11 サカエゼミ始動
「皆さん、改めまして、ワカヅマ・サカエゼミに参加して下さってありがとうございます。当ゼミでは、『現代魔法から未来魔法へ』をテーマに一年を掛けて、現代魔法とは全く異なった新しい魔法体系である『未来魔法』を研究テーマにしていきたいと考えています。みんな、よろしくね」
手始めに挨拶をするワカヅマ・サカエ先生。
実年齢は80歳を超えているらしいが、見た目は20代後半から30歳くらい。ただ、本人によると魔法で40歳の時の姿になっているらしい。
40歳にしてはかなり若く見えるし、美人だとも言える。まあ、実年齢は80歳を超えているのだが。
「私の呼び方ですが、ミノーで言うところの『ファーストネーム』、私の国では『下の名前』と言われているんだけれど、サカエで構わないわ。私からもみんなのことはファーストネームで呼ぶようにするわね。『教師と学生』という上下関係ではなくて、『同じ研究を進めていく仲間』として、一緒に進んで行きましょう!」
世界一の魔法学の権威でありながら、なんともフランクな先生である。
サカエゼミは、定員20名のところ、先のゼミ入りの選抜試験に合格した27名でスタートすることとなった。
但し、『ゼミの内容についてこられない人は抜けてもらうから』ということで、少々不穏な感じが残っている。
講義用の教科書と参考書が配られた後。
「さて今日は、椅子取りゲームをしてもらいましょうか? 私も参加しますからね」
と
大学生にもなって、椅子取りゲーム? と思いつつも、特に不平を言う者はおらず、円状に27の椅子が並べられた。
「今から音楽魔法を流します。それが流れている間は椅子の周囲をグルグル回って、音楽が止まったら、椅子に座って下さい。最初はふたり脱落ですよ? では、いきますね?」
ふたり? 先生言い間違えたか、椅子の数を数え間違えたか? 椅子27個で28人なんだから脱落はひとりでしょ?
と思いつつも、指摘する者はおらず、音楽がスタートすることとなった。
音楽に合わせて、周囲を回る参加者達。
なかなか鳴り止まない音楽。
皆が『長いな』などと思い始めた頃、音楽がストップした。
即座に椅子取り合戦が始まり、初動の遅れたふたりが脱落することとあいなった。
って、ふたり?
椅子が27個で28人なんだから、脱落はひとりのはずなのに、何故?
キツネに摘まれたような気分になる参加者達。椅子がふたつ取り除かれ、再び音楽がスタートした。そしてすぐさま音楽停止!
またしてもふたりが脱落。えっ、なんで?
椅子が25個で26人なんだから脱落はひとりのはずなのに。
少しざわめきが起こるも、特に何事もなく、椅子がふたつ取り除かれて、23個となり残ったのは24人となった。
「次は3人脱落ね!」
サカエ先生が声を上げると、すぐさま音楽がスタートした。
何が起こっているのかはわからないが、3人脱落するのだろう。
音楽が鳴り止んでみると、案の定。3人が座れずに脱落した。
と、あれ?
「えっ? スモーリンさん、さっき脱落したんじゃ?」
グングニールが声を上げた。彼の左手側で座っているのは、確かにスモーリンだった。
けれども、脱落して外側で見ているメンバーの中にもスモーリンが!
「あら、気づいちゃった?」
どろん、と煙に巻かれたかと思うと次の瞬間に現れたのはサカエ先生であった。
なんだかよくわからないが、なんかわかってきた気がする。
「幻術?」
誰かが声を上げた。確かにサカエ先生なら、この程度の幻術は使えそうな気がする。
おいおい、椅子取りゲームに魔法を使うのアリかよ? と、グングニールは思った。それなら、サカエ先生のひとり勝ちじゃないか、とも。椅子取りゲームに有効そうな魔法など、幻術くらい。
ゼミ内には、幻術使いとして名を鳴らすマッヌーサ・ツッカーウもいるものの、流石に世界一の魔法使いとの差は歴然である。
そんなこんなでゲームは進み、残り3人、椅子はひとつとなった。
サカエ先生とマッヌーサ、そしてディア姫だ。
音楽がスタートして、3人が椅子の周りを回り、30秒程で音楽が鳴り止んだ。一斉に椅子を目指す3人。抜群の運動神経を持つディア姫が一歩リードか?
ディア姫とサカエ先生が同時に座り、ゴールイン! ……って、あれ?
ひとつの椅子にふたりが座っている!
腰を半分ずつとかではなしに、ふたりともがしっかりと椅子に腰を掛けている。
「ふたりが重なっているじゃない!」
スモーリンが叫んだ。
その通りなのだ。ふたりが重なっている。これは幻術なんかではない。一体何が起こっているのか?
「今のは、ディシェーネンさんの方が少し速かったわね。ディシェーネンさんの優勝ね、おめでとう!」
とディア姫を
「なんですか、その魔法!」
「魔法? 私は椅子に腰掛けただけよ?」
ではディア姫が?
グングニールがディア姫の顔を見つめるも、
「わ、
と首を左右に振って否定する。
どうやら、しらばっくれているのはサカエ先生のようだ。
「それが、未来魔法ですか?」
「ふふふっ、そうね、これも未来魔法のひとつね」
サカエ先生はいたずらっぽい笑みを見せた。
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