アンバー・マジックアワー/黄黑天

空港に降り立ち、空を見上げると、少しの黄砂と夕焼け。それに、高さ数百メートルを超える高層ビル達。

ドローンが空を飛び交い、無人車両が道路を走る。

街の喧騒の半分、人々の声の半分は電子音声で、人の声と全く区別できないほどだ。


僕が乗っている無人タクシーは、細々とした解説をしながら、渋滞を自動的に避けながら走っていた。

しかし、避けても避けても、車ばかりだった。

渋滞管理なんて、AIがやってくれているはずなのに。それでも、この街に住む人は多い。

ここ数十年で、華北はゴビ砂漠みたいに、死の土地となった。

人々は技術なしに、華北に住めず、彼らのうち、多くが南へ移った。


全く動物と変わらない電子ペットが車内で、寝転んでいる。

可愛らしい、不死の猫。


僕はその猫を撫でながら、街を見ていた。

手触りだって、本物の猫より気持ちいい。


街中に、垂直旗が垂れ下がっている。最近流行のデザインだ。

紅、中国の赤。赤と黄、白、黒。そんな旗が、街を飾っている。


信号を見ると、白信号がともった。信号は赤黄緑白の4つあって、白は自動運転が始まる色だ。四色信号は、アメリカが最初に導入した。


横の有人タクシーは、自動運転に切り替えて、運転手が手を離した。

そうすると、彼らはそのまま進んでいった。


無人タクシーが、街についてのアナウンスを始めた。

何千年前からの歴史に加え、地理風土や人気の観光スポットだとか。


それを聞き流して、空を見つめた。


そうしていると、タクシーが空の色調や、BGMを変えましょうかと言ってきたが、それも無視した。



服の袖を見ていると、なんだか無性に袖の色が気に入らなくなってきた。


せっかく人に会うんだ。もうちょっと自分の好きな服にしたいな。


バイザーでスマートクロースのアプリを開き、袖に数本の色の線を入れた。

今では、服の色も自分で変えられる。


これで人に会っても大丈夫。


自分の顔を鏡で見る。緑色の目。白色の髪。右側だけ長いショートカット。

後ろはポニーテールで、金髪。白から金へと、流れるように変わっていく。

うん。化粧もばっちりだし、たぶん可愛いよね。


黒いぴっちりとした服に、ベルトを着込む。

ジャンパーみたいな素材は、左右不均等なポケットがついている。

袖は深い紺色で、左手に蒼く輝く、同じくぴっちりとした手袋。

右手には何も付けてない。

右肩に軽く羽織るもの。

下は半透明なスカート。下半身にもベルト。左ももにもベルトをつけていて、

風船型の水筒をつけてる。

タイツみたいな、蒼く締め付けの強いズボン。膝と足首に飾り。

靴も蒼い。

お気に入りの服だ。せっかく世界一周だし、皆と合うから、できるだけ可愛いものを着て、皆に喜んでもらえるといいな。


リストフォンから通話がかかってきた。手首を叩き、通話に参加。


「もう空港には着きましたか?」、リストフォンが喋った。


「タクシーに乗ってるよ」


「ヘリを使ってもよかったのに」


「こっちのが好きなんだ」


「わかりました。待ってますね」


そうすると、通話が切れた。



バイザーに、宇宙ホテルの広告が入った。衛星軌道上や、月面にホテルが建てられている。

とても高くて、僕には行けないけど。

邪魔だから、バイザーを外して外を見た。

ナノマシンを入れている場合、視界に直接広告が表示されるから、僕はバイザーのが好きだ。



ゲームを起動して、今日のログインを済ませておいた。そうすると、ポイントがもらえる。

宇宙を飛び回り、太陽系の複数の惑星を股にかけた、自由に遊べる近未来犯罪もの。

マップ体積は、太陽系と全く同等。リアルタイムの惑星規模だ。

武器はガチャで手に入れられ、キャラクターもそうだ。

インドネシア製のゲームで、国も再現されている。

モンゴルの皇帝は百年後もカーンのままで、フランス皇帝も同じ。


バイザーに通知が来たが、僕は無視した。



そうすると、タクシーはすぐに、「後100mで目的地に到着します」と言った。


視界に花火のようなホログラムが広がり、鳥が羽ばたいていた。


リュックを背負い、チップの入った指をかざして代金を払った。

そうしてタクシーを降り、中央広場まで歩いて行くことに決めた。



人々は行き交い、歩く。色とりどりの服に、色とりどりの照明。

ビルは七色に光り、緑がビルの壁を伝っている。


大きな噴水、長方形の敷地。

