突進してくる。
こんな強いモンスターがいるなんて……。
誰か助けて……。
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