水面に夕日が反射し、水そのものが液体の金のように輝いていた。


歩いている人と肩がぶつかると、その人はひらひらと、その右腕を振った。右の腕は、人工の義手だ。

バイザーがそう教えてくれた。


人型の警備ドローンや、白いパワードスーツを着た警官が街に立っている。武装は拳銃だけ。


隣では、歩道が動き、人を運んでいる。小さいドローンが浮かび、挨拶してくる。


多くの横線が入ったビルの窓に、夕日が反射し、その美しさに見とれた。


床には、丸や四角、水玉模様など様々な色がついていた。

小さい、筒のような場所に入った。天井や壁には、楕円の切り欠きがあり、植物が植えてある。

切り欠きのディスプレイでは、鳥たちや龍が舞っていた。


それを抜けると、道の横から上までを覆うような金属棒が沢山あり、遠くから見ると、ハート型に見えるように配置してある。


だんだんと、心が弾んでくる。もうすぐ、ある人に会うんだ。


小さな伝統の横から、垂直旗が垂れ下がり、感謝歓迎などと書いてあった。


まるでうねり狂っているように大きな、モニュメント。モザイク模様のような建造物だ。波を表しているのだろうか。


中国特有の赤いぼんぼりは、七色に光っている。椰子の木が一本高く立ち、人々を見下ろしているのだ。


パンダのマスコットが置いてあった。

パンダはチベットにも、中国にも住んでいた。チベットは、独立した後、モンゴル連邦帝国に加入していった。

そうして、モンゴルと中国で動物の起源を争っている。


国や国境が表れるよりも前に、動物はそこにいたというのに。

人は、国境のために死んでいく。


そう考えながら、歩いていた。


あたりは金色と喧噪に包まれ、ゆっくりと時間が流れていく。

こんな日常が続いていけばいいと思うほどだ。



噴水をたどっていくと、最も大きい長方形、また噴水だ。そこにたどり着いた。


人工の池は最も高いビルに繋がり、そのビルは数百メートルを遙かに超えるであろう高さで、首の角度が間に合わないほどだった。


まるで天上の天国であるかのように、動物達が空を飛ぶ。

それらは全てホログラム。

龍、天使、鳥。形を見ても、AIに聞かないとわからないほど多くの種類の動物たちが。


噴水は水を様々な形に変えながら、吹き出している。ハートになったり、クローバー形に水を出したり。

人々は噴水の周りに腰掛け、談笑している。


立ち並ぶ沢山の店。そこら中に机や椅子が並んでおり、沢山の人々がそこにいる。数百、いや千人以上だろうか。


ここは中央広場。中国北西の都市の中では最大級に近い街。その最大の街の、最も美しい場所。


ここで3年は暮らしたいほどの美麗さだった。

数千年前の皇帝がいくら望もうとも、この景色は眺められない、絶景だ。


中央広場を歩いていると、ある人がこちらに手を振っているのが見えた。

バイザーを外し、そちらを見た。




左目に、片眼鏡がついていて、それがきらりと光っていた。眼鏡の縁から、金のチェーン、平たく、薄い複数構造のチェーンだ。それが耳についている。

グラスとチェーンは夕日を反射し、目が痛いほど輝いている。

黒い反射するテープみたいなのが、顎のあたりについている。黒い髪をポニーにして、肩の前からたらし、紅玉か何かでまとめてある。

肩には金色、赤い、片方だけのマント、白のたらしているなにか。金色のボタンに、赤と青の帯。足はすらりと細長く、輝くタイツのようなズボン、赤と青が交互に代わって、きれいな縦線が入っている。膝には飾り。靴も白黒だ。


辺りの人は、不自然に彼を見ていない。魔法か何かでも使っているのだろうか?

非人間族というものは、得てして派手な服を着て、それでいて、注目をひかないすべを知っている。


僕は、彼を見ると、彼は明るい声で話しかけてきた。


「どうも。名は晩霧と申します。遠路はるばる日本からお越しいただき、まことに感謝感激しております」





https://note.com/kyomunomahou/n/na148d46614e0

キャラクターの設定絵。ある意味、この小説とかのために5年ぐらい画の練習をしました。

新しい立ち絵も載せていますので、最新版の画像はこちらです。


https://www.youtube.com/watch?v=RvwSHuv3UtQ:この文章の動画版。古い立ち絵の方です。

